昨年11月の2022年カタールワールドカップ(W杯)アジア最終予選・オマーン戦(マスカット)で後半途中から登場し、流れをグイっと引き寄せ、伊東純也(ゲンク)の決勝弾をアシストするなど、衝撃的なA代表デビューを飾った三笘薫(サンジロワーズ)。今年3月の大一番・オーストラリア戦(シドニー)で、日本の7大会連続W杯切符を手にする2得点を叩き出したことも記憶に新しい。

 さらに、6月シリーズのパラグアイ戦(札幌)とガーナ戦(神戸)でもゴールを挙げ、目に見える結果を出している。

 国際Aマッチ6試合出場4ゴールというのは、2009年に年間16試合出場15ゴールという傑出した数字を残した岡崎慎司(カルタヘナ)を彷彿させるハイペース。今は当時ほど代表戦の数が多くないため、それを超えるのは難しいが、最前線に入る岡崎と違って三笘の主戦場は左サイド。それだけハイペースに得点を重ねられるのは、やはり傑出した個の打開力があってこそだ。

代表6試合出場4ゴールとハイペースに得点を重ねる

「(ベルギーに行って)身体能力が高い選手でもウイークなところはあるなとすごく感じました。日本にいる時はどうしてもそういったところは分かりにくいですけど、ずっとあっちにいることによって分かる部分も多い。相手に少し嫌がらせをするところだったり、ポジショニングで優位に働くところだったり、そういう1つ1つの細かい動きで相手にダメージを与えられると思います」

 三笘はベルギー1部で1シーズン戦い抜いたことで、気づいた発見や変化をこう語っていた。確かに、緩急のつけ方や敵との駆け引きは川崎フロンターレ時代より確実に鋭さを増している。

 10日のガーナ戦を解説していた日本代表OBの戸田和幸氏(SHIBUYA CITY FCテクニカルアドバイザー)が「三笘選手はボールを普通より半歩後ろに置く」と指摘した通り、ボールの置きどころが通常とは異なる分、対峙する相手は飛び込むべきか、下がるべきか迷い、判断の遅れが生じ、決定的な仕事をさせてしまうのだろう。

 原口元気(ウニオン・ベルリン)も「純也や薫の能力はスペシャルだし、僕らの武器」と太鼓判を押していた。

原口「薫の能力はスペシャル」

 しかしながら、6日のブラジル戦(東京)で世界ランキングトップの守備陣を向こうに回した時は、いつも通りにはいかなかった。途中から右サイドバック(SB)に回ったディエゴ・ミリタン(レアル・マドリード)とのマッチアップで完全に抜き切ったシーンが皆無に近かったからだ。

「自分の得意な形で仕掛けるってところはできたけど、相手の強さを感じましたし、スピードのところでまだまだ全然足りないなと。流れを変えることができなかったので。フィジカルを上げていくのはもちろん、判断のスピードを上げることだったり、ポジショニングを修正することだったり、格上相手に自分たちが優位になるように冷静に持っていけるか。そういった部分は改善できるのではないかと思っています」

 世界最高峰レベルの相手では、個で圧倒しきれないという厳しい現実を突きつけられた三笘。それは、右のスピードスター・伊東も切実に感じたことだという。

「スピードは驚きを感じなかったけど、1対1というよりも周りのカバーやスペースを埋める力がすごかった。そこにしかいけない感覚があった。カゼミロ(レアル・マドリード)なんかはすぐ横についてきて、中を埋めてきたりしていた。そういうのはホントにうまかった」とW杯アジア最終予選4戦連続ゴールの殊勲の背番号14も神妙な面持ちで語ったほどだ。

 日本の2人のキーマンが個だけでは勝ち切れないと考えたのだから、もっと生かし生かされる関係を周囲と構築するべきではないだろうか。それは、原口も強調していた点だ。

ブラジル相手だとさすがの三笘も苦戦を強いられた
ブラジル相手だとさすがの三笘も苦戦を強いられた写真:YUTAKA/アフロスポーツ

ブラジルレベルの相手だと個の力だけでは剥がしきれない

「間違いなく彼らの能力はスペシャルだし、僕らの強みですけど、ブラジル戦を見てもらった通り、彼らでもなかなか剥がせないシーンは多かった。もちろんシンプルに使って仕掛けさせるシーンもあるといいと思うけど、それだけじゃダメだなというのは誰もが痛感したと思う。いい課題が出たので、これから形を作っていかなきゃいけない」とコメント。W杯を考えると、2~3人のユニットで攻め切るなど工夫を重ねていくことが重要になってくる。

 三笘であれば、左SBの長友佑都(FC東京)や中山雄太(ズヴォレ)、左インサイドハーフに入る鎌田大地(フランクフルト)や柴崎岳(レガネス)らといいトライアングルを形成し、自らフィニッシュまで持ち込むシーンばかりでなく、味方にゴールを取らせる形をブラッシュアップしていくことが必要だ。

 その好例の一つが、ガーナ戦の久保建英(マジョルカ)の代表初ゴールのお膳立てだ。久保は、三笘がゴールライン付近の深い位置までえぐり、相手を引き寄せたところで送ったマイナスクロスを左足で合わせるだけでよかった。

 もちろんこのシーンも、三笘は個で剥がして持ち込んでいるわけだから、ドリブル突破力があることは大前提。さらなる向上も不可欠だ。そのうえで、ワンツーや3人目の動きも臨機応変に織り交ぜられれば、攻撃の幅は広がる。筑波大学卒のインテリジェンスの高い三笘なら、そういうことはよく分かっているはず。本大会までのテストマッチは3~4試合しかないが、1つもムダにすることなく突き詰めてもらいたい。

周囲との連携、守備力の課題とどう向き合う?

 もう1つの課題は守備力のアップだろう。巷では昨今「三笘は南野拓実(リバプール)を超えた」という声が高まっていて、「なぜ南野が先発し続けるのか?」という疑問も聞こえてくる。しかしながら、ブラジルやドイツ、スペインといった強敵相手のゲームを考えた時、ユルゲン・クロップ監督の下でカウンターアタックに対抗する激しいプレスに磨きをかけた南野の強度や激しさを抜きには語れない。森保監督もその部分に注目しているからこそ、南野の先発にこだわっているに違いない。

 三笘は大学時代からフィジカルの課題をたびたび口にしているが、90分間攻守両面でハードワークを続ける原口のようなことは現段階では難しい。彼のドリブル突破という圧倒的個にフォーカスするなら、やはり南野を先発させ、三笘を途中からジョーカー的に出すという形が一番いいのではないか。現状では、カタールW杯本番でもブラジル戦のような状況で投入される可能性が高いだろう。そこでゴールに直結する仕事ができるようになれば、三笘は「W杯男」になれる。稲本潤一(南葛SC)、本田圭佑らの系譜を継ぐ存在に到達できるはずだ。

本田のようにW杯でブレイクを!

 W杯3大会で4ゴールという頭抜けた活躍を誇る本田を越えるのは簡単ではないし、今後そういう選手が出てくるとも限らない。が、「W杯男」というべき勢いのある選手が出現しなければ、強敵揃いのグループリーグを突破し、悲願のベスト8進出を果たすのは困難だ。目下、三笘はそこに一番近い存在。多くの期待がかかる分、重圧を感じるだろうが、それを乗り越えてこそ、本物のスターになれるのだ。

 そういう意味で、6月シリーズラストとなる14日のチュニジア戦(吹田)での三笘への期待はより一層高まってくる。ここで「進化系・三笘薫」の布石を打ち、成長速度を引き上げてほしいものである。