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オーストラリアで続く猛暑 高温・少雨で「コアラ」に危機

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
2009年ビクトリア州の山火事で救助されたコアラの「サム」(写真:ロイター/アフロ)

観測史上2番目に暑い夏となったオーストラリアでは、秋を迎えた今でも、うだるような暑さが続いています。

先週はオーストラリア西部で気温が45.9℃まで上昇し、9日(月)は東部のシドニーで35.4℃まで上がって、4月としての史上最高気温となりました。この時期の最高気温の平均は23℃ですから、平年よりも10℃以上高かったことになります。

また南部のアデレードでは3日間連続して最高気温が34℃を超え、過去134年間ではじめての事態となりました。

暑くなるオーストラリア

オーストラリアでは、ここ数十年、気温が顕著に上昇しています。

国全体の日平均気温は、1910年から2014年の間に0.9℃も上がっています。また2000年から2014年の間に史上最高気温が出た回数は、史上最低気温の12倍にも及びました。

オーストラリア国立大学の研究によると、2040年代にはシドニーやメルボルンで気温が50℃に達するおそれもあるようです。

こうした気温上昇で熱中症患者や山火事のリスクが増加しているほか、「コアラ」の未来にも暗い影を落としています。

温暖化のもたらすコアラへの影響

【天敵と交通事故】

毛皮に包まれ、ぽっちゃり体形のコアラは、暑さに強い動物ではありません。普段は木の幹に抱きついて体温を下げるなどの工夫をしていますが、酷暑や乾燥が続くと、コアラは水や涼を求めて地上に降りてきます。

その結果、犬などの肉食動物に襲われたり、交通事故に遭遇したりして、毎年4,000頭ものコアラが命を落としているそうです。

【ユーカリ】

また、温暖化で大気中の二酸化炭素濃度が高くなると、コアラのえさであるユーカリの中のたんぱく質が減少し、栄養分が減るといわれています。

【山火事】

さらにコアラは動きが遅く、住み家であるユーカリの木も燃えやすいため、しばしば山火事の犠牲となります。近年は高温と少雨の影響で山火事の発生数が増加しているため、被害に遭うコアラの数も増えていると考えられます。

(↑2009年、山火事で救助されたコアラ(名前:サム)が、隊員の差し出したペットボトルの水を飲む動画が話題となった)

絶滅のおそれも

コアラの個体数はすでに減少傾向にあって、クイーンズランド州では過去20年の間に4割も減っているとの調査もあります。数十年後には絶滅するおそれも指摘されていて、国際自然保護連合は「絶滅のおそれの可能性のある種」の一つとして指定しています。

そもそも「コアラ」の意味とは、先住民の言葉で「水を飲まない」なのだそうです。オーストラリアの乾燥した厳しい環境の中で順応してきたコアラにとっても、このところの環境の変化はあまりにも急激で、過酷なものとなっています。

**参考リンク**

・国際自然保護連合のレポート (PDF)

・オーストラリアコアラ基金のサイト

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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