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夏休みのハワイに、ダブルハリケーン接近か

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
ワイキキビーチの資料画像(写真:アフロ)

昨年は夏休みの渡航先ナンバーワンの座を台湾に明け渡したハワイですが、今年は再び1位に返り咲いたようです。ハワイといえば、輝く太陽と澄み渡る青空が代名詞ですが、今週末から来週にかけてはどうも雲行きが怪しくなってきました。

現在ハワイの東の海上に、2つの渦巻きが発生しています。上の動画で左にあるのがハリケーン「エリック」で、右にあるのが「フロッシー」です。これらは今後も西進を続け、ハワイに近づくおそれが出ています。

「エリック」のいまと今後

左: アメリカ国立ハリケーンセンター発表のエリックの予想進路図。右: アメリカ気象局発表の警報。それぞれ筆者加筆。
左: アメリカ国立ハリケーンセンター発表のエリックの予想進路図。右: アメリカ気象局発表の警報。それぞれ筆者加筆。

現地時間31日(水)時点のエリックの中心気圧は967hPa、最大風速は45m/sで、カテゴリー2の勢力のハリケーンとなっています。

エリックは1日(木)から2日(金)にかけて、ハリケーンよりも弱い「トロピカルストーム」の勢力でハワイ島の南の海上を通過する見込みです。

エリックの影響を受けるのは主にハワイ島です。現在ハワイ島沖の海上にはハリケーン警報が出され、段々と風が強まり、波も高くなっているようです。1日(木)からは大雨や洪水も予想されています。

「フロッシー」のいまと今後

アメリカ国立ハリケーンセンター発表のフロッシーの進路図に筆者加筆
アメリカ国立ハリケーンセンター発表のフロッシーの進路図に筆者加筆

一方フロッシーの中心気圧は998hPa、最大風速は28m/sで、ハリケーンよりも弱い「トロピカルストーム」の勢力となっています。一時ハリケーンに発達するものの、その後トロピカルストームに戻って、5日(月)頃にハワイ島やマウイ島などに最接近、または直撃するおそれが出ています。

もし予想通りの経路をたどることになれば、来週初めにハワイ島、マウイ島、オアフ島などで大きな影響が出るおそれがあります。

アメリカ気象局の7日間予報に筆者加筆
アメリカ気象局の7日間予報に筆者加筆

ハリケーンはハワイに来ない神話

ハワイは広い太平洋のど真ん中に位置するものの、ハリケーンなどの熱帯性の嵐が直撃することは非常に稀です。

1957年から2017年までの60年間でハワイに上陸したのはたった2つでした。貿易風と呼ばれる北東風の影響や、周囲の海水温が低めであるために、ハリケーンはハワイを避けるか、ハワイに着く前に弱まることがほとんどなのです。

しかし去年は例外でした。

まず8月にハリケーン「レイン」がカテゴリー5の強さでハワイに最接近し、ハリケーンによる雨量としては全米史上3位となる1,300ミリの雨をもたらしました。そして翌月には「オリビア」が観測史上初めてマウイ島とラナイ島を直撃しています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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