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「もう一度あの景色を見せたい」コンサドーレの野々村芳和社長が語ったサポーターへの感謝

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
対談する野々村芳和社長

北海道コンサドーレ札幌は今季、J1リーグ10位でフィニッシュした。最終節が終わった翌週に株式会社コンサドーレ代表取締役社長CEO、野々村芳和氏にインタビューを行い、2019年シーズンの振り返りや個々の選手に対する評価、将来のビジョンについて話を伺った。複数回に分けて連載する(取材日:2019年12月11日)。

チームのポテンシャルを感じたルヴァン杯決勝

アシシ:2019年シーズンのコンサドーレはリーグ戦では18チーム中10位という結果に終わりましたが、ルヴァンカップではコンサドーレ史上、初めてファイナリストになりました。延長戦でも決着がつかずにPK戦にもつれ込み、結果は準優勝に終わりましたが、数年前までJ2でくすぶっていた時代を知るサポーターとしては、隔世の感があります。社長自身は今季をどう振り返りますか?

野々村:リーグ戦で10位というのは、順位的にはやはり物足りなかったかなと感じますが、ルヴァンカップであの決勝の舞台に立てたのは、非常に良かったなと思います。

アシシ:普段はコンサドーレの試合に全然肩入れしない知り合いがスポンサー企業の社長にいるんですが、彼が埼スタで決勝を見て、「こんなにサッカー観戦で興奮したのは初めて」と言っていました。そういう意味では、サッカーにそこまで情熱的ではない人たちまでも巻き込んで、多くの人の心を突き動かした試合だったのかなと思います。

野々村:10年に1回か、20年に1回かぐらいの素晴らしいゲームができて、それが何と、片方のチームがコンサドーレだったというのは、本当に良かったと思います。それは半分負け惜しみというか、そうやって自分に言い聞かせて、自分自身を納得させているというのもありますが。

アシシ:やはり優勝したかったですか。

野々村:終わってみれば当然そうですよね。でも僕はやる前から終わるまで、勝てると思ったことはあまりなかったです。

アシシ:それはクラブの予算規模などを客観的に評価して、ということですか?

野々村:それもありますし、やはりここ数年の川崎との対戦成績やゲーム内容、展開などを振り返ると、難しい試合になるのは想像できますよね。そういった状況でも、あれだけの接戦に持ち込むことができて、チームのポテンシャルを感じることができました。

サポーターの応援は間違いなく試合に影響する

アシシ:戦力差はあれど、接戦に持ち込めた要因はなんだと思いますか?

野々村:単純に運が良かったという点もあると思いますよ。危ないシーンは何度もあったわけですし。でも、後半アディショナルタイムに深井(一希)のヘディングゴールで追いついたシーンなんかは、もう理屈うんぬんではなくて、ピッチとスタンドと、コンサドーレに関わる全ての人たちの「思い」でもぎ取った点かと。あの同点弾は、ロジカルな説明ができないシーンですよね。

アシシ:あのゴールは神懸かっていましたよね。社長は非常に論理的なアプローチをする人という印象ですが、時にサポーターに向けて「スタジアムのホームの雰囲気で勝たせてもらった」というメンタル面の話もよくしますよね。

野々村:それは実際に思っていることです。選手の能力やチーム力の差がある中で、それでも勝つ可能性を追求するならば、数字やデータに表れにくい部分、サポーターが特にホームでつくる雰囲気に後押ししてもらって、勝たせてもらう試合が必要になってくる。そういうサポーターの応援の力というものは、間違いなく試合に影響すると思っています。

アシシ:ルヴァンカップ決勝でも実際に、コンサドーレサポーターが陣取るゴールサイドで深井のゴールが決まりましたよね。逆に、PK戦は川崎サイドのゴールで行われて、札幌は負けてしまいました。やはりサポーターの作り出す雰囲気は無視できない要素ですよね。

野々村:あのPK戦、コンサドーレのゴール側でやっていたら結果はどうなっていたか? なんて考えたりはしますね。

アシシ:あれはゲームキャプテンの荒野(拓馬)がPKを蹴るサイドを決めるコイントスと、先攻後攻を決めるコイントスと2回連続で負けた、という記事を読みました。

野々村:それは初めて聞きましたが、コイントスなんて運以外の何物でもないですからね。ただもう僕の中では、ルヴァンカップ決勝はドローで終わっていますから。

アシシ:確かに戦績という観点でいうと、延長戦で決着がつかなかった場合はドロー扱いですからね。

もう一度あの景色をサポーターに見せてあげたい

アシシ:今年の強化費はJリーグ全体でいうと、上から15番目ぐらいでしたっけ?

野々村:そうですね。14番目とか15番目とか、たぶんそれくらいです。

アシシ:その予算規模で、リーグ戦では早めに残留(15位以上)を確定させて、カップ戦でファイナルに進出して、タイトル獲得まであと一歩のところまで来たのは着実な進歩ですよね。

野々村:それは本当にすごいことです。すごいことだけれども、それで満足しているサポーターはいませんよね。みんなもう1度、あの舞台へ行きたいと願っている。もう少しで勝てそうだったから、サポーターも「次こそはタイトルが獲れるんじゃないか」と期待しているわけじゃないですか。「そんなに簡単じゃないよ」ということは伝えつつも、やはりもう1回あの景色を見せてあげたいと思うと、経営者としての僕の役割は、クラブのサイズをもうワンランク上にできるかどうかなのです。

アシシ:今季のコンサドーレの売上予算は35億円くらいが着地点になりそう、という話を以前聞きました。

野々村:そうですね。次のステップを40億円とすると、残りの5億円をどうやって伸ばしていくか、何か必殺技を使って億単位で売上を増やす、といったところまではまだいけていませんが、いろいろなところに種を撒いて、少しずつ実を取れるような体制が段々と取れるようになってきているので、まずそれを継続していきたいなと考えています。

(撮影:ONE PHOTO/Y.Arai)

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プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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