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中国で見合いを断っただけで、暴行されてしまった女性

宮崎紀秀ジャーナリスト
中国ではすでに春節にむけた移動が始まるが...(2023年1月7日北京)(写真:ロイター/アフロ)

 今年は1月22日が旧正月の春節。多くの中国人にとっては故郷で家族や親戚と共に過ごせる重要で貴重な機会だが、一部の未婚女性にとっては、「結婚はまだか」「相手はいるのか」などのお節介が憂鬱な時期でもある。そんな中、望まぬ見合い話を断った女性が、逆ギレされて暴行を受ける事件が起きた。

親戚の息子に紹介したいと言った男が...

 被害にあったのは34歳の女性。女性を取材した中国メディアによれば、経緯は以下のようになる。

 女性は普段は広東省で勤めているが、春節を前に実家のある河南省の村に里帰りした。すると、村の知り合いの男に、「親戚の息子に紹介したい」などと見合いを持ちかけられた。女性はその話を断った。

 にもかかわらず男は、後日、改めて女性の実家にやってきた。女性は不在だったが、母親との間で言い争いになった。男は「(女性が)30歳を越えてもまだ結婚もしていない。紹介しようという相手も出稼ぎに行っていて金はしっかり稼いでいる」などと不愉快な物言いをしていったという。

 女性は、すでにはっきり断っている。きちんと話をしようと男の家を訪ねたが、男は不在だった。だが、男の妻と娘がひざまずいて詫びたため、女性はびっくりしたという。女性は2人を立ち上がらせて、その場を立ち去った。

 その日の午後、男が妻と息子と娘を連れて、女性の実家にやってきた。男は、女性の方が妻と娘をひざまずかして謝罪を強要したと考えていたらしく、女性を口汚く罵ったという。

鉄パイプで

 さらにその翌日、男たちが再び女性の実家を訪ねて来たため言い争いとなった。男は激昂し女性の首を絞めつけ、男の息子は鉄パイプで女性の母親を殴るなどの暴行を加えたという。女性は警察に通報した後、母親を連れて病院に行った。

 その時撮ったとみられる写真では、女性は、唇と頬に切り傷、首に引っ掻かれたような長い傷を負っている。母親はもっと深刻で、肋骨を折るなどの重傷を負った。

 女性は取材に対し、「(見合いを断ったことで)、人が殴られ入院することになるなんて、思いもしなかった」などと話している。確かにとんだ年末になってしまった。

 女性は、見合い話を断ったために親戚の手前で男の面子を潰してしまったことが原因だと考えているようだ。

 中国の多くの農村では嫁不足による結婚難という問題があり、独身女性は希少価値をもつ。そのため見合いを斡旋して金を受け取る者もおり、ネットでは事件の背景にその可能性を指摘する声もある。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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