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加州で記録的な9月熱波、ゲームチェンジャーはハリケーン「ケイ」

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
左:ハリケーン「ケイ」(NASA出典)、右:赤紫色が高温警報(NWS出典)

9月8日は「白露」。暦の上では、夜に気温が下がって露が降りる季節となりました。あと半月もすれば秋分の日がやってきて、日に日に夜長が深まります。

ところがです。東京とほぼ同じ緯度に位置するロサンゼルスは先週から連日、真夏でもめったに見かけないような酷暑に見舞われています。たとえば郊外のバーバンクでは4日(日)43.3度、ロングビーチも42.7度となりました。

現在もカリフォルニア州のほぼ全域に高温警報が発令され、その他の地域では次のような高温が記録されています。

・サクラメント:46.7度(観測史上1位)

・ナパ:46.1度

・サンタローザ:45.6度

デスバレー:51.7度(9月の1位タイ)、9日連続49度以上(9月の最長記録)

気温に加えて厄介なのが、湿度です。

通常、カリフォルニアといえば乾燥してカラッとしているため、日本のような蒸し暑さはありません。私の経験でも、気温が30度を超えていても汗がでず、暑さも感じませんでした。

ところが現在は湿度が高く、ある日のロサンゼルスの湿度は夜間90%、昼間50%近くもありました。

電力ひっ迫

ニューサム州知事は、「この熱波は9月としては州の観測史上、最長かつ最悪となるだろう」と話しています。

大干ばつと相まって、水力発電が落ち込んでいる州では電力事情もひっ迫しています。AP通信によれば、6日(火)の州の電力需要は52,000メガワットに達し、観測史上最大になったようです。

そのため当局は、クーラーの温度を26度以上に設定してくださいとか、午後4時から9時は無駄な明かりを消しましょうとか、様々な呼びかけを行っています。

鍵を握る「ケイ」

この暑さはいつまで続くのでしょうか。

実は、まもなく気温が急激に下がります。その鍵を握るのが、メキシコ沖で渦を巻いているハリケーン「ケイ(Kay)」です。

国立ハリケーンセンター出典の図に筆者加筆
国立ハリケーンセンター出典の図に筆者加筆

ケイは東部太平洋の第8号ハリケーンで、メキシコに大雨を降らせ、3人が亡くなっています。このハリケーンが弱まりながら北上し、カリフォルニア州南部に接近する可能性が出ています。

実は、ハリケーンがカリフォルニア州に近づくのは、非常に稀な出来事です。

CNNによると、前回は1997年のハリケーン「ノラ」、つまり25年も前のことだったようです。ノラは、ハリケーンの強さでメキシコに上陸し、その後弱まりながらカリフォルニア州を通過しました。

ところが、ケイは珍しく北へ舵を取り、ハリケーンの接近に慣れていないカリフォルニア州に近づいて、100ミリ以上の雨を降らせる見込みです。たとえばロサンゼルスの年間降水量の平均は、350ミリ程度ですから、大変なことです。

下のロサンゼルスの天気予報を見てみても、9日(金)からはいきなり雨が降り出し、一気に平年並みの温度に戻る予想が出ています。熱波か雨か、いずれにしろしばらくは極端な天候に悩まされることになりそうです。

NWS出典のロサンゼルスの天気予報に筆者加筆
NWS出典のロサンゼルスの天気予報に筆者加筆

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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