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「W杯とは負け方を競う大会である」 日本代表は大会随一のグッドルーザーだ!

村上アシシプロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント
ベルギーに2-3で敗れサポーターのもとへ挨拶にくる日本代表メンバー(筆者撮影)

「ワールドカップとは、負け方を競う大会である」

誰が言ったか定かではないが、昔聞いた「格言」の中で非常に心打たれた言葉だ。

栄冠を勝ち取ることができるのはたった1カ国。裏を返せば出場32カ国中、31カ国は敗退することが宿命づけられている。それはすなわち、優勝国以外の31カ国で「いかに負けるか」を競い合うのがワールドカップという大会なのである――。

そういう意味では、決勝トーナメント1回戦でFIFAランク3位の強豪ベルギーを後一歩のところまで追い詰めた日本代表の戦いぶりは、大会随一の「グッドルーザー」だったと思う。

ロシア人の観客を魅了した日本の攻撃スタイル

後半3分、7分と立て続けに日本がゴールを決めて、2-0とリードを広げた直後は、日本代表サポーターが太鼓のリズムと共に繰り出す「ニッポン!ニッポン!」のコールに、大多数のロシア人の観客も呼応し、スタジアムの雰囲気はさながら日本のホームのような雰囲気になった。

日本代表のスペクタクルな攻撃の連続に、多くのロシア人が魅了された瞬間だった。

その後、後半24分、29分と日本は失点するも、西野ジャパンは90分で勝負を決めるべく、前掛かりに攻め続けた。それが裏目に出て、後半49分にワールドクラスの超高速カウンターを喰らって、逆転弾を献上。

掴みかけた「日本サッカー史上初のW杯ベスト8進出」という夢は、試合終了直前に儚くも散った。

「アリガトウ!」と日本語で声をかけてくれるロシア人も

試合後、スタジアムで多くのロシア人に慰められた。

「日本がNo.1のチームだ!」

「泣くな。胸を張れ!」

「今大会で一番ビューティフルな試合だった!」

日本語で「アリガトウ!」と言ってくれるロシア人も複数いた。単に僕は日本代表のユニフォームを着ているだけなのに、スタジアムでロシア人とすれ違う度に、励まされ、称賛された。

仮に日本代表が自陣に引き篭もって、低調な試合に終始した上で敗退していたのなら、ここまで褒め称えられることはなかっただろう。あくまで攻撃的なサッカーにこだわり、強豪ベルギーと真っ向勝負を挑んで、儚く散った姿にみな、心を打たれたんだと思う。

悔しい気持ちは変わりなかったが、こんな素晴らしい試合を見せてくれた日本代表を本当に誇りに感じる。

日本代表の旅はこの地、ロストフナドヌーで終わりを迎えた。日本代表の選手団も今朝ホテルを出発し、帰国の途に就いた。僕は7月6日の準々決勝ブラジル対ベルギーを見に、この後モスクワ経由でカザンへ向かう。日本が仮にRound16を勝っていれば、ブラジルと戦えていた試合だ。

猛烈な悔しさを抱えつつも、世界のベスト8の舞台がどんなものなのか、この目に焼き付けてこようと思う。

【この記事は、Yahoo!ニュース個人の企画支援記事です。オーサーが発案した企画について、編集部が一定の基準に基づく審査の上、取材費などを一部負担しているものです。この活動は個人の発信者をサポート・応援する目的で行っています】

プロサポーター・著述家・ビジネスコンサルタント

1977年札幌生まれ。2000年アクセンチュア入社。2006年に退社し、ビジネスコンサルタントとして独立して以降、「半年仕事・半年旅人」という独自のライフスタイルを継続。2019年にパパデビューし、「半年仕事・半年育児」のライフスタイルにシフト。南アW杯では出場32カ国を歴訪する「世界一蹴の旅」を完遂し、同名の書籍を出版。2017年にはビジネス書「半年だけ働く。」を上梓。Jリーグでは北海道コンサドーレ札幌のサポーター兼個人スポンサー。2016年以降、サポーターに対するサポート活動で生計を立てているため、「プロサポーター」を自称。カタール現地観戦コミュニティ主宰(詳細は公式サイトURLで)。

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