Yahoo!ニュース

「コードギアス反逆のルルーシュ x FLOW バーチャルライブ」に見た新しいライブのカタチ

武者良太ガジェットライター
コードギアスの世界観と融合していたFLOWのVRライブ(写真:筆者撮影)

歌詞が空間に飛び出してくる! コードギアスのストーリーを追うとともにライブ会場全体がフレイヤの光に包まれていく! FLOWのメンバーがゼロの衣装を着るとともに、オーディエンスも全員がゼロのアバターに変わって百万のキセキが広がっていく!

2022年11月6日にVR空間内で開催された「コードギアス反逆のルルーシュ x FLOW バーチャルライブ」。物理現象に、基底現実に囚われない表現と演出を追求することができるVRライブの最先端を体験した思いがあります。

VRChatというメタバースをライブ会場として活用

(写真:筆者撮影)
(写真:筆者撮影)

2020年にはじまったコロナ禍以降、注目度が高まったカルチャーの1つにVRライブがあります。

もともとはVRヘッドセットで音楽ライブの臨場感をたっぷりと感じることができるサービスとして、人気VTuberがVARK(2018年~)などのサービスを用いて提供してきたVRライブ。現実のライブ会場を超える光と音とパフォーマーの姿の共演を届けることができますし、現実のライブ会場までの行き来が難しい地域に住む人であっても機材さえあれば自宅でライブ会場にフルダイブできることから人気が高まっていきました。

そしてコロナの影響により、現実でのライブが難しくなったアーティスト・パフォーマーは、YouTubeなどを用いた無観客ライブなどに取り組みました。その一環として、VRライブにも注目が集まりました。

しかし一部のVRライブサービスは、ライブ本来の没入感が乏しところがありました。座席、立っている場所を自由に選べるからステージ上のパフォーマーを最高の位置から見て応援することはできたものの、周囲の観客の姿はペンライトを振るだけのロボットのようなもの。人の気配を感じることが難しい仕様だったのです。

(写真:VRChat)
(写真:VRChat)

そこで、メタバースを一足先に体験できるサービスとして人気が高いソーシャルVRの「VRChat」が活用されるようになりました。技術力があれば世界創造もアバターの姿も自分の好きなように生成できる自由度の高さから、プロのパフォーマーも、インディーズのミュージシャンも、VTuberもVRライブにチャレンジ。なかにはVRChatを利用し始めてからアイドル、ミュージシャン活動を始めるユーザーも現れました。

Meta Quest 2での最高の体験を追求

しかしVRChatには、ユーザーを選ぶという難題がありました。仮想空間の自由でインパクトのある表現を追い求めていくと、VRヘッドセットのほかに高価なゲーミングPCが必要になるという難題が。

2019年のOculus Questに合わせてQuest版VRChatをリリース。世界的なステイホームとあって着実にユーザー数を伸ばし、2020年のOculus/Meta Quest 2発売によって大人気なソーシャルVRへと育ちつつあったVRChatですが、Quest版VRChatでは使えないアバター・入室できないワールド(仮想空間)が多く存在したのです。

一部では「VRChatができるPCを持っていないの? VRChatはPCを用意してからがスタートラインだよ」と、ヒエラルキーを誇示するユーザーも登場。ユーザー間の立場がフラットであるべきSNSではあまりよくない傾向も見受けられました。

(写真:筆者撮影)
(写真:筆者撮影)

しかし今回の「コードギアス反逆のルルーシュ x FLOW バーチャルライブ」は違いました。ユーザーが増え続けているOculus/Meta Quest 2単体でも見ることができるライブコンテンツとなっていたのです。

空間を走るレーザービームのシーンの直後に(写真:筆者撮影)
空間を走るレーザービームのシーンの直後に(写真:筆者撮影)

ステージすら消えてFLOWのメンバーとコードギアスのシーン、歌詞が浮き彫りになる演出(写真:筆者撮影)
ステージすら消えてFLOWのメンバーとコードギアスのシーン、歌詞が浮き彫りになる演出(写真:筆者撮影)

