Yahoo!ニュース

センバツ21世紀枠候補9校決まる! 紀州路に旋風を巻き起こした田辺は、和歌山勢4校目の選出なるか?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
センバツ21世紀枠の候補9校が決定。田辺は和歌山勢4校目の選出なるか(筆者撮影)

 来春センバツの21世紀枠候補9校が決まった。この中から2校が夢の甲子園切符を手にする。従来の3校から1校減って「競争率」は上がるが、東西の区分はなくなる。近畿は田辺に決まり、和歌山勢として4校目の出場を狙う。まずは、田辺を除く8校のプロフィールを紹介する。

 別海(べつかい・北海道)=オホーツク海に面した酪農が盛んな地域にあり、町は「人より牛の方が多い」と言われる。中学時代に北海道大会で優勝したメンバーを中心に部員16人で健闘し、秋の全道大会では4強まで進出した。

 仙台一(宮城・東北)=120年を超える歴史を持つ伝統進学校。今秋、17年ぶりに東北大会出場を果たした(初戦敗退)。データ班の分析力を生かした頭脳的な野球をする。夏の甲子園に3度出場も、昭和25(1950)年を最後に聖地から遠ざかる。

 水戸一(茨城・関東)=昨年度、東大に15人の合格者を出した県内屈指の伝統校。野球部も130年を超える歴史があり、野球関係の偉人も多い。好投手を擁し秋は県4強で、昭和29(1954)年の夏以来、70年ぶりの甲子園をめざす。

 富山北部(北信越)=100年を超える歴史がある伝統校で、全国でも珍しい「くすり・バイオ科」がある。昭和44(1969)年に春夏連続出場し、夏は8強入りした。今夏、そして秋に県で準優勝。北信越大会でもタイブレークの熱戦を演じている。

 帝京大可児(岐阜・東海)=昭和63(1988)年創立の私学。質の高い文武両道をめざし、小学生への野球教室やボランティア活動など地域貢献も積極的に行っている。県内の上位常連で、強豪とも互角に渡り合っていて、初の甲子園を狙う。

 岡山城東(中国)=昭和62(1987)年創立の県立校で、春夏通算5回の甲子園出場を誇る。野球部の卒業生の7割近くが国立大に進むなど、高いレベルで文武両道を実践。秋は県2位で中国大会に進み(初戦敗退)、20年ぶりの甲子園をめざす。

 大洲(愛媛・四国)=明治34(1901)年創立の地域に根ざした伝統校。卒業生にはノーベル賞受賞者もいる。5年前の西日本豪雨を経験した生徒も多く、ボランティア活動が盛ん。県大会8強ながら、経験豊富な17人の2年生がチームを引っ張る。

 鶴丸(鹿児島・九州)=鹿児島の公立でトップの進学実績を誇る名門校。今秋は、強豪の鹿児島実、鹿児島商を破るなどの快進撃でベスト4入りした。第2回センバツに出場(当時は鹿児島一中)していて、99年ぶりの復活なるか。

田辺は智弁和歌山を満塁弾で破る

 近畿は田辺(和歌山=タイトル写真)に決まった。110年を超える歴史があり、野球部も、戦後すぐの昭和22(1947)年と翌年、2年連続でセンバツに出場。平成7(1995)年夏には、選手権初出場も果たしている。今秋は、久しぶりに和歌山大会で活躍し、主役に躍り出た。準々決勝で今夏代表の市和歌山をコールドで圧倒すると、準決勝では智弁和歌山に対し、終盤の7回に4番・山本陣世(じんせい=2年)が逆転満塁弾を浴びせ、5-2で快勝した。昨季の春夏甲子園出場校を連破したことになる。決勝こそ耐久に惜敗したが、秋の紀州路に旋風を巻き起こした。

エースと中軸打者の活躍で京都国際と互角の熱戦

 52年ぶりの出場となった秋の近畿大会では、常連の京都国際と1回戦で当たった。初回に山本陣の適時打で先制し、3回に同点とされたが、エース・寺西邦右(ほうすけ=2年)はよく投げた。

田辺のエース・寺西は甲子園常連の京都国際に連打を許さず、互角の試合を演出した。「甘いタマを打たれ、悔しい」とタイブレーク負けしたが、本格派右腕は、全国の舞台でも十分に通用する(筆者撮影)
田辺のエース・寺西は甲子園常連の京都国際に連打を許さず、互角の試合を演出した。「甘いタマを打たれ、悔しい」とタイブレーク負けしたが、本格派右腕は、全国の舞台でも十分に通用する(筆者撮影)

 4回から7回までは3人ずつで攻撃を終わらせ、8回に3番・山本結翔(2年=主将)が勝ち越し打を放つ。センバツを手繰り寄せたかと思われたが、その裏に2死から追いつかれると、そのままタイブレークに突入した。

タイブレークは不運もあった

 先攻の田辺は、10回の攻撃でいきなり走者を走らせたがこれが裏目に出て結局、無得点。その裏、寺西は先頭打者のバントを三塁でアウトにしたが、満塁からサヨナラ打を浴びて、2-3で惜敗した。

初回に田辺は、山本陣の適時打で岡本和樹(2年)が生還。先制に成功する。終始、先手を取ったが、タイブレークで力尽きた(筆者撮影)
初回に田辺は、山本陣の適時打で岡本和樹(2年)が生還。先制に成功する。終始、先手を取ったが、タイブレークで力尽きた(筆者撮影)

 田中格監督(51)は「緊張はあったが、精一杯やった」と話し、「エースと4番がしっかりしていた」と投打の軸の活躍に手応えをつかんでいた。内容的には投打とも互角以上の出来で、タイブレークが、先攻で8番からの攻撃(京都国際は1番から)など、不運もあった。

向陽、海南、桐蔭に続く出場なるか

 和歌山は「野球王国」として名高く、21世紀枠ではこれまでに、旧制中学時代から甲子園で活躍してきた「御三家」が相次いで選ばれている。82回大会で向陽(旧制海草中)が、86回大会で海南(海南中)が、そして87回大会では桐蔭(和歌山中)が出場した。田辺がセンバツに連続出場した戦後すぐは、まだ学制改革前で、田辺中としての出場だった。近畿大会4強に残り、一般枠選出が確実視される耐久も、甲子園出場こそないが、170年を超える歴史があり、揃って出場ともなれば、和歌山のオールドファンにとっては、こたえられないセンバツになるだろう。

来春、出場枠減も東西分けはなくなる

 来春から出場枠が減って「2」となる。ただし、従来の東西分けはなくなり、9校を一括審議して2校を選ぶ。例えば、東日本が2校でもかまわないのだが、傾向として、「困難克服地域密着型」と「文武両道名門型」に大別すれば、いずれかに偏ることはあまりなかった。今回は、地域を代表するような名門進学校が多く候補に挙がっていて、傾向が踏襲されるか、1月の選考結果に注目したい。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

森本栄浩の最近の記事