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「ハリケーン・フローレンス」弱まっても記録的被害が懸念される理由

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
12日宇宙から撮影されたフローレンスの目(提供:NASA/ロイター/アフロ)

ハリケーン・フローレンスは、勢力が弱まって「カテゴリー2」の勢力となりました。しかしそれでも、アメリカ史上に残るような大規模な災害が起こる可能性があり、警戒が続いています。

フローレンスの現況・進路

フローレンスの予想進路図 (画像元:National Hurricane Center)
フローレンスの予想進路図 (画像元:National Hurricane Center)

現地時間13日(木)のフローレンスの中心気圧は955hPa、最大風速は43メートルで「カテゴリー2(ハリケーンの階級で上から4番目の強さ)」の勢力となっています。今後も勢力を保ちながら、14日(金)にノースカロライナ州南部に上陸する見込みです。

(↑12日大西洋で26メートルの巨大な波が観測された)

弱まって「カテゴリー2」に

13日のフローレンスの衛星画像 (画像元:NOAA)
13日のフローレンスの衛星画像 (画像元:NOAA)

12日(水)のフローレンスのカテゴリーは「4(上から2番目の強さ)」でした。つまり1日で2段階も弱まってるのです。最大風速で見ると約20メートル弱まり、中心気圧は15hPa上昇しています。衛星画像で見ても、下半分の雲がほとんど消えてなくなっており、弱まっていることがわかります。

それでも被害が拡大する理由

上陸が懸念されるノースカロライナ州は、1954年に「カテゴリー4」のハリケーン・ヘーゼルによる直撃を受けています。フローレンスはヘーゼルよりも弱い状態で上陸することが予想されるものの、被害としては記録的なものとなる可能性があります。

【人口増加】

その理由の一つは、ノースカロライナ州では1950年代から人口が2.5倍も増えていることです。高潮の被害を受けやすい海岸線にも人が多く住むようになり、また大規模なハリケーンを経験したことがない人々も大多数となっています。

【居座り方ハリケーン】

もう一つの理由は、フローレンスが上陸前後に速度を落とし、南東部に停滞することです。このため嵐は週末まで続き、雨量が1,000ミリに達するおそれがあります。これはヘーゼルの雨量をはるかに上回ります。さらにこれまでの同州におけるハリケーンによる雨の記録である611ミリ(1999年)も抜いて、州史上最大となる可能性があります。

ある米・情報サービス会社は、フローレンスによる経済的損失は1700億ドル、また被害家屋は76万軒に及ぶと計算しています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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