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12日(火)は東京でも初雪になるか 都心で積もる可能性は低いが状況を見て行動を

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
スカイツリーの高さの気温が都心の雪の目安(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 日本海側では記録的な大雪となっていますが、12日(火)は太平洋側でも雪の降る可能性がでてきました。

 気象庁から「初雪」の発表がある気象官署の中で、今シーズンまだ発表されていないのは「東京」のみ(沖縄など南西諸島をのぞく)です。しかし、いよいよ東京でも「初雪」となるかもしれません。

 わずか数センチの積雪で、大混乱となる都心にとって、雪の予想は非常に大切です。しかしながら、関東地方の雪は昔から予想が難しく、予報者泣かせの気象現象でもあります。それは寒気が流れ込むことで降る日本海側の雪とは異なり、いくつもの条件があるためです。

=関東で雪が降る条件=

① 雪雲(雨雲)がかかる

② 滞留寒気があること

③ 地上の気温と湿度→乾燥しているほど雪

④ 風向きが北~北西風

 このように、大きく分けても四つほど条件があります。そこで今回はどうなのか、一つずつ見てみましょう。

①雪雲(雨雲)がかかる=南岸低気圧

 関東地方に雪をもたらすのは、本州の南海上を低気圧が通る「南岸低気圧」ですが、この低気圧のコースによって、そもそも雨雲(雪雲)がかかるかどうかが、最初の判断になります。今回は、南岸低気圧が比較的陸地に近いところを通りますから、降水域はかかるでしょう。

1月12日(火)の降水域の予想 出典:ウェザーマップ(スタッフ加工)
1月12日(火)の降水域の予想 出典:ウェザーマップ(スタッフ加工)

②滞留寒気

 次にあげられるのが、「滞留寒気」と呼ばれる下層に溜まる冷気の層です。関東地方は周囲を山に囲まれた地形とあいまって、地上付近に冷気の層ができることがあります。この層の温度が低くて厚いほど、降水は地上まで解けずに雪となって降ってくるのです。これには、低気圧が発達して冷たい空気を引っ張り込むことがカギになります。

 この滞留寒気が形成されていることの目安とされるのが、上空約500メートル(スカイツリー展望台の高さ)の気温です。

滞留寒気 イメージ図 展望台のあたりの気温が-3度くらいが積雪の目安(スタッフ作成)
滞留寒気 イメージ図 展望台のあたりの気温が-3度くらいが積雪の目安(スタッフ作成)

 経験上、このあたりの気温が-3度以下になると雪が積もる可能性が高くなりますが、それより高いと降っても積もらないことが多くなります。今回は12日12時の段階で東京の上空は0.9度の予想なので雪として落ちてきても、都心は積雪になるには微妙な温度です。

③気温と湿度

 さらに肝心なのが、地上の気温と湿度です。空気が乾燥しているほど、雪は解けずにそのまま地上まで落ちてきやすくなります。その目安とされるのが下の表です。

出典 ウェザーマップ
出典 ウェザーマップ

 同じ気温でも、湿度の高さによって違います。12日12時の気温は東京で3.8度、湿度75%の予想で、この表からすると、都心はみぞれと雨のちょうど境目あたりになります。ほんの少しの気温と湿度の違いで、どちらになるか難しいところです。

 そして、風の向きも重要です。

④北~北西風は雪 北東風は雨

 関東地方の天気予報では「湿った北東風が吹いて~」とよく言われますが、海からの湿った風が流れ込めば当然湿度が高くなり、また冬の時期は海上の方が相対的に気温が高いため、雪ではなく雨が降りやすくなります。一方で、北~北西風の場合、内陸から乾燥した冷気が入ってくるため雪になりやすいのです。

 現時点での東京は1日を通して北、あるいは北北西の風と予想されています。となると、場合によっては、もう少し気温が下がる可能性も出てきます。

 雲、寒気、気温、湿度、風向き、これらの条件が重なって初めて、雪が降り、積雪あるいは大雪になるわけです。もちろん時間を追うごとに風向きや降水の強さ、気温も変わるため、雨から雪、雪から雨に変化もします。関東地方の雪が難しいと言われるのはこうしたことにあります。

雪は混じるけど積もらない

 さて、長々と書きましたが、結局今回は雪が降るのか?積もるのか?

 現段階の結論としては、都心は雪もしくはみぞれが降る可能性はあるものの積雪になることはまずないと考えています。

 今回の低気圧はあまり発達しないこと、上空500メートル付近の気温が高く、滞留寒気の形成が弱いことなどが理由です。

1月12日(火)朝の予想図 出典:ウェザーマップ
1月12日(火)朝の予想図 出典:ウェザーマップ

 さらに、当日の予想天気図をみると、日本海には別の低気圧もあり、典型的な南岸低気圧のパターンとは違うことがあげられます。こうなると日本海の低気圧が寒気の継続的な流れを堰き止めて、南関東で大雪になる可能性は低くなります。とはいえ、ここ数日の冷え込みで、すでに冷たい空気におおわれているので、北関東や多摩地方などではうっすら積もる時間もあるかもしれません。また、南岸にはもうひとつ、先行して低気圧ができる予想で、この影響を受けて12日(火)未明には本体の雪雲(雨雲)より先に雪が降る可能性もあります。

 これと似たような状況だったのが、2019年2月11日です。このときも日本海と南岸に2つの低気圧があり、都心では降雪はあったものの積雪にはいたりませんでした。一方で、千葉や茨城では積雪となったところがありました。

2019年2月11日の天気図 出典:ウェザーマップ
2019年2月11日の天気図 出典:ウェザーマップ

 最新の12日(火)の東京の予報は、曇り一時雪か雨ですが、低気圧の発達具合やコースなどによっては、予報がガラリと変わる可能性もあります。つねに最新の予報を入手して慎重な行動をお願い致します。

1月10日(日)17時気象庁発表の週間予報(一部抜粋)
1月10日(日)17時気象庁発表の週間予報(一部抜粋)

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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