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24時間で「33℃から1℃に」夏から冬到来のアメリカ・デンバー

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
デンバーの資料写真(写真:Panther Media/アフロイメージマート)

ものの本には、「一日の気温が5℃以上下がると脳卒中・心臓病、10℃以上下がると脳溢血を発症しやすい」と書かれてあります。では、それ以上下がるとどうでしょう。8日米コロラド州デンバーでは、体が悲鳴を上げるような気温の急降下が起こりました。

記録的高温

アメリカ西部では、今月に入っても記録的な高温が続いています。6日(日)ロサンゼルス郡では、郡の観測史上最高気温となる49.4℃が記録されました。その前日5日(土)コロラド州デンバーでは、9月の観測史上最高気温となる38.3℃が記録されています。これはこの時期の気温を10℃も上回る異常な高温です。この原因は西風で、風が山を吹き下ろす際にフェーン現象が起きたのです。

24時間で32℃低下

ところがその後、気温は急降下します。寒冷前線が通過し、強い北風が吹き下ろしたのです。7日(月)午後2時には33.3℃あった気温が、そのちょうど24時間後の8日(火)午後2時には32℃も下がって1.1℃になり、おまけに雪まで降ってしまいました。そして現時点(8日午後7時)で気温は氷点下1℃まで下がり、今夜はさらに寒くなると予想されています。

NWS出典の気温実測値のリストに筆者加筆
NWS出典の気温実測値のリストに筆者加筆

『高温→雪』の記録

一日の気温差を日較差といいますが、デンバーの7日(月)の日較差は約27℃に及びました。1872年の統計開始以来、デンバーの日較差の最高記録は38℃です。1872年1月25日、気温は9℃から氷点下29℃と急降下しています。

つまり今回は日較差の記録とはならなかったのですが、どうやら『高温→雪』の記録を塗り替えてしまったようです。

気象学者のブレッツシュナイダー博士によると、これまでアメリカ全土の主要な観測所において、気温38℃から雪が観測されるまでの史上最短の期間は5日だったのだそうです。これは、2000年サウスダコタ州ラピッドシティでの出来事でした。

今回デンバーでは5日(土)に38℃まで気温が上がり、3日後の8日(火)には雪が観測されましたから、この全米記録を更新したことになりそうです。凄まじい記録です。

日較差のすごい記録

驚くことに、国内でも日較差が30℃以上になったことがあります。しかもそう昔のことではありません。

2017年5月3日、北海道釧路市の阿寒町中徹別(なかてしべつ)で、朝4時の気温が氷点下1.8℃であったものの、14時には28.4℃まで上がって、日較差が30.2℃に及びました。また2007年2月には長野県菅平で、24時間で31.5℃(11.2℃→氷点下20.3℃)も気温が下降しています。

ちなみに世界記録はどうでしょうか。それは1972年モンタナ州ロマで観測された57.2℃です。フェーン現象が起きたために、氷点下47.7℃から9.4℃まで一気に昇温したといいます。上には上があるものです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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