Yahoo!ニュース

小室圭さんは中国でいう“鳳凰男”? 中国の鳳凰男の末路に深く納得してしまうワケ

中島恵ジャーナリスト
2017年の婚約内定会見(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 4月8日、秋篠宮家の長女、眞子さまとの婚約が内定している小室圭さんが、母親の金銭トラブルについて説明した文書を発表し、波紋が広がっています。

 西村泰彦宮内庁長官は「非常に丁寧に説明されている印象だ」と発言しましたが、ネット等の反応を見る限り、この文書により、多くの国民が「納得し、喜んでいる状況」になったとは思えません。

 日本のメディアを賑わせているニュースは、中国でも即座に報道されることが多いので、今回はどのように伝えられているのだろうかと思い、中国の報道を見てみましたが、今回はあまり大きく扱われていませんでした。

 今回発表された文書によって、何か大きな進展があったわけではないので、それもそうだろう、と思ったのですが、この機会に、この問題に関する中国の報道をさかのぼって見てみました。すると、小室圭さんのことを表現する、ひとつのキーワードが浮かび上がってきました。

 それは「鳳凰男」(フォンホワンナン)という、日本では聞きなれない単語。日本語で読めば「ほうおう おとこ」です。

中国語の「鳳凰男」とは何か?

 中国の関連記事を読んでいくと、小室さんのことは「眞子公主的未婚夫」(眞子姫の婚約者)と表現されているものが最も多かったのですが、キャッチーな見出しをつけている記事を見ると、小室さんのことを「鳳凰男」と書いてあるものがいくつも目につきました。

「鳳凰男」とは2008~2009年ごろに中国で流行した新語・流行語で、それ以前にはあまり聞かなかった言葉です。この10年ほどで社会に定着し、今では多くの中国人が知っている単語になりました。

 中国の解説では、「鳳凰男」とは「地方、または農村(田舎)の出身で、苦労して大都市の大学に進学し、卒業後はその大都市で仕事をしている男性のこと」とあります。

 これはごく簡単な解説ですが、明確な定義があるわけではなく、実際にはもう少し範囲を広げている場合もあります。基本的には、地方出身者で高学歴、都会である程度の企業(または一流企業)に就職している男性のことです。

 ちなみに「鳳凰」は英語でいえば「フェニックス」で、中国の伝説上の鳥、霊鳥のこと。田舎から都会に出ていき、ある程度成功できるのは、ただの鳥ではなく鳳凰(出世の象徴)ということのようです。

 その対語として、同じく10年ほど前に登場したのが「孔雀女」(コンチュエニュー)、日本語では「くじゃく おんな」という言葉です。中国の解説では、「都市部で生まれ、苦労することなく、ぬくぬくと育ち、傲慢で高飛車なところがあるが、純愛を求めている女性」とあります。

鳳凰男と孔雀女の結婚は……

 中国で10年ほど前に話題になったのは、この「鳳凰男」(地方出身の男性)と「孔雀女」(都市出身の女性)の結婚はなかなかうまくいかない、けっこう離婚するケースが多い、という話です。もちろん、中にはうまくいっている例もあるのですが、中国のネット上で議論が沸騰しました。

 背景には中国独特の戸籍制度があり、日本人が思い浮かべる「地方と都市」という単純な地域差や経済格差だけではない、もっと複雑な事情があります。

 詳しい説明は省きますが、農村出身者(鳳凰男)は農村の戸籍であり、その人が都市に出て働いても、都市の戸籍を持っていないために、都市の人と同じような条件で社会福祉などを受けられない、(もしお金があったとしても、地方出身者であるために)都市のマンションを買う条件が厳しい、といった障壁があります。そのため、「鳳凰男」は有能でありながら、都市の暮らしで苦労します。

 しかし、もし都市出身者(孔雀女)と結婚すれば、生まれながらの不利な戸籍問題をクリア(都市戸籍を取得)することができ、仕事や生活をする上でも非常に恵まれる(逆玉の輿に乗れる)といったメリットがあります。

 以前、「孔雀女」は地方から出てきた「鳳凰男」などには目もくれなかったのですが、昨今では、中国の社会事情も変化してきていて、「別にマンションがなくても(私がお金もマンションも持っているから)いい。彼は一流企業に勤務しているのだし、将来性がある。都市の男性とは違う魅力がある」などの理由で、鳳凰男と結婚してもいいという女性も増えてきました。

 では、なぜ、「孔雀女」は「鳳凰男」と結婚してもうまくいかないのでしょうか? 

 それは、「鳳凰男」にはいくつかの問題点があるからです。「鳳凰男」の特徴として、中国の報道では、次の点が挙げられていました。

「鳳凰男は田舎の両親(とくに母親)のいいなりである」、「田舎に親戚が多く、親戚つき合いがとても大変」、「とてもプライドが高い」、「かなり男尊女卑である」、「理屈っぽい」、「ケチで金銭感覚が(都市の女性とは)異なる」………

 結論として、中国の報道には、以下のことが書いてありました。

「格差婚であっても、結婚当初は問題ない。だが、子どもが生まれるころになると、田舎の両親が子育てや都市での生活に干渉して、田舎の論理を持ち込んでくるので、うまくいかなくなる。嫁姑の問題も浮上する。婚姻には当事者の愛情だけでなく、やはり、家と家との釣り合い、バランスが大事なのだ」

 小室さんは日本人で、しかも都市の出身なので、中国の記事の中で表現されていた「鳳凰男」には当たらない面もあるでしょう。しかし、今、このタイミングで中国の「鳳凰男」の解説を読むと、これはあくまでも中国の話なのだと思いながらも、日本人として、なぜか深く納得してしまう部分があると思うのですが、いかがでしょうか。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

中島恵の最近の記事