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カナダで「火災旋風」発生 関東大震災では数万人が犠牲に

森さやかNHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

カナダの火災旋風

先週木曜(14日)、カナダ西部エドモントン近郊で、巨大な炎の竜巻が発生しました。山火事の消火活動の際に起きたもので、消防士が顔や腕に軽い火傷を負いました。

撮影:Diane Logan

火災旋風とは

この現象は、「火災旋風」と呼ばれます。英語では、「ファイアネード(Fire+Tornado)」と言ったりもします。火災旋風は、大規模な火災や山火事などの際に発生し、時に1000度を超えるような超高温となり、風速も100メートルに達することもあります。

一見、竜巻のように見えますが、メカニズムが違います。一般に竜巻は上空と地面付近の温度差で発達しますが、火災旋風は火が空気を消費し、周囲の空気を取り込むことで発達します。また、竜巻は上空に雲を伴っていますが、火災旋風は単独で存在しています。

火災旋風のメカニズム「竜巻のふしぎ」(共立出版)
火災旋風のメカニズム「竜巻のふしぎ」(共立出版)

関東大震災で起きた、火災旋風

ところで、世界で起きた火災旋風の中で、とりわけ大きく甚大な被害を出したものは、日本で発生しているのです。それは、1923年9月1日に起きた、関東大震災(相模湾を震源とするマグニチュード7.9の地震)の際に起きました。

震災後の大火事により、東京・横浜合わせて140もの火災旋風が発生したと伝えられています。特に、東京都墨田区の陸軍被服廠跡(軍服などを製造していた工場)で起きた旋風は被害が大きく、3万8千人が亡くなりました。その時の炎の高さは、100〜200メートルにも及び、人が宙を舞ったとも証言されています。

被害が大きくなった原因は、その場所が多くの被災者の避難所となり、人々が燃えやすい家財道具を、足の踏み場もないほどに持ち込んだことです。

東京大空襲、阪神大震災でも発生

東京大空襲の際にも、火災旋風が発生しています。空襲から逃れてきた多くの人々が、隅田川の言問橋の両サイドから押し寄せ、身動きが取れなくなったところに火災旋風が襲い、2000人の方が亡くなったとも言われています。その他、広島・長崎の原爆投下、阪神・淡路大震災などでも確認されています。

さらに近い将来起こる恐れのある首都直下型地震では、火災旋風により数千人が犠牲になるとも言われているのです。

NHK WORLD 気象アンカー、気象予報士

NHK WORLD気象アンカー。南米アルゼンチン・ブエノスアイレスに生まれ、横浜で育つ。2011年より現職。英語で世界の天気を伝える気象予報士。日本気象学会、日本気象予報士会、日本航空機操縦士協会・航空気象委員会会員。著書に新刊『お天気ハンター、異常気象を追う』(文春新書)、『いま、この惑星で起きていること』(岩波ジュニア新書)、『竜巻のふしぎ』『天気のしくみ』(共立出版)がある。

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