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雪下ろしは危険作業 除雪は必ず複数人で命綱を付けて

森田正光気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長
(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

 今週月曜日から始まった日本海側の大雪は、12月としては記録的になりました。17日15時現在、群馬県水上町藤原で2メートルを超える積雪になっていますが、その他の日本海側でも山間部ではのきなみ1メートルを超えています。

 大雪というと、我々は直観的に交通事故や交通障害、電線への着雪による停電などを思い浮かべますが、実は目立たずに起こる災害が雪下ろし中の事故です。また、ふわふわの雪は「軽い」というイメージがありますが、雪は水分の含み方によって、重さがまったく違います。雪の中に含まれる水との比率を「雪水比(せっすいひ・ゆきみずひ)」といいますが、雪の中に水分が多く含まれていると、数字は0に近くなり、当然雪は重くなります。

 一般に気温が低いと雪は軽く、気温が高いと雪は重くなります。例えば15日(火)、新潟県高田ではその日の平均気温が1.2度、日降水量は77ミリ、降雪量は10センチでした。この時の雪水比(降雪量/降水量)は0.13。一方、同じ新潟県でも湯沢では平均気温が-1.1度、62.5ミリの降水量に対し、降雪量は92センチ、雪水比は1.4でした。つまり、気温の高い、高田の方が雪水比は小さく、湯沢に比べ約10倍も水分が多い、いわゆる湿った重たい雪であったことがわかります。

 さらにこれは降ったときのみならず、雪が積もって時間が経つと、雪は重くなります。したがって屋根に積もった雪というのは、見かけだけで重さを判断できないのです。

雪の重さはどれくらいか

前回の記事でも書きましたが、今回の大雪は日本海の海水温が高かったことも一因です。上空の寒気は真冬並みでしたが、日本海の水温や沿岸部の気温が高かったことから今回は北陸や北関東の山間部でも、比較的湿った雪だったと考えられます。

 そこで、屋根に1メートル積もったときの雪の重さについて考えましょう。1立方メートルの箱の中が全部水だったら1トン(1000キログラム)です。もちろん雪ですからそんなに重くはなりませんが、普通の新雪で100キロ~200キロ前後です。 

 仮に今回の雪の重さを1立方メートルあたり200キロとすると、100平方メートルの屋根に1メートル積もった雪は20トン(象約5頭分)という事になります

 雪国にとって、雪下ろしは必然です。しかし、この必然な行動は危険と隣り合わせで、毎年、多くの命を奪っています。

 国土交通省の統計によると、屋根の雪下ろしなど、除雪作業中の事故は、多雪の年は、1000件以上も発生し、100人以上の方が亡くなるとのことです。しかも死亡事故のおよそ8割は、65歳以上の高齢者に集中しています。

雪下ろしで特に気を付ける事

・安全な装備で行う。

・雪のうえは滑りやすいので、必ず命綱(ロープ)をつけて、ヘルメットなどを装備する。

・作業は必ず複数人で行う。

・一人作業は事故が起きた時に対応できない。必ず共同作業で行う。

・屋根から雪が落ちてこないか注意する。

・時間が経った雪は氷のように硬く、直撃すると危険。

・携帯電話を身に着ける。(何かあったとき、携帯電話は最強の武器)

(国土交通省・雪下ろし10箇条から抜粋)

 上記のように、気を付けないといけないことはいくつもありますが、雪下ろしに慣れている方でも、雪質の状況は毎回違いますし、自分の体調も日によって違います。雪下ろしの事故は、大雪のあとに必ず起こる二次災害です。

大雪の今後

12月17日17時気象庁発表 週間予報 (出典ウェザーマップ)
12月17日17時気象庁発表 週間予報 (出典ウェザーマップ)

 冬型の気圧配置は、強弱を繰り返しています。明日はいったん弱まりますが、週末にまた、やや強い寒波がやってきます。その後は逆に気温が上がりそうで、今度は大雪の降った山間部などでは、雪崩が起きやすくなります。気の抜けない年末が始まりました。

参考

国土交通省HP

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ会長

1950年名古屋市生まれ。日本気象協会に入り、東海本部、東京本部勤務を経て41歳で独立、フリーのお天気キャスターとなる。1992年、民間気象会社ウェザーマップを設立。テレビやラジオでの気象解説のほか講演活動、執筆などを行っている。天気と社会現象の関わりについて、見聞きしたこと、思うことを述べていきたい。2017年8月『天気のしくみ ―雲のでき方からオーロラの正体まで― 』(共立出版)という本を出版しました。

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