アメリカに現れた「スイカ雪」の正体
心に響く歌詞は、教訓となって、人の心に生き続けることがあります。
「上を向いて歩こう(※1)」、「人生いろいろ、男もいろいろ(※2)」など、歌は生きる知恵を与えてくれているようです。
世界にはこんな歌詞もあります。
「犬が歩いた後は気を付けな。黄色い雪は食べてはだめさ」
人々は笑いながらも、この曲のおかげで黄色い雪の正体を再認識したのでした。
では、赤い雪の場合はなんなのでしょうか。
ユタ州の奇妙な雪
アメリカ西部ユタ州にトニーグレーブ湖という湖があります。その周辺の山肌に積もる雪が、いま赤色に染まっています。
上がその画像です。雪が薄い赤色に色づいているのが分かります。山とはいえ、夏至を過ぎてもなお雪が残っているのは非常にまれなことだそうです。これは昨冬から降った記録的な大雪の影響です。
色の正体
では、この色素の正体は何なのでしょうか。
それは、雪の中で生きる藻、「氷雪藻(ひょうせつそう)」です。この藻は、雪の表面が溶けて水の膜ができると繁殖します。
普段は緑色をしています。しかし紫外線からDNAが傷つくのを防ぐために、「カロテノイド」という赤い色素も持っているそうです。この色素は強い日光にさらされると出現します。
赤色の雪は珍しい現象ではありません。約2000年前には、かのアリストテレスも発見していますし、国内でも山形県など山岳地帯でよく見られるようです。
一般に、「赤雪」や「スイカ雪」などと呼ばれています。スイカと呼ばれるのは、その色のほかに、ほのかにスイカの香りを漂わせるからだそうです。
しかし香りも見た目もフルーティーとはいえ、さすがに藻ですから食べない方がよさそうです。
スイカ雪の"暴走効果"
色づく雪は興味をそそられますが、温暖化の面では好ましいことではありません。
なぜなら、白い雪は太陽光をほぼ100%反射して、地球から熱を逃しますが、赤い色は逆に日光を吸収して、熱を溜めこんでしまうからです。
こんな実験があります。
日中の気温が15度の時に服の表面温度を測ると、白い服は21度、赤い服は25度だったそうです。つまり、スイカ雪は白い雪よりも"暖房"効果があるのです。
そうするとこんな負の循環が生まれます。
温暖化→雪が融解→氷雪藻が繁殖→日光の反射率低下→氷が融解→繰り返し…
赤い雪には、このような"暴走効果"が潜んでいると、研究者は指摘しています。
ついでながら、『赤い雪』というタイトルの小村美貴さんの歌にはこうあります。
「男なんかに涙など、みせりゃ男はつけあがる」(※3)
なるほど、これまた教訓をいただきました。
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※1:作詞・永六輔、作曲・中村八大
※2:作詞・中山大三郎、作曲・浜口庫之助
※3: 作詞・喜多條忠、作曲・水森英夫