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もうすぐ春節 中国人の子どもが受け取るお年玉の金額は、いくら?

中島恵ジャーナリスト
春節のときに、赤い袋に入れたお年玉をもらう(ペイレスイメージズ/アフロ)

 今年の春節(中国の旧正月)は2月16日。15日は大晦日で、公的な休暇は15日~21日の7日間だ。この期間の前後、大勢の中国人が家族とお正月を過ごすために帰省したり、国内・海外旅行に出かけたりして、民族大移動が繰り広げられている。SNSを見ると、私の中国人の友人たちは先週末からすでに帰省し始めており、中国人はお正月気分に浸っている。

 お正月といえば、家族団らんで囲むごちそうやおみやげ、お年玉がつきものだ。

 中国にもお年玉はある。中国語では圧歳銭(ヤースイチエン)といい、親が自分の子どもや親戚の子どもにあげるお金だ。さて、中国のお年玉は、いくらくらいなのだろうか。都市部の北京、大連、上海、広東省、そして内陸部の貴州省に住む中国人の友人、知人、十数人に取材してみた。

都市部のお年玉は200~500元くらい

 取材先は現地に住む会社員、自営業者などで、年齢は30代~50代。「小学生の子どもにお年玉をあげるとしたら、いくらくらい送るか?」という質問で、低学年か、高学年かなどの細かい年齢については聞いていない。この中には小学生の子どもがいない友人もいた(子どもはすでに中学生か高校生、または子どもがいない場合もある)が、同僚に聞いてくれたり、想像で答えてくれた人もいた。

 それらの回答を集計すると、都市部では1人の子ども当たり、200元(約3400円)~500元(約8500円)と答える人が最も多かった。

 次に多かったのは500元というズバリの金額。これは北京、上海、大連で多い回答だった。あるいは、100元(約1700元)から1万元(約17万円)の間だろう、というアバウトな回答(北京)や、「100元以下なら(少なすぎるので)あげないほうがいい。最低でも100元以上」(広東省)という声も。内陸部の貴州省は、都市部に比べて所得が低いが、ここでは「100元くらい」と話していたので、都市部と格差のある内陸部は、やはり少し少ないかもしれない。

 多くの人が前置きとして「でも、中国では所得に大きなバラつきがあるので、人によって金額はかなり違う。個人差が激しい中国では平均値は取りにくい。小学生にも見境なく、日本円にして数十万円もの高額なお年玉をあげてしまう富裕層もいる。自分の回答が平均ではないかもしれない」といっていた。

 中国の人口は日本の10倍以上もいて、沿海部と内陸部では生活状況も大きく異なり、日本人のように平均値を出すことは難しい。だが、少なくとも、私の友人、知人の中国人の感覚では、中国の小学生のお年玉は、200~500元くらいが相場だった、ということだけは確かだ。これ以外に祖父母などからもお年玉をもらうため、お正月に数万円のお年玉を受け取る子どももいるだろう。日本人が小学生の子どもにあげるお年玉と比べてみてどうだろう。ほとんど格差がなくなってきているといっていいのではないだろうか。

両親にもお年玉や商品をプレゼント

 念のため中国のインターネットサイトやSNSでいくつか調べてみたので、それも紹介しよう。2014年の湖北省の調査によると「200元~500元」という回答が最も多かった。上海の80后(80年代生まれの世代)の調査では、親戚の子どもに500元~800元、友だちの子どもに300~500元、富裕層の場合、子どもに5000元(約8万5000円)という回答だった。

 お年玉とは少し違うが、自分の両親には少なくとも1000元(約1万7000円)以上あげるという人、あるいは、両親や親戚の子どもには「越境EC(海外の商品が購入できるネットショッピング)」で、1000元~2000元(約3万4000円)程度の海外の商品を買ってプレゼントする、という人もいた。

 ちなみに、小学生にあげるお年玉は赤いポチ袋に入れた“現金”だ。中国では今、猛烈な勢いでキャッシュレス化が進み、何でもスマホ(モバイル)決済で支払うことが主流となっており、北京や上海では、現金を持ち歩かない人も増えているが、お年玉の相手は10歳前後の子ども。友人たちに聞いてみたところ「さすがに現金で渡しますよ(笑)」といっていたので、ちょっと安心した。

ご祝儀や謝礼は気軽にスマホ送金

 余談だが、中国ではお年玉に類似した言葉として、紅包(ホンバオ)がある。子どもにあげる圧歳銭(ヤースイチエン)は狭い意味での「お年玉」だが、紅包はもう少し幅広い意味に使われ、「(結婚式、出産祝いなどの)ご祝儀」「お小遣い」「おひねり」「ボーナス」「(お世話になった方への)謝礼」など、そのシチュエーションによって意味合いが少しずつ異なる。紅包は春節の際、会社の社長から部下にあげたり、同僚同士で送り合ったりするものも指す。

 広東省や香港などでは、お正月に会う人のほとんど全員に紅包を渡す、という独特の習慣がある。とくに自分が独身であれば、50歳、60歳になっても紅包をもらうことができ、目下の既婚者からも紅包をもらえる。その場合、金額は少額(10元~50元)だが、数十人分もの紅包(ポチ袋と紙幣)を用意する必要があり、かなり大変だ。ちなみに、私も以前、春節のときに香港で道を歩いていたら、見知らぬ通行人から「お正月だから」といって、紅包をもらって、びっくりしたことがある。

 広東省で仕事をする日本人の独身の友人も「昨年の春節には、紅包だけで600~700元(約1万円~1万2000円)もいただき、年下の同僚からももらってしまいました(苦笑)」と話していた。広い意味での紅包は、金額うんぬんではなく、人と人とのコミュニケーション手段、季節の風物詩、人間関係の潤滑油的な役割を果たしているのだろう。

 ところで、中国のネットでは今、「網紅(ネットアイドル)の生中継」が流行しているが、彼らのパフォーマンスが気に入ったら、ワンクリックで花束など架空の商品を送る「おひねり」や「投げ銭」があり、これも紅包のひとつとされる。普段でも中国のSNS(微信)には、微信紅包(ウェイシンホンバオ)というアプリがあり、中国人はそこから気軽に誰かに送金している。

 現金をあまり必要としなくなった中国で、子どもへのお年玉はもはや、数少ない「現金手渡し」の場面だ。

 この春節、日本にも大勢の中国人観光客が押し寄せている。この中には、もしかしたら「ふだん、もう現金は使わないけれど、日本に来たから、記念に日本円でお年玉をあげるね!」なんていう親もいるかもしれない。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミアシリーズ)、「中国人のお金の使い道」(PHP研究所)、「中国人は見ている。」、「日本の『中国人』社会」、「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」、「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」、「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」、「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国などを取材。

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