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中国で10歳の少女が家庭教師から受けた性暴力を泣きながら告白。それを知った母の行動は?

宮崎紀秀ジャーナリスト
中国では未成年への性犯罪が相次ぐ(写真は北京の天安門。本文とは関係ありません)(写真:アフロ)

 10歳の少女が家庭教師に授業中に体を触られるなどのわいせつ行為を受けた。それを知った母親の知恵が、密室で行われた性犯罪を証明する鍵になったという。中国で多発する未成年に対する性暴力。被害側が自衛のためとった手段とは。

服の上から少女の体を...

 今月22日、四川省の成都市青羊区の裁判所がある性犯罪の被告に対し有罪判決を言い渡した。報じた中国メディアによれば、被害者側の“反撃”が犯罪の証拠の決め手となったという。

 10歳の娘の母親である黄さんは、およそ1年前の2021年12月、娘と同じ年頃の2人の男の子の補習のために、家庭教師を雇った。家庭教師は30過ぎの既婚の男。授業は一緒に補習を受ける男の子の家でやることになった。

 ところが、補習が始まりしばらくすると娘が勉強に行くのを嫌がるようになった。当初、その理由はよく分からなかったが、半年ほど経った今年5月、娘が泣きながら理由を打ち明けた。

 家庭教師の男は、授業中に服の上から少女のプライベートな部分を触ってくるのだという。それは一度きりではなかった。明るかった娘の性格は、引っ込み思案で臆病に変わってしまった。

警察へ通報?いや、その前に...

 真相を知った黄さんは当然、憤慨した。しかし、今一度冷静になり、どうしたら家庭教師の男に法的な制裁を加えられるか考えた。そこで他の親たちと相談した上で、補習が行われる男の子の部屋に監視カメラをこっそりと設置した。そして普段通りに授業を続けさせ、家庭教師の男が娘に手を出す決定的な証拠を録画したのだ。黄さんはこの証拠を得た後に、はじめて警察に通報した。動かぬ証拠を前に家庭教師の男は罪を認めたという。

 22日の裁判で、青羊区の裁判所は家庭教師の男に児童猥褻罪で懲役5年と、未成年に関わる就業を終身に亘って禁ずる判決を言い渡した。

 中国では教育に関わる者による未成年に対する性犯罪などが後を絶たず、厳罰化を目指す傾向にある。今月初旬にも、最高人民法院(最高裁に相当)、最高人民検察院、教育省が、犯罪歴のある者の教育現場への就業を禁止するなどの対策を実施していく意見書を出したばかり。今回の“終身就業禁止”の判決も、その方針に沿ったものと言える。

できれば証拠を残して

 だが厳罰化したところで、こうした犯罪を完全に防げるわけではないだろう。特に密室、しかも加害者が権威を持つ者や近親者であれば被害者が泣き寝入りしてしまう可能性も高い。

 そうした中で、今回の裁判に関し女性裁判官は、保護者が提出した監視カメラの映像が犯行の最も有力な証拠になったと中国メディアに対し明かしている。

 もちろんこうした犯罪を未然に防ぐに越したことはない。この裁判官は、家庭での性教育を含め、性暴力に対し「ノー」と言えるような子供たちの自衛意識を高めることも重要だと指摘する。

 だが不幸にも被害にあってしまった場合には、写真や録音、毛髪や皮膚、通話記録などの犯罪の証拠を残すことが重要だと話す。また、被害者に対しては、シャワーを浴びたり、服を洗ったり、物を捨てたりしないようにとアドバイスしている。

ジャーナリスト

日本テレビ入社後、報道局社会部、調査報道班を経て中国総局長。毒入り冷凍餃子事件、北京五輪などを取材。2010年フリーになり、その後も中国社会の問題や共産党体制の歪みなどをルポ。中国での取材歴は10年以上、映像作品をNNN系列「真相報道バンキシャ!」他で発表。寄稿は「東洋経済オンライン」「月刊Hanada」他。2023年より台湾をベースに。著書に「習近平vs.中国人」(新潮新書)他。調査報道NPO「インファクト」編集委員。

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