Yahoo!ニュース

氷点下38℃にサメ凍死も アメリカを襲う「年越し寒波」

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士
記録的大雪を観測した米ペンシルベニア州エリー(写真:ロイター/アフロ)

寒さの便り、続々と…

アメリカ本土のほぼ最北端に「アイスボックス」という別称がついた場所があります。それはミネソタ州インターナショナルフォールズという町なのですが、27日(水)この地で日最低気温の記録となるマイナス38℃が観測されました。

一方、五大湖に面するペンシルベニア州エリーでは、25日(月)86センチもの大雪が降り、史上最も雪の多いホワイトクリスマスとなりました。

さらにマサチューセッツ州の沖合では、凍死したと見られる2頭のサメが発見されています。

このように現在、アメリカ北部は記録的な寒波に襲われています。

<今週観測された気温>

コットン(ミネソタ州)氷点下41℃

ワシントン山 氷点下37℃ ※風速を考慮した体感温度は-67℃

デトロイト  氷点下20℃ ※日最低記録(27日)

ニューヨーク 氷点下11℃ ※日最低記録(29日)

寒波の原因

こうした記録的な低温は、何によってもたらされているのでしょうか。

北極上空には、非常に冷たい空気からなる「ポーラー・ボルテックス(極渦)」と呼ばれる巨大な低気圧があります。そしてこの低気圧の周りには、ジェット気流が流れています。現在、このジェット気流がいつもよりも著しく蛇行して流れているために、ポーラー・ボルテックスの寒気が南下し、北米大陸の東部に集中的に流入しているというわけです。

寒波はいつまで?

少なくても来週いっぱいは気温の上昇が望めない状態となっています。

ニューヨークの予想気温(下)を例にとって見てみましょう。平年だとこの時期の最高気温は5℃ですので、2日にかけて10℃以上も低い低温が続くことがわかります。大規模なカウントダウンが行われる31日夜は-14℃と、記録的に寒い大晦日になることも予想されています。

NYの天気予報 (NOAAの画像を元に筆者加筆)
NYの天気予報 (NOAAの画像を元に筆者加筆)

トランプ大統領の発言

この寒波に関して、トランプ大統領は自身のツイッターに下記のようなコメントを出しましたが、地球温暖化を揶揄するような発言だと、物議を醸しています。

「アメリカ東部は史上最も寒い大晦日になるらしい。我が国が、他の国々とは異なり、その対策に数十兆ドルも費やそうとしていた古き良き地球温暖化を、多分我々はもう少し活用したらいいのではないだろうか。とにかく着込んで暖かく過ごそう。」

寒いのは北米限定

トランプ大統領の発言とは裏腹に、今の世界全体の気温をみると面白いことがわかります。

上の図は28日(木)の世界気温の平年との差を表していますが(赤は平年より暖かく、青は寒い所)、北米大陸だけが真っ青に塗られているのがわかると思います。地球全体ではほとんどの所が平年よりも暖かくなっているものの、アメリカとその周辺だけが10℃以上も寒い状態となっているのです。

NASAの気候学者は先日、2017年は史上2番目に暑い年となる可能性が高いと発表しています。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

森さやかの最近の記事