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今年1月は観測史上もっとも暑い月に オーストラリア

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
豪州シドニーのボンダイビーチ (写真提供: 森 春喜)

道路のアスファルトが溶け、百万匹の魚が大量死し、コウモリの死骸が空から降ってくる――。こんな恐ろしい事態が、今夏のオーストラリアでは発生しています。

気象局は31日(木)、オーストラリアの国内平均気温が史上初めて30℃を超え、1910年の統計開始以来最も暑い月になったと発表しました。

暑さの記録

具体的にはどれほど暑かったのでしょうか。

例えば先月24日には、南オーストラリア州アデレードで46.6℃まで気温が上がって、州都としての国内最高気温を記録しました。

また17日にはニューサウスウェールズ州ヌーナで夜間の気温が35.9℃までしか下がらず、国内史上最も高い日最低気温を記録しました。しかし26日には同州ワナーリンの夜間気温が36.6℃となって、あっけなくその記録が更新されています。

高温の原因

記録的高温の背景には何があるのでしょう。

気象局によると、オーストラリアの東に位置するタスマン海に高気圧が長く居座ったことで、前線や涼しい空気が流入しにくかったことが挙げられるようです。加えてモンスーン(雨季)の到来も遅れたことから、気温がなかなか下がりませんでした。

実際1月は記録的な少雨となり、国内全体では平年よりも38%も降水量が少なくなったようです。ビクトリア州では月間平均の20%しか雨が降らず、西オーストラリア州では2005年以来最も乾いた1月となり、タスマニア州にいたっては史上最も雨の少ない1月となりました。

水を飲むコアラ

オーストラリアでは近年気温の上昇が顕著になっており、国内平均気温は過去100年で約1℃上昇しているというデータがあります。(世界平均は0.74℃)

そしてこの環境変化はコアラの行動にも影響を及ぼしているようです。

通常コアラは、餌であるユーカリから水分をとるので、あまり水を飲まない動物なのだそうです。しかしシドニー大学が森の中に水飲み場を設置して観察したところ、1日平均で10分間以上も水を飲んでいたのだそうです。これは熱波や干ばつによって葉の中の水分が減り、コアラの喉が渇いているためといわれています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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