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カリフォルニアで"ゴールドラッシュ2.0"、原因は記録的大雨

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(写真:イメージマート)

かつてゴールドラッシュで栄えたカリフォルニアの町に、金を目当てに人々が集まっています。冬の記録的な大雨により、金が見つかりやすくなっているというのです。一体どういうことでしょうか。

黄金の州・カリフォルニアは、いくつもの金山を抱える宝の土地でした。1800年代半ばにゴールドラッシュが始まり、ほぼ数年で34万kgの金が見つかって、急激な発展を遂げました。

それからおよそ200年が経った今、思いもよらぬことが起きました。過去1200年で最悪とも言われた大干ばつが続いていたカリフォルニアに、この冬、記録的な大雨や雪が降ったのです。幾度も降った大雨のおかげで、干からびていたダムも川も、今では豊かな水で満ちあふれ、枯れ果てていた畑や山にも緑が戻りました。

昨年10月から今年3月にかけて州に降った降水量の総量は、300兆リットルとも試算されています。これは、例年の5割増しに相当するそうです。また全米一の金の宝庫シエラネバダ山脈では、観測史上最も多い17メートルの雪が降りました。

"ゴールドラッシュ2.0"

この悪天が、約200年来のゴールドラッシュをもたらしました。"ゴールドラッシュ2.0"などと名付けられています。

雨や雪解けによる大量の水で川が濁流と化し、川の奥底に埋もれていた金が姿を現しているというのです。その上、ここ数年で起きた数々の大規模な山火事が土壌を緩めたことも、金が採れやすくなっている理由といいます。

カリフォルニアでは、大きな機材を使って金を採掘することは州法により禁止されているようです。そこで金を採る方法は、まさに2世紀前にゴールドラッシュで集まった人たちが用いたような、川底の土を救って探すという旧式な方法なのだそうです。

純金の密度は水の19倍もあるので、通常は軽い土壌を流すことで金をふるい分けることができます。ただ、そのような簡単に採れる金はゴールドラッシュの時にすでに取りつくされています。今回濁流が川底の土壌を勢いよく洗い流してくれたおかげで、川底深くに眠っていた金が出現しているというわけです。

金の価格高騰が止まらない今、記録的な大雨がもたらした思わぬ副産物に、人々が目を光らせているようです。

ただ、シエラネバダ山脈近くの住民に聞いてみたところ、確かに多くの人がやってきてはいるが、見つかるのは小さな砂金ばかりで、一攫千金は難しいだろうということです。

日本は今でもジパング

金といえば、我が国もまた、マルコ=ポーロに「黄金の国」と言わしめたほどでした。多くの金はすでに取りつくされ、今でこそ鹿児島県の菱刈鉱山などで採掘されているだけです。

ところが、その実、日本は今でも金の宝庫であるようです。それは「都市鉱山(urban mining)」と呼ばれ、パソコンや携帯など工業製品などをリサイクルすることなどで”採掘”される金のことです。

たとえば携帯電話1台には0.05グラム、ノートパソコン1台には0.3グラムの金が使われています。こうした金もすべて足せば、日本には世界全体の金の埋蔵量の16%があるといわれています。

最近では温泉からも金が採れることが分かってきました。JAMSTECなどは、温泉水からも金を回収できる技術を開発したそうで、これからは海中で吹き出す熱水にも注目していくようです。

金の価値が高まる中、日本でも新たなゴールドラッシュが始まろうとしています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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