文部科学省の科学技術・学術政策研究所は6月26日、新型コロナウイルス流行の研究活動への影響等に関する調査結果を公表した。

それによると大学院博士課程の学生の7割が「博士号取得に遅れが生じる」との懸念を持っているという。

その理由としては、「研究活動に利用している建物・研究室、設備(実験機器)等の利用停止」が最も多く挙げられ、次いで「学会、シンポジウム、ワークショップ等の中止・延期」が挙げられた。

【調査概要】

(1)調査対象

2020年5月1日時点で博士人材データベースに登録している博士課程在籍者および博士課程修了者・退学者

(2)調査方法

2020年5月1日に調査依頼(日本語と英語)を電子メールで調査対象者に送付し、博士人材データベース上のウェブアンケート(日本語または英語)に回答

(3)調査期間

2020年5月1日~2020年5月25日

(4)回答者数

回答者数:1,105名(博士課程在籍者729名、博士課程修了者・退学者376名)

85%が研究活動に影響が出ている

科学技術・学術政策研究所は5月、博士課程在籍者、博士課程修了者・退学者を対象にアンケートを実施。

アンケートに答えた博士課程在籍者729名のうち85%が研究活動への影響が「現時点で既に影響が出ている」と回答した。

科学技術・学術政策研究所「新型コロナウイルス流行の研究活動への影響等に関する調査」
科学技術・学術政策研究所「新型コロナウイルス流行の研究活動への影響等に関する調査」

その理由としては、「既に影響が出ている」もしくは「今後影響が出る可能性がある」と回答した人のうち、67%が「研究活動に利用している建物・研究室、設備(実験機器)等の利用停止」を挙げ、次いで「学会、シンポジウム、ワークショップ等の中止・延期」を54%の人が挙げた。

科学技術・学術政策研究所「新型コロナウイルス流行の研究活動への影響等に関する調査」
科学技術・学術政策研究所「新型コロナウイルス流行の研究活動への影響等に関する調査」

73%が「博士号の取得が遅れる可能性」

また、新型コロナウイルスの感染拡大が博士号の取得時期に与える影響の見通しとして、博士課程在籍者の6%が「博士の取得がすでに遅れる予定だ(あるいはすでに遅れた)」と回答し、30%が「博士の取得が遅れる可能性がある」、37%が「博士の取得が遅れる可能性がいくらかある」と回答している。

科学技術・学術政策研究所「新型コロナウイルス流行の研究活動への影響等に関する調査」
科学技術・学術政策研究所「新型コロナウイルス流行の研究活動への影響等に関する調査」

以前、「安倍首相に質問!みんなが聞きたい新型コロナ対応に答える生放送」に出演した、京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授は「一番困っているのは大学院生」と、若手研究者への支援を訴えたが、改めて研究活動への支障が明らかとなった。

関連記事:「一番困っているのは大学院生」。政府は若手研究者への支援を(室橋祐貴)

都立大は後期授業料を免除

筆者が所属する大学院の研究室でも、新型コロナウイルスの影響で思うように研究ができず、在籍期間を延ばすことを決めている博士課程の学生がいるが、その分授業料を追加で負担しなければならない。

一方、東京都は6月2日、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、9月に予定していた卒業や修了が遅れる都立大・大学院の学生に対し、今年度後期分の授業料を全額免除すると明らかにした。

4月に「図書館休館対策プロジェクト」が実施したアンケート結果を見ても、研究活動に大きな支障が出ているのは明らかであり、全国の大学でも同様に、修了時期を遅らさざるを得ない学生に対しては半期分の授業料を免除するなどの対応をしてもらいたい。

「図書館休館による研究への影響に関する緊急アンケート」
「図書館休館による研究への影響に関する緊急アンケート」
「図書館休館による研究への影響に関する緊急アンケート」
「図書館休館による研究への影響に関する緊急アンケート」

改めて言うまでもなく、若手研究者の置かれた環境は厳しく、博士課程への進学率が低下している中、博士課程に在籍している学生はこの国の将来にとって大きな「資産」であり、決して見捨ててはならない。

これまで「特別定額給付金」や「学生支援緊急給付金」などの学生支援策が打ち出されてきたが、収入が減る中、追加で半期分の授業料を負担することがいかに大変かは想像に難くない。

ただでさえ、「修学支援新制度」の対象に大学院生は含まれておらず、2015年度に博士課程を修了した人への調査(科学技術・学術政策研究所が実施)では、博士課程の学生の6割以上が返済義務のある奨学金や借入金があり、40.3%が課程修了時に300万円以上の借入金を抱えている

今回、コロナ禍で改めて浮き彫りになった「家計負担の高すぎる学費負担」(2017年時点の家計負担率は51%とOECD諸国の中で2番目に高い)も来年度以降に改善しなければならないが、まずは、一刻も早く、政府には今年度の予備費を活用して大学院生への追加支援を実施してもらいたい。