「コードギアス反逆のルルーシュ x FLOW バーチャルライブ」は、アニメ作品「コードギアス反逆のルルーシュ」の主題歌などを担当したFLOWの音楽ライブです。5幕構成で、コードギアスのストーリーを追うルルーシュ・ランペルージの独白シーンとFLOWの楽曲が組み合わさっているものでした。

FLOWのメンバーが、コードギアスの主要キャラクター「ゼロ」のコスチュームを身にまとう(写真:筆者撮影)
FLOWのメンバーが、コードギアスの主要キャラクター「ゼロ」のコスチュームを身にまとう(写真:筆者撮影)

実際にFLOWのメンバーはリアルタイムで演奏していたわけではありません。どうやら映画やアニメの撮影で使われるモーションキャプチャーの技術を用いてプレイの動きを撮っていた様子。いわば、疑似ライブと呼ばれる手法の1つです。

この方式をとりいれることで、CGで描かれた姿なのに指先まで血が通っているような、生き生きとしたライブパフォーマンスを見せることに成功しています。

(写真:筆者撮影)
(写真:筆者撮影)

(写真:筆者撮影)
(写真:筆者撮影)

(写真:筆者撮影)
(写真:筆者撮影)

(写真:筆者撮影)
(写真:筆者撮影)

(写真:筆者撮影)
(写真:筆者撮影)

今は値上がりしてしまい、6万円近い機材となってしまったMeta Quest 2(しかも値上がりの理由の1つが、有料ゲームが売れずにVRChatなどを楽しんでいるユーザーが多いから、というもの)ですが、以前までは3万円台で購入できたVRヘッドセットでした。

VRヘッドセットをかぶって、そのままライブ会場にログインすれば、現実と変わらない没入感と、現実を超える臨場感を持つ音楽空間に入り込める。しかもクオリティはゲーミングPCを必要としたVRライブと近しいレベルにあった。「コードギアス反逆のルルーシュ x FLOW バーチャルライブ」の制作・運営を手掛けた株式会社Gugenka(グゲンカ)の開発力と演出力の高さを強く体験できる時間でした。

パフォーマーも観客席から一緒にライブを楽しむという新しい衝撃

FLOWのメンバー、TAKE氏と2ショット。同じゼロのアバターだから見分けはつかないけれども(写真:筆者撮影)
FLOWのメンバー、TAKE氏と2ショット。同じゼロのアバターだから見分けはつかないけれども(写真:筆者撮影)

疑似ライブの方式をとったこともあり、FLOWのメンバーもライブ会場の、それも観客席側に訪れていました。ギタリストのTAKEさんは「FLOWのライブを見るの、はじめてなんです!」と爆笑間違いなしのトークをしてオーディエンスの心を一気につかんでいました。

写真のようにアバターからはTAKEさんだとわかりませんが、話したときのトーンから「本人だ...」という感覚が濃厚に伝わってくる。これはオーディエンスにとっても新しい体験です。

(写真:筆者撮影)
(写真:筆者撮影)

Meta Quest 2とVRChat、そしてGugenkaの存在によって、VRライブは1歩先のステージへと進化したといえます。今後もMeta Quest 2とVRChatで体験できるハイクオリティなパフォーマンスは増えていくだろうという実感もあります。

ライブ会場で会った友人との2ショット。VRChatには、こういう楽しみもある(写真:筆者撮影)
ライブ会場で会った友人との2ショット。VRChatには、こういう楽しみもある(写真:筆者撮影)

新しい表現、新しいコンテンツを求めている人。自分でも作ってみたい人は、ぜひMeta Quest 2を手にとって、頭に装着して使ってみてください。

ガジェットライター

むしゃりょうた/Ryota Musha。1971年生まれ。埼玉県出身。1989年よりパソコン雑誌、ゲーム雑誌でライター活動を開始。現在はIT、AI、VR、デジタルガジェットの記事執筆が中心。元Kotaku Japan編集長。Facebook「WEBライター」グループ主宰。

武者良太の最近の記事