5月16日、ロックダウン中の上海市で新しい動きがあった。宗明副市長が記者会見で「市内の16地区中15地区で『社会面ゼロコロナ』を達成した」と宣言。5月21日以降、正常化に向けて3つの段階を踏み、「6月1日以降、中下旬にかけて、感染の再拡大を防ぎつつ、市内の生産活動と通常の生活を再開する」と明言したのだ。

同時に、5月16日から市内のスーパーやコンビニ、薬局、理髪店、飲食店の宅配サービスなども段階的に営業を再開すると発表、地下鉄や路線バスは5月22日から再開するとした。

このニュースは中国で大きく報じられ、SNS上では「ようやく!」」「本当なの?」「とにかく1日も早く解除してほしい」といった喜びの声が飛び交ったが、一方で、この会見を見て怒り出したり、ため息をついたりした人も少なくなかった。

今もまだマンションから出られないのに

上海市内に住むある中国人は怒りをあらわにしながら、こう語る。

「社会面ゼロコロナ(中国語で「社会面清零」)とは一体どういう意味なのか、よくわからない。私が住んでいるマンションではこの50日以上、PCR検査のときを除いて、一歩もマンションの外に出られない。スーパーを開くといっても、どうやってそこまで行くのか?政府のこんな言葉を聞いても、自分はまだ信じることができない」

社会面ゼロコロナとは、封鎖されていない地区で新規感染者が出ないことを指す。市政府は社会面ゼロコロナを達成したので、今後、ロックダウン解除に向けて本格的に動き出すという方針を明らかにしたわけだが、市民の中には、この人のように冷ややかな意見を持つ人も多い。

別の中国人も言う。

「市政府の発表は確かにこの通りかもしれない。だが、現実問題として、私が住む小区(マンション)は今日も厳しい行動制限が取られている。私のマンションは14日以上感染者が出ていない『防範区』なので、ルール通りであれば外出できるはずだが、居民委員会の担当者はゲートの外に出してくれない。

必要性のない外出は防範区であってもまだ認められない、というのが担当者の説明だが、同じ『防範区』で外出が許されているマンションもある。だから、上海市政府が発表しても、それが自分のマンションにもスムーズに適用されるのだろうか、という不安がある」

リスクを恐れる末端組織

居民委員会とは、マンションの管理を行うところ。行政の末端組織で「社区」と呼ばれるマンション群、または一定のエリアを管轄している。日本では「大きな町内会のような組織」「中国版の自治会」と紹介されることが多い。居民委員会のトップ中国共産党員であり公務員だ。

通常はマンションの住民同士の困りごとを仲裁したり、住民の相談に乗ったりするが、コロナ発生以後、食料調達や健康チェック、住民の出入りの管理などを担うことが増えた。居民委員会の上の組織は「街道弁事処」といい、その上に上海市政府がある。

居民委員会が管轄する各エリアには、少なくとも数百人、多ければ5000人以上が住んでいるので、日本人の感覚では「村」や「〇丁目~〇丁目」などに近い。つまり、住民はそのエリアの役人に管理されているわけだが、その管理の方法は地区によって微妙に異なっており、一律ではない。

感染者の発生状況などによって分けられている「封控区」「管控区」「防範区」という分け方だけでなく、居民委員会ごとにやり方が異なっているため、たとえ市政府が公式に発表した封鎖解除のスケジュールがあっても、それがすぐに末端組織である各居民委員会にも反映され、住民に通達、実行に移されるとは限らない、と多くの市民は思っている。

居民委員会は、もし住民の外出を許可して、そこで感染者が急増したら、自らが責任を取らされ、処分の対象となってしまうことを恐れている。そのため、彼らは自主的にルールを厳しくしているという面がある。

前述の中国人が言っていた「外出できるはずだが、ゲートの外に出してくれない」というのは、そういう意味だ。

このような行政上の問題があることを多くの市民は知っている。それに、4月上旬、市を東西に二分して実施された各4日間のロックダウンも、結局、無期限で延長され、約束を反故(ほご)にされたという苦い経験もある。

そうしたことから、「本当にロックダウンは6月には解除されるのか?そうであればうれしいが、まだ“ぬか喜び”はできない」といった不安や疑念が広がっている。