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航空機炎上に、雨宿り中の事故 広がる雷の恐怖

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
(提供:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロ)

大型連休の最終日、悲惨な映像が飛び込んできました。モスクワの空港で航空機が炎上し、乗員乗客41名が亡くなるという大事故が発生したのです。

原因はまだ明らかになっていませんが、被雷による通信機能の異常が関係したのではないかと見られています。

Accuweatherによると当時モスクワでは雨が降っており、航空機の進路に当たる方向では雷が発生していたということです。

史上最悪の航空機事故

航空機はしばしば被雷することがあるものの、安定したフライトが揺るがされるほどの問題につながることはないと言われています。

しかしながら、事故が皆無かといえばそうではなく、過去には死者を出すほどの大事故が複数回起きています。

中でも1971年に起きたペルーのランサ航空の事故は、最悪の人的被害を出した航空機事故としてギネスブックにも登録されています。離陸直後、燃料タンクに雷が落ち、機体は高度3,000メートルの高さから森に墜落しました。この事故では乗客乗員92名のうち、91名が命を落としています

唯一の生還者となった17歳の少女は、事故後10日間もジャングルの中をさまよい、その後救助されました。

この話は「Wings of Hope」という題名でドキュメンタリーにもなっていますが、この作品を作った監督は、墜落した航空機に搭乗予定であったものの、事故を免れたのだそうです。

神奈川では落雷で死亡事故

一方週末は国内でも雷が原因で死亡事故が発生しました。

5日神奈川県の鍋割山で、登山中の男性が雷に撃たれ、亡くなりました。男性は木の下で雨宿り中、雷に撃たれたといいます。しかし、少し離れたところにいた友人は無事だったそうです。

日本大気電気学会によると、落雷による死亡原因の1位は開けた平地に立っていた場合2位が木の下の雨宿りで、この2つが全落雷死の半数以上を占めるとのことです。

木の下は意外に危険

雷は高いところに落ちる性質があり、周囲に何もない場合はその木が雷の標的となって、木の下にいる人も感電する危険が高くなります。木の下は一見安全そうですが、実はそうではないのです。周りに木の他に何も隠れる所がなかったら、木から少なくても2メートルは離れて、雷が通り過ぎるのを待つのが賢明と言えます。

出典元: 気象庁
出典元: 気象庁

右のグラフは国内の落雷の月別件数です。春から増加して、8月にピークを迎えます。

外でのレジャーの機会が増加する時期は雷の季節と重なります。しっかり身を守る対策を身につけておきたいものです。

**参考**

雷から命を守るための心得」(日本大気電気学会)

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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