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いくつ知ってる?ファッション用語の日本語・英語の違い

宮田理江ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター
ファッション用語、実はカタカナ英語かも?(写真:REX/アフロ)

ファッションの用語には意外にも国やエリアで言い方の異なるケースが珍しくありません。たとえば、日本で言う「ワンピース」はアメリカでは「ドレス(dress)」。英語で「one-piece」と言うと、上下がつながったタイプの水着のようなイメージになります。国外や英語通販サイトでのショッピング機会が増えてきたこともあり、この機会にこのような異なる言い回しの事例を押さえておきましょう。

◆パンツ pants(アメリカ)、trousers(イギリス)

マスキュリンなパンツのコーディネート
マスキュリンなパンツのコーディネート写真:IMAXtree/アフロ

例えば、パンツ。日本では昔から「ズボン」と呼んできました。これは「ズボン」と穿くところからだといわれます(諸説あり)。近頃は米国英語(以下、米語)にならって国内でも「パンツ(pants)」と呼ぶことが増えました。「トラウザーズ(trousers)」という呼び方も徐々に広まっています。

気をつけたいのは、英語で書く場合、pantsもtrousersも必ず複数形になるところです。左右の足を入れるからだとか。時々、店頭掲示や商品タグで単数形を見かけますが、本来は複数形。靴の「shoes」や眼鏡の「glasses」と同じ扱いです。一方、左右に分かれていないスカートは「skirt」と、単数形が基本です。

pantsとtrousersは同じくズボン類を指しますが、pantsは米語で、trousersはイギリス英語という違いがあります。trousersは紳士服から出ているので、割ときちんとしたメンズタイプを意味するのが普通です。スーツのボトムスというイメージに近いでしょう。

イギリス英語でのpantsは下着を指すことから、イギリスの店舗で「パンツを買いたい」と言うと、あらぬ誤解が生じるケースも起こり得そうです。米語の下着は日本でもおなじみの「underwear」といいます。形によってはpantiesやtrunksとも呼びます。

pantsだけでは幅が広くて、意味を伝えにくい場合は、pantsの前に言葉を添えます。スーツ用ならsuit pants、スポーティーなタイプならtrack pantsといった具合です。アスレティックなアイテムをしなやかに着こなす「アスレジャー」のトレンドではトラックパンツがヒットしました。上下がそろったタイプは日本では通称で「ジャージ」と呼ばれますが、英語では「track suit」です。

英語ではpantsを添えない「shorts」をよく見ます。日本語では「ショーツ」は女性用のアンダーウエアというイメージがありますが、英語では短め丈パンツ、ショートパンツを指します。

◆ベスト vest(アメリカ)、waistcoat(イギリス)

ベストを1枚でビスチェ風に着こなして
ベストを1枚でビスチェ風に着こなして写真:REX/アフロ

ウィメンズのキーアイテムに大出世したのは、両袖のない「ベスト(vest)」です。フランス語では「ジレ(gilet)」と呼びますが、同じ物です。日本では昔は「チョッキ」と呼んでいました。このvestは米語の呼び名。イギリス英語ではウエスト丈にちなんで「ウエストコート(waistcoat)」と呼ぶのが一般的です。実際、ロンドンの紳士服店ではベスト売り場に「waistcoat」の札が掛かっています。

イギリスで「vest」は米語の「タンクトップ(tanktop)」を指します。日本ではアメリカ流が定着した格好です。逆に、脚にピッタリのストッキング類はイギリス英語で「tights」といい、米語では「pantyhose」なので、こちらはイギリス流が日本で根付いています。

ちなみに、ベストは袖がないのが基本ですが、袖のない服を日本で指す「ノースリーブ(no-sleeve)」は英語では一般的ではありません。「スリーブレス(sleeveless)」と言うほうが普通です。

◆セーター sweater(アメリカ)、jumper(ジャンパー)

ざっくりニットトップスにフェミニンなスカートを合わせて
ざっくりニットトップスにフェミニンなスカートを合わせて写真:IMAXtree/アフロ

日本の冬の必需品「セーター」は米語「sweater」の発音がなまったものです。もともとは「汗をかかせるもの」という意味があります。保温性の高い毛糸で編んである点で納得の名前です。日本ではセーターのことをニットと呼ぶことが多くなっていますが、ニットは素材なので、本当はニットトップスと呼ぶのが正しいでしょう。日本でいうニットはアメリカでもイギリスでも素材のことを指します。

