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ローラも柴咲コウもマリエも、3ブランドとも柱に「サステナブル」 その魅力は?

宮田理江ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター
ベトナムにあるデニム工場をローラさんが訪問 (画像協力:STUDIO R330)

地球環境を大切にする態度の「サステナブル(sustainable)」はファッション界でもキーワードとなっています。地球に住み続けるために選ぶべき方法という意識から、ファッションでも重要視されてきました。生産や消費を続けても、地球環境にダメージを与えない服を提案する企業やブランドが増えてきています。

そんななか、著名人もサステナビリティーをファッション面