少なすぎる少子化対策予算。国は現役世代への公的支出増で待機児童解消を
高所得世帯の児童手当を縮小し、待機児童対策の財源に充てようとしているというニュースが流れるや否や、子育て世代から批判の声が殺到している。
Yahoo!ニューストップに掲載された11月6日、11月13日どちらの記事も1万件程度のコメントが投稿され、「所得制限で児童手当5000円、配偶者控除も無し。沢山納税してるのに、恩恵受けられないってあまりにも不平等すぎる」「今何かと話題だけど不妊治療の話より、子育て手当を充実させれば、二人目、3人目って考える人が増えて少子化問題解決するように感じる。子供は生まれておしまいじゃない、そこからがお金がかかる」といった、不公平さや一貫性のない少子化対策への不満が多く集まっている。
署名サイト「change.org」でも児童手当縮小反対の署名が立ち上がり、11月19日9時時点で約3万人の賛同が集まっている。
給付額が縮小・廃止になる高所得世帯の年収基準は今後詰めるとされているが(政府内では年収1500万円などとする案がある)、そこで浮いた予算は、最大1600億円必要な待機児童対策の財源に充てるという。
児童手当の特例給付の縮小によって、子育て世代にどのような影響を与えるかは、Yahoo!オーサーである末冨芳日本大学教授の記事(【子育て罰の厳罰化】児童手当の特例給付を削って待機児童対策にあてる日本では、少子化解消しない)に詳しいが、本稿では、根底にある少子化関連予算の少なさについて説明したい。
少子化関連の家族関係政府支出の対GDP比は欧州諸国の半分程度
11月18日の衆議院財務金融委員会で麻生太郎財務大臣は、少子化の原因について、「一番は、『結婚して子どもを生んだら大変だ』ばかり言っているからそうなる」と発言したが、実際日本で子育てするのは非常に大変である。
その原因は大きく3つ、子育て費用の大きさ、キャリアへの影響、女性に家事・育児の負担が偏っている点が挙げられる。
そして、その根底にあるのが、日本の子育て関連予算の乏しさである。
児童手当、保育サービスなどで構成される少子化関連の家族関係政府支出の対GDP比(2015年)は、日本1.31%で、フランス2.93%、イギリス3.47%、スウェーデン3.53%、ドイツ2.22%、アメリカ0.64%と、欧州諸国と比べると半分程度となっている。
また、教育予算もOECD諸国の中で最低水準であるため、高等教育の授業料、家計負担の大きさは先進国の中でもっとも高い国の一つとなっている。
大学の授業料も40年間で4倍程度増えており、近年も高騰を続けている。
他にも、平均年収は減少する一方、社会保険料負担はここ10年間で約20%増加するなど、子育て世代の暮らしは苦しくなる一方となっている。
今後さらに、奨学金返済を抱えている世代が増えることを考えると、子育て関連予算の公的支出の増加は必須であり、現状のままでは少子化を止めるどころか、さらに加速させる可能性が高い。
後期高齢者の医療費窓口負担原則2割で医療費8000億円削減との試算も
今回、最大1600億円必要な待機児童対策の財源を、子育て関連予算の付け替えによってカバーしようとしているが、現役世代の金銭的負担はすでに限界に達しており、過度に予算を割いている医療費を削減し、その分を現役・将来世代に割り当てるべきだ。
具体的には、現在、75歳以上の医療費窓口負担を1割から2割負担へ引き上げるかで日本医師会と経団連など経済界との間で攻防が行われているが、2割負担実現で医療費が約8000億円削減との試算もあり、低所得者には配慮しつつも、早急に原則2割へと見直すべきである。
そして、「子育て罰」の国から「子育てしやすい」国へと変わるべきだ。