一方、イギリス英語でのセーターの呼び名は「ジャンパー(jumper)」。こちらは「頭からかぶる」というイメージで、日本でいう「プルオーバー」のような使い方です。実際、「pullover」でも通じます。では、日本でいう「ジャンパー」は英語でどう言うかといえば、米語もイギリス英語も「ブルゾン(blouson)」です。

◆スウェットシャツ sweat shirt(アメリカ・イギリス)

スウェットシャツをエレガントにアレンジ
スウェットシャツをエレガントにアレンジ写真:IMAXtree/アフロ

近年は日本でも「スウェットシャツ(sweat shirt)」と呼ぶようになった、厚手の裏起毛素材のトップスは以前は「トレーナー(trainer)」と呼ばれていました。トレーニングに使うイメージからの呼び名だったとみえますが、汗をかいても構わないようなという意味では「スウェットシャツ」のほうがピッタリです。

この「トレーナー」を複数形にした「trainers」はイギリス英語ではスニーカーを指します。米語の「sneakers」も通じるようですが、日本人がスウェットシャツのつもりで「トレーナーをください」と、イギリスで言うと、スニーカー売り場へ案内されるかもしれません。服と靴では大違いなので、面食らってしまいそうです。「sneakers」はもともとゴム底のおかげで足音が立たないところからのネーミング。「こっそり歩く者」という意味です。

◆日本だけで通じる「パーカ、ビーチサンダル、スタジアムジャンパー」

スタジアムジャンパーをドラマティックに装う
スタジアムジャンパーをドラマティックに装う写真:IMAXtree/アフロ

スウェット素材の服といえば、日本ではフード付きの「パーカ(parka)」がポピュラーです。ストリートルックの定番的な存在。国内の売り場では当たり前に「パーカ」と表示されていますが、米語ではフード付きの服は「フーディー(hoodie)」と呼ぶのが一般的です。「parka」は本格的な防寒着を指すことが多いようです。日本では「アノラック(anorak)」と呼ばれるようなタイプです。

また、近頃は街中でも履く人が増えたビーチサンダルは英語との違いが際立つアイテムです。英語では「flip flops」という言葉がよく使われます。

更に、日本語でいう「スタジアムジャンパー」は春らしくて爽やかなマリンルック。米語では「バーシティジャケット(varsity jacket)」と呼びます。「varsity」は大学の代表チームを指す言葉です。

◆「ワードローブ」「ボーダー」は日本独特の表現

爽やかなマリンルック
爽やかなマリンルック写真:Splash/アフロ

服に関連した言葉に「ワードローブ(wardrobe)」があります。もともとは服をしまっておく洋服ダンスや衣装戸棚を指す言葉です。そこから意味が広がって、手持ち服のラインアップ、全部という意味でも浸透しています。こちらはイギリス英語。米語では「クローゼット(closet)」です。日本でも「ウォークイン・クローゼット」としておなじみになりました。しかし、「手持ち服全体」という使い方をするのは日本流のようです。

色やモチーフ・柄にも日本語とのずれがあります。たとえば、横方向の縞模様としておなじみの「ボーダー(border)柄」。これは日本でしか通じない呼び名です。英語では縦でも横でも「ストライプ(stripe)」と言い表します。日本では「縦=ストライプ、横=ボーダー」と呼び分けていますが、これは日本だけのローカルルールのようです。

◆ネットショッピングでも英語表現にご注意

ここまで見てきた通り、日本のファッション用語には「国内限定」のパターンが多く、アメリカやイギリスでは注意が必要です。さらに、米語とイギリス英語も異なるから、なおさら誤解が生まれやすくなっています。海外旅行の際だけではなく、海外のネットショップで商品を買う場合にも戸惑わないよう、お目当てのアイテムやデザインを指す現地の英語表現を予習しておくほうが安心かもしれません。サイズに関してもヨーロッパとアメリカは表示ルールが異なるので、サイズ対照表を参考に、トラブルを避けて上手なショッピングを楽しんでください。

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサーが企画・執筆し、編集部のサポートを受けて公開されたものです。文責はオーサーにあります】

ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター

多彩なメディアでコレクショントレンド情報をはじめ、着こなし解説、スタイリング指南などを幅広く発信。複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスも経験。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。2014年から「毎日ファッション大賞」推薦委員を経て、22年から同選考委員に。著書に『おしゃれの近道』(学研パブリッシング)ほか。野菜好きが高じて野菜ソムリエ資格を取得。

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