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「台風14号」フィリピン・台湾をかすめ、次は日本・中国・韓国に接近へ

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
12日昼頃の台風14号のレーダー画像。出典は中央気象局 (台湾)。

台風14号は、台湾に非常に近づきながらも上陸せずに北上していきました。

タイトルの図は、12日(日)13時のレーダーです。明瞭な台風の目が、台湾のすぐ北東の海上にあるのが分かります。上陸しなかったとはいえ、台風本体の雲はしっかりと台湾にかかり、12日の雨量(0~15時)は、北部の新北市で172ミリに達しました。これは9月の半月分の雨に相当します。

台湾東部などでは14号の接近を受けて、当局が「台風休暇」を発表したようです。首都の台北市、新北市、宜蘭県などでは、会社や学校が休みになりました。

「ニアミス台風」

このように、台湾は14号の上陸を免れましたが、実はフィリピンも同じように直撃を逃れています。台風は10日(金)にルソン島の北東の海上を通過していきました。さらに先島諸島にも近づいたものの、台風の中心はずっと海上でした。近づいても上陸しないので、「ニアミス台風」などと名付けたくもなります。

台風の中には、とくに風雨が激しいエリアが2つあります。

その一つが「目の壁」と呼ばれる、台風の目を取り巻く背の高い雨雲です。そして二つ目が「危険半円」と名のついた、台風の右半分です。台風の進行速度と、台風の反時計回りの風の速度が重なって、強い風が吹き荒れます。

台湾もフィリピンも、強大な台風が近づいたものの「目の壁」にも「危険半円」にも当たらなかったことが、不幸中の幸いでした。

中国・韓国・日本に上陸または接近へ

ところが、今後は話が違うようです。

北上するにつれ弱まることが予想されるものの、中国・上海周辺には上陸して「目の壁」がかかるかもしれませんし、韓国や西日本には台風の「危険半円」がかかるほか、上陸の可能性も否定できなくなってきました。いずれにせよ、14号は今後もアジア諸国に広く影響をもたらしていきそうです。

14号の予想進路図。気象庁出典。
14号の予想進路図。気象庁出典。

ハリケーンも連続上陸

ところで広い世界を見渡してみると、陸地に影響を及ぼしているのは14号だけではないようです。実は先週から、毎日のように、ハリケーンや台風などが上陸しています。

まず7日(火)には台風13号がフィリピンに、8日(水)にはトロピカルストーム「ミンディー(Mindy)」が米国フロリダに、9日(木)にはハリケーン「オラフ(Olaf)」がメキシコに、そして11日(土)にはハリケーン「ラリー(Larry)」が11年ぶりにカナダ最東端に上陸しています。さらに12日(日)には、台風13号が熱帯低気圧となってベトナムを直撃しました。(※日付けは各現地時間)

ハリケーンや台風の上陸がこれほどまでに続くことは、ほぼ例がないと言っても過言ではないように思います。

秋は海水温が一年でもっとも高い時期ですから、強い台風もできやすくなります。秋台風に向けて準備を整えておきたいものです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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