風の嵐「ユニス」英国直撃 警戒されたスティング・ジェットとは
18日(金)のイギリスでは、飛行機も、鉄道も、学校も、おおむね休みとなりました。広く国民に”ステイホーム”も呼びかけられた、その理由は、低気圧「ユニス(Eunice)」の仕業でした。
ユニスとは…
現地時間18日(金)、発達した低気圧「ユニス」がイギリスに大荒れの天候をもたらしました。たいていの低気圧は大西洋で最盛期を迎え、少し弱まった状態でヨーロッパにやってきますが、ユニスは珍しくイギリス付近で最盛期を迎えました。そのため、大雨、強風、標高の高い所では吹雪となったのです。
ロンドンを含めたイギリス南部では、珍しく、風に関する”赤色”警報が発令されました。赤色警報とは最上級の警報で、生命の危険をもたらすような著しい天候の恐れがあるときに出されるものです。イギリスにこの種の警報が出るのは、数年に一度程度です。前回は昨年秋でしたが、その前は2018年にさかのぼります。
ロンドンから近いワイト島では、55メートルの最大瞬間風速が吹いたもようです。まだ暫定値ですが、これはこの地方(イングランド)全体の観測史上最速の記録に匹敵します。ヒースロー空港でも31メートルの強風が吹き、飛行機の着陸も大変そうです。(下に動画)
スティング・ジェット
ユニスに伴って恐れられていたのが、「スティング・ジェット(Sting Jet)」と呼ばれる現象でした。訳して「毒針強風域」と言ったらいいでしょうか。日本ではなかなか聞いたことのない名前です。サソリのしっぽのようにカールした雲帯の先端に現れるので、こう名前がつけられたようです。
スティング・ジェットは、発達した低気圧の中に現れる狭い強風域で、とても稀な現象です。その幅はせいぜい50キロ程度、発生時間も3~4時間と短いのだそうです。2003年にレディング大学の科学者らが初めて発見しました。
低気圧後方のドライスロットと呼ばれる乾燥域で雨や雪が蒸発し、周りの空気から熱を奪うと、空気がさらに冷たく重くなって上空から強風となって吹き降りてくるのです。欧州だけではなく、カナダでも発見されている現象ですが、とても珍しいと言われています。
しかし局地的でも風の強さは半端なく、1987年には35メートルの強風が3~4時間にわたり吹き荒れ、1,500万本もの木がなぎ倒されたほどでした。
この世にも恐ろしい現象が起こるのではと警戒されていましたが、幸い今回は発生しなかったと、英国気象局は発表しています。
ただ、それでもユニスによる強風が原因で、倒木や飛来物によって8人が死亡したとアルジャジーラは伝えています。また20,000人が収容できるO2アリーナの屋根も一部が吹き飛んでしまいました。