試合中、ウォータースライダーに放水銃!? ずぶ濡れ必至、真夏の韓国の野球場
日本同様に暑い日が続く韓国。この時期の野球場では数々の夏らしいイベントが行われている。中でも最もインパクトがあるのがKTウィズの本拠地、スウォン(水原)KTウィズパークで行われている「2019KT 5Gウォーターフェスティバル」だ。
夏の恒例行事となっているこのイベントは今回で5年目。今年は7月26日を皮切りに8月16日まで4カード、全10試合に渡って行われている。
無料で滑り放題のウォータースライダー
このイベントのコンセプトは「スウォン海水浴場」。避暑と野球を同時に楽しんでもらおうと企画されている。
試合開始2時間前。ライトポール際の4階席通路では子供たちが長い列を作っていた。お目当てはウォータースライダー。らせん状の長さ45メートルの本格的なウォータースライダーがこの球場にはある。
滑り出してから十数秒で外野スタンドに設置されたプールにザバーンと着水。スリルを楽しんだ少年少女は係員の補助で水から上がると階段へと向かい、再び4階席の列に並んだ。
「ウォータースライダーは無料です。8回裏まで何回でも滑り放題です」とKTの広報担当者は胸を張った。
ウォータースライダーを滑るほとんどの子供がラッシュガードと水着を着用。滑る気満々で球場に訪れている。時折、激しい水しぶきが起きたと思うと水面から顔を出すのは大人だった。健康であれば年齢制限に上限はない。
味方の攻撃中、水を浴び続けるKTファン
昼間の明るさが残る18時、ハンファイーグルスとの対戦がプレーボール。1回裏KTの攻撃が始まると「放水ショー」の始まりだ。一塁側応援席に設置の16台の噴水大砲・ウォーターキャノン、18台のスプリンクラーから一斉に水が放出された。
激しく放たれた水砲は遠くから見ると霧のように見えるが、実際は大粒の水の塊が空から叩きつけて来る。言わばゲリラ豪雨、いやビッグウェーブだ。
さらに応援団長がゴンドラやステージ上から味方の攻撃中ずっと、放水銃でスプラッシュ。応援席のファンはオールスタンディングで選手ごとの応援歌を歌い踊りながら終始、水をぶっかけられている。
一見、無法地帯のようだが予め、ずぶ濡れになるエリアとちょい濡れのエリア、まったく濡れない席がしっかりと区分されている。
例えばウォーターキャノンのすぐ前にあり、グラウンドに最も近い座席の5Gハイファイブゾーンに水滴が落ちてくることはない。この座席ではバッチリとメイクをしてお目当ての選手にレンズを向ける女性ファンが複数見られた。
2回以降もキム・ジュイル応援団長はKTの攻撃になるとマイク片手にファンに勢いよく放水。一方でウォーターキャノンはKTにヒットが出るか得点が入った時のみ放たれる。
ウォーターキャノンを操作する女性担当者は試合を注視。ヒットかエラーか微妙な打球の時はスコアボードを見つめ、「E」のランプが点くと操作盤から手を放した。
この日のKTは2、3回と三者凡退。大波が訪れないまま西の空が赤みを帯びてきた19時過ぎ、4回裏0-3で3点を追うKTに一発が飛び出した。3番カン・ベクホのライトへの9号ソロだ。
若きスターの負傷復帰後初ホームランにKTファンは両手を上げ、びしょびしょになりながら歓喜の声を上げた。
ずぶ濡れで困ることは一つだけ
応援ステージ前のファンの格好はというと、レインコートを着ている観客は一部で大半がユニフォーム姿。濡れるのはお構いなしというスタンスだ。
また水鉄砲を手にしたファンも多く、人に向けて撃たなければ使用が許されている。通路には水鉄砲に補充するための水が入ったポリバケツも用意されていた。
前から2列目に陣取った20代の女性ファンは「普段は彼と2人で見にくるけど、今日は友達のカップルも誘ってきた」と話し、「暑い夏に涼しくなりたいから」とあえて最も濡れる席を選んで予約したという。彼女は「不便なのは更衣室がないことだけ」と言って観戦を楽しんでいた。
試合は6回を終わって2-4でKTが2点のビハインド。重々しい空気がKT応援席を包む中、7回裏、1死一、二塁でカン・ベクホにこの日の2本目、10号3ランがライトスタンドに突き刺さった。
KTは5-4と逆転に成功。女性ファンは髪から水を滴らせ、メガネ男子はレンズを水滴いっぱいにして狂喜乱舞。KTファンの興奮は最高潮に達した。
びしょ濡れイベントは海を越えて仙台でも
試合はKTが1点リードのまま、最後の1アウトをクローザーのイ・デウン(元千葉ロッテ)が締めてゲームセット。KTが勝利を収めた。KTはこの5年間のウォーターフェスティバルでの成績を18勝15敗とした。
「球団初年度から行っているこのイベントの期間中は勝率がいいんです」とKTの職員は誇らしげに笑った。
このイベントを日本の球団も注目。楽天イーグルスはKTと協力し昨年8月31日、楽天生命パーク宮城でのソフトバンク戦で「ヒットでスプラッシュ!ホームランでびしょ濡れスプラッシュ!」を企画。バイバーシートの一部エリアを「スプラッシュシート」として実施した。
コアな野球ファンの中にはこのようなイベントを「邪道」と感じる人もいるだろう。しかし各球団、年間70試合を超える主催試合を行う中で、こんな弾けたイベントがたまにはあってもいいのではないか。