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「羽生選手に感謝している」 中国人女子がこれからも羽生結弦選手を応援し続けるワケ

中島恵ジャーナリスト
記者会見する羽生結弦選手(写真:ロイター/アフロ)

7月19日、フィギュアスケート男子の羽生結弦選手が記者会見を行い、第一線を退く意向を表明した。

会見の様子は中国メディアでも速報され、生中継も行われた。SNSの微博(ウェイボー)では「羽生結弦、退役(引退)を宣言」というフレーズが検索ランキング1位になった。

約282万人に上る羽生選手のフォロワーからは「彼が決めたことを支持したい」「羽生選手に心から感謝している」「羽生選手のおかげで、自分もがんばれた」「これからもずっと応援し続けたい」などといった温かい声が飛び交った。

あきらめない真のアスリート

「たとえ彼がどのような選択をしたとしても、私は羽生選手の考えを支持するし、これからも彼のことが大好きであることに変わりはないです」

数年前から羽生選手のファンだという北京在住の知り合いの女性(17歳)は記者会見を見たあと、こんな感想をもらし、涙ぐんだ。今年2月の北京冬季五輪の際は、試合会場のすぐ近くまで行って応援するほど熱心なファンだが、今日の会見を見て、ますます彼のファンになったという。

「北京冬季五輪のときにクワッドアクセル(4回転半)に挑戦した姿に勇気をもらって、自分も大学受験をがんばろうと思いました。だから、羽生選手には心から感謝しているんです。

何度倒れても、あきらめない羽生選手こそ、真のアスリートだと思います。順位なんて関係ないです」

この女性のように、羽生選手の「生き方」や「姿勢」に共感する中国人女子は非常に多い。

礼儀正しさに感動

今日の記者会見でも、変わらないスタンス、礼儀正しさを評価する声が多かった。以前、日本に留学したことがある上海在住女性(28歳)も言う。

「会見場に入ってすぐに深々としたお辞儀をしましたね。あれこそがまさに羽生選手らしさだと思いました。

そして、質問を受けるたびに、『ありがとうございます』と丁寧な言葉を添えるところも大好き。むろん、スケートをしているところも好きなのですが、羽生選手の言葉は一つひとつに重みがあって、心を打つのです。自分もああいう人間になりたいと憧れます。

中国にはこういう選手はいない。きっと、私と同じように思っている中国人ファンは多いと思います。だからこそ、現役を退いても、応援したいと思うのです」

写真:ロイター/アフロ

関連グッズの価格も高騰

中国で、羽生選手は名前をもじった「柚子」の愛称で親しまれている。微博のフォロワーは、北京冬季五輪前は約190万人だったが、五輪後に270万人にまで急増。現在は、約282万人と膨大な数に上り、その一挙手一投足が注目を集めてきた。

2月の北京冬季五輪では4位という成績に終わったが、ファンの間では失望よりも賞賛の声が大きく、「メダルは重要じゃない!」「どんな結果でも、羽生選手は私の心の中ではいつだってナンバーワン」「成功できなくても、挑戦することに意義がある」といった声が圧倒的だった。

このような熱心なファンが多いからか、中国メディアの報道によると、羽生選手の関連グッズがプレミア化し、価格が高騰しているという。

羽生選手の写真が掲載された日本語の新聞は希少価値があるとして、元の価格の70倍以上跳ね上がっており、争奪戦となっている。

第一線を退けば、テレビ中継などで見られる機会は減るかもしれないが、ファンたちは今後もクワッドアクセルに挑戦するという羽生選手のコメントに胸を躍らせている。

「絶対にアイスショーに行って生で見たい。これからは試合の重圧から解放されて、ますます飛躍してほしい」「新しい人生の第一歩だ」といった声も相次いでいる。

参考記事:

中国の若者たちが魅了される羽生結弦選手の「儀式感」とは何か?

中国人ファンが勝負を終えた羽生結弦選手にこれまで以上に賞賛を送るという「変化」

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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