過去もっとも熱い大西洋で、ハリケーン1号「ブレット」発生へ
19日(月)大西洋のど真ん中に、「ブレット」という名の、この時期としては相当変わった嵐が発生しました。今後、今年1号目のハリケーンに発達する見込みですが、一体何が珍しいというのでしょうか。
アフリカとアメリカ大陸に挟まれた大西洋に、19日(月)「ブレット(Bret)」という名のトロピカルストームが発生しました。トロピカルストームとは、日本近海でいえば「台風」にあたる、熱帯の空気でできた低気圧です。
これからの進路
ブレットは21日(水)にも、今年第1号のハリケーンへと発達して、カリブ海の島々に上陸・接近する見込みです。
予想される進路には、「カリブ海の植物園」の異名を持つドミニカ国、6年前にハリケーン「マリア」で壊滅的な被害が出たプエルトリコ、さらに世界最貧国の1つハイチがあります。
観測史上4例目
ブレットに関して話題になっているのが、異例ともいえる発生場所です。
ブレットは北大西洋の南で発生しましたが、本来ならこの時期、この海域(下図で表したMDR)の水温は低めです。このため、6月にここで発生した熱帯低気圧は少なく、過去173年間の記録では全体の1%にすぎないそうです。
過去の例は、次の3つです。1979年の「アナ」、2017年の「ブレット(たまたま同じ名前)」、そして2021年の「エルサ」です。
アナ、エルサと聞くと、どうも『アナ雪』を連想してしまいますが、「ブレット」もまたミッキーマウスの声優の名前なので、偶然ながらディズニーと縁があるようです。
いまこの“ディズニー海域”を含む、大西洋北部の海水温は、6月としては過去もっとも高くなっています。
ハリケーンを弱める砂も期待できず
一般に暖かな海はハリケーンを強めますが、反対にハリケーンを弱める“頼みの綱”も大西洋には存在します。
それが、サハラ砂漠の砂です。
上空の強風に乗ってアフリカ北部から大西洋に運ばれた大量の砂は、太陽光を遮ったり、空気中の湿度を半減させたりして、ハリケーンの発達をおさえることが知られています。
ところが今後温暖化が進むと、この砂を運ぶ風が弱まるだろうと予想されています。そのうえ海水温が上がると水が膨張して海面が上昇し、沿岸地域ではより洪水が起きやすくなるなど、心配の種は増えるばかりです。