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長友佑都と吉田麻也が「宙ぶらりん状態」 厳しさ増す森保ジャパン欧州組の今

元川悦子スポーツジャーナリスト
森保ジャパンの大黒柱・長友佑都(右)と吉田麻也(左) 写真:JFA/アフロ

2020年突入後、厳しさを増す日本代表の欧州組

 2020年に入ってから、日本代表の欧州組を取り巻く環境が厳しさを増している。

 森保一監督から「絶対的1トップ」と位置付けられる大迫勇也(ブレーメン)がドイツ・ブンデスリーガ再開後は2試合連続スタメン落ちとなり、背番号10をつける中島翔哉(ポルト)も負傷欠場。東京五輪世代の久保建英(マジョルカ)、堂安律(PSV)も出番を減らすなど、攻撃陣は全体的に低調。南野拓実のリバプールデビューに目が行きがちだが、順風満帆とは言い難い状況だ。

 守備陣を見ても、酒井宏樹(マルセイユ)や冨安健洋(ボローニャ)はコンスタントな活躍を見せているものの、東京五輪世代の期待の星・板倉滉(フローニンゲン)もオランダリーグ後半戦突入後はベンチを温めている。GKに至っては、常連組である川島永嗣(ストラスブール)、権田修一(ポルティモネンセ)、シュミット・ダニエル(シントトロイデン)の3人が揃って出場機会を失っていて、不安は募るばかりだ。

代表鉄板守備陣を担う長友と吉田

 指揮官にとってはまさに頭の痛い状況だが、長友佑都(ガラタサライ)と吉田麻也(サウサンプトン)という最終ラインの両大黒柱が宙ぶらりんな状態に陥っているのも、より大きな懸念材料と言わざるを得ない。

 ご存じの通り、長友は2010年南アフリカ、2014年ブラジル、2018年ロシアと3度のワールドカップに出場し、現在も2022年カタールワールドカップを目指して戦い続けている。11月の2次予選・キルギス戦ではAマッチ通算122試合を記録し、歴代2位の井原正巳(柏ヘッドコーチ)に並んだ。一方の吉田も2011年アジアカップから代表に定着し、ブラジル、ロシアの2大会に出場。11月のキルギス戦で100キャップの大台に到達したところだ。

森保監督も絶大な信頼を寄せる両ベテラン

 彼らと同世代の岡崎慎司(ウエスカ)や香川真司(サラゴサ)、本田圭佑(無所属)らが代表から遠ざかる中、森保監督は2人の経験値と安定感を高く評価。2018年9月の新体制発足から継続的に起用してきた。前線は久保や堂安ら若い世代を積極的に抜擢しているが、守備陣だけは計算できるベテランを軸に据えている。今年3・6月の2次予選後半戦と8月末から始まる最終予選でもその方向性を継続するつもりだろう。だからこそ、2人がクラブで試合に出られない現状は芳しいことではない。そのことを本人たちもよく分かっているからこそ、このタイミングでの移籍を視野に入れているのだろう。

若手重視の選手起用の煽りを受ける吉田

 特に吉田の方は危機感が強い。ラルフ・ハーゼンヒュットル監督体制の今季は若手重視の傾向が強く、リーグ戦の先発は10月25日のフェイエノールト戦が最後。カップ戦の先発も1月4日のFAカップ3回戦・ハダーズフィールド・タウン戦だけで、ほぼ3カ月まともにプレーしていない状況と言っていい。「いいクラブがあっていけるタイミングなら行く」と本人は現地メディアに語っている模様で、イングランドにこだわらずに新天地を模索しているという。30歳を過ぎた選手は厳しい扱いを受けるのが欧州サッカー界の常。それは本田や香川も語っていたことだ。2012年ロンドン五輪直後にサウサンプトン入りし、8シーズンを過ごしている彼といえども、逆風には抗えないところに来ている。

テリム監督から直々に誘われ、トルコに赴いた長友だが…

 長友の方はガラタサライの指揮官・ファーティ・テリム監督から直々にオファーを受け2018年1月にインテルから移籍した経緯があり、ここまでは絶対的地位を築いていると見られていた。実際、今季も2019年ラストマッチとなった12月28日のアンタルヤポル戦までほぼコンスタントにピッチに立っていた。ところが、イタリア・ボローニャ移籍合意報道が流れた1月の2試合は続けてベンチ外。「ガラタサライがチーム刷新のため高年棒のベテランである長友放出を画策している」「逆に残留方向に傾いている」とさまざまなニュースが流れていて、何が真実かは定かではない。

 ただ、長友はインテル時代から移籍報道が出るたび「いらないと言われたら荷物をまとめて出ていくだけ」と言い続けていて、今回も同じ心境ではないだろうか。ガラタサライ残留になったとしても「目の前の試合に向けて準備をするだけ」と割り切っているはずだ。そういうメンタル面の強さがあるから、ここまで何度も浮き沈みがあっても、トップレベルで生き残ってきた。2月以降のプレー環境がどうなるかは未知数だが、そういう強靭な精神力を持つ彼のような選手は今の日本代表にはまだまだ必要だろう。

2人のコンスタントな活躍が最終予選突破の絶対条件

 とはいえ、吉田と長友が今季後半戦もずっとプレーできないことになれば、森保監督も最終ラインの構成を見直さざるを得なくなるかもしれない。彼らのような経験豊富なセンターバックと左サイドバックはなかなか見当たらないが、クラブで試合に出ていない選手を無条件で代表レギュラーに据えるというのも異論が生じそうだ。そんな物議を醸す状況に陥る前に、吉田と長友には何とか自身の活躍の場を見出してほしいところ。日本代表が最終予選を確実に突破し、カタールの地でベスト8というハードルを超えるためにも、2人のコンスタントな活躍を強く望みたい。

 まずは冬の移籍期限がクローズする1月31日までの動きを慎重に見守ること。そこに集中したいものだ。

スポーツジャーナリスト

1967年長野県松本市生まれ。千葉大学法経学部卒業後、業界紙、夕刊紙記者を経て、94年からフリーに。日本代表は非公開練習でもせっせと通って選手のコメントを取り、アウェー戦も全て現地取材している。ワールドカップは94年アメリカ大会から7回連続で現地へ赴いた。近年は他の競技や環境・インフラなどの取材も手掛ける。

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