過去最大級の台風が上陸目前。在日中国人たちが共有する独自の情報ネットワークとは

最新の台風情報の入手は日本に住む外国人にとっても重要事項(写真:ロイター/アフロ)

在日外国人は大丈夫か?

 過去最大級といわれる台風19号が迫っている。関東・東海地方を中心に厳重な警戒が呼びかけられているが、懸念されることのひとつは日本在住の外国人や外国人旅行者がどれだけ日本の情報を入手でき、安全に避難できているか、ということだ。

 日本政府や各国の大使館、観光関係のサイトなどでも注意喚起の情報を流しているが、その多くは英語が中心。最近は多言語化してきてはいるが、英語以外の言語を母国語とする外国人にとって、タイムリーで細かな情報を入手することは困難ではないかと心配になる。

 だが、こと中国人については、その心配はあまり必要ないといえそうだ。

 日本でもよく知られるようになってきたが、彼らは世界のどこにいようとも、中国版SNSのウィーチャットやウェイボーで繋がっており、母国語(中国語)で現地(日本)の情報をかなり詳しく得られているからだ。

 情報源は在日中国大使館や各地の領事館、多数ある地元の中国系ニュースサイト、日本語がわかる中国人の友人のSNSが中心となっている。

 さらに、今回は最大級の災害に対応して、ウィーチャット上に、一時的な「東京超級台風互助群」(台風災害に備えて情報を共有する助け合いのためのグループ)なども立ち上がった。

中国系ニュースサイトの画面から(筆者提供)
中国系ニュースサイトの画面から(筆者提供)

台風情報を共有する多数のグループチャット

 私が見かけたのは1週間だけ有効なSNSグループで、そこで台風情報を中国語でチェックすることができる。日本にひとりでも友人や知人がいれば(もしいなくても、大使館の情報や中国語媒体をチェックすれば)、そこから芋づる式に最新の情報を辿っていくことができ、台風の進路情報や交通情報などをかなり正確に知ることができる。

 むろん、どの国の出身者であっても、母国語で情報を発信している在日外国人は多少はいるだろうし、小さな国の大使館などは在留人口が少ないだけに、その人々への情報提供を手厚く行っている可能性もあるが、中国のSNSほど大量の情報が出回っているところはない、といっていい。

 中国の人口は約14億人。日本には約76万人もの人々が住んでいる(2018年末、総務省の統計)。その数は福井県の人口(約77万人)に匹敵するほど多いのだから当たり前といえば当たり前だが、その情報量の多さは桁外れであり、日本人の想像を超える。

 それに加えて、中国人の場合は漢字を使うという点で、日本で発信される情報の理解度が欧米などの出身者よりもずっと高いこと、中国も(主に南部や沿海部を中心に)台風被害に遭うことがあり、自分自身の問題として台風の被害がどれほど怖いかを受け止めやすいこと、在日人口が多いだけに、さまざまな職業に就いている人がいて人材が多彩なこと、なども発信される情報量の多さに関係していると思われる。

外国に住んでいるからこそ、母国語で情報を得る必要性

 昨夜(10月10日)、ウィーチャットを眺めていたところ、在日中国人の友人たちが、スーパーの空っぽになった棚の写真やニュースサイトの情報を多数投稿し、「早めの行動がカギです」「食料を確保しましょう」などと一生懸命呼びかけているのを見つけた。

 その在日中国人たちが発している情報量は、私が日本人の友人たちと繋がっているフェイスブックと同じくらいか、あるいはそれ以上に多いのではないかと個人的には感じた。

 ふだんは趣味の集まりなどで、ゆるく繋がっている中国人同士のグループチャットでも、今回は台風に関する情報が多数投稿されており、中国人同士の助け合いの様子を垣間見る思いだった。

 以前、拙著『日本の中国人社会』の執筆のため取材したところによれば、在日中国人のほとんどが情報交換などの場としてウィーチャットをやっており、さらにその中にあるグループ(朋友圏と呼ばれる)は、少ない人でも2~3個、多い人ならば30~40個はあった。

 日本人が自分の国(日本)に住んでいれば、自分自身で情報を取りに行けるし、わざわざSNSに頼らなくても多角的な情報を入手することは可能だ。

 だが、外国に住んでいれば、たとえその国の言葉が流暢であったとしても、その国の人とまったく同じ情報にアクセスできるとは限らない。ふだんからの情報の取り方や、人間関係、物事を見る視点が日本人同士のそれとは大きく異なるからだ。困ったときは、同じ国の人を頼りたくなる、という心理的な不安も高まる。

 だからこそ、災害時には同じ国の人同士のネットワークが、より大事になってくるのだろうと感じている。