アメリカ気象局も10年ぶりに「平年値」更新 アラスカの気候区分が変更に

これまでの「平年」の温度と、新しい「平年」の気温を比較 (出典: NOAA)

気温は平年並みでしょうー。気象キャスターがよく口にする、この「平年」が今年10年ぶりに世界的に更新されます。

どう変わったかを話す前に、そもそも「平年」とは何でしょうか。

「平年」を辞書で調べると「普通の年」とあります。では普通とはなんぞや、ということになりますが、気象の世界では「30年間の平均」と決められています。ではなんの30年間かというと、たとえば2020年における「平年」は1981年から2010年までの30年間の平均でした。ただ、毎年平年値が更新されるわけではなく、1991年や2001年などといった西暦の一の位が1である年に変更されます。今年2021年も更新の年に当たり、平年値が1991年から2020年までの平均となるわけです。

ちなみに1991年はどんな年だったかというと、雲仙普賢岳が噴火した年、横綱・千代の富士が引退した年、さらにチャーリー浜さんが「○○じゃ、あ~りませんか」とお茶の間を笑わせて新語・流行語大賞を取った年でした。そう考えると、30年前というのは結構むかしのことだったと実感します。

「30年」の意味

ところで、なぜ30年なのでしょうか。30という数に特別な意味があるのでしょうか。

「平年値」を30年間の平均と定義づけたのは、現在の世界気象機関(WMO)ですが、その定義づけの理由は、一般的に平均を表すときに30個のサンプルを使うことが多かったからだそうです。つまるところ、それほど深い意味はなさそうです。

どう変わった?アメリカの「平年値」

アメリカ海洋大気庁(NOAA)は4日(火)新しくなった「平年値」発表しました。

それによれば、アメリカ全体の年間降水量の平年値は795ミリとなり、前回の平年値よりも8ミリ増加しました。ただ地域差があって、雨が増加したのは東部と中部で、逆に西部では減少しています。

気温はどうでしょうか。北部の一部の地域(ノースダコタ州、モンタナ州など)を除いて上昇しています。下は本土の3か所とアラスカ州、ハワイ州の都市の新平年値(1991年-2020年)と旧平年値(1981年-2010年)を比較したものですが、概ね新しい平年値の温度の方が高くなっていることが分かります。これを見るに、温暖化が鮮明になっているといえそうです。

新平年値(1991-2020)から旧平年値(1981-2010)を引いた差。NOAAの資料を元に筆者作成。
新平年値(1991-2020)から旧平年値(1981-2010)を引いた差。NOAAの資料を元に筆者作成。

気候区分も変わったアラスカ

中でもアラスカ州フェアバンクスの変化は顕著です。5月の月間平均気温の平年値は前回の平年値よりも0.5度上昇して10度を超えたため、気候区分が変わりました。

これまではケッペンの気候区分で「亜寒帯気候(Sub-Arctic)」とされてきましたが、これからは「夏季温暖大陸性気候(Warm summer continental)」となりました。この気候区分は、少なくとも4か月間は平均気温が10度以上であること、最暑月の平均気温は22度以下、最寒月は氷点下であることが条件です。

NOAAはこれまでの平年値の変遷を、一目で見られる図を公表しています。それが下図ですが、最新の気温は全面的に真っ赤っ赤、降水量は多くのところ緑色に塗られ、高温・湿潤にシフトしていることが分かります。

10個の気温の平年値を比較 (出典: NOAA)
10個の気温の平年値を比較 (出典: NOAA)

10個の降水量の平年値を比較 (出典: NOAA)
10個の降水量の平年値を比較 (出典: NOAA)

日本の新しい「平年値」

アメリカ同様、日本の平年値も今年更新され、今月19日から使われるようになるということです。

気象庁の発表によれば、旧平年値と新平年値とを比べると、年平均気温は全国的に0.1〜0.5度程度高くなり、降水量は多くの地点で10%程度多くなったということです。アメリカと同じような傾向が見られています。

気候の変化で植物も混乱しているようです。ここ30年のうちで、仙台や水戸の桜の開花の平年日は3日早まりましたが、暖かくなりすぎた石垣島などでは逆に開花が遅くなっているというデータがあるほどです。

気温の平年値はいつまで上がり続けるのでしょうか。

新平年値(1991-2020)から旧平年値(1981-2010)を引いた差。気象庁の資料を元に筆者作成。
新平年値(1991-2020)から旧平年値(1981-2010)を引いた差。気象庁の資料を元に筆者作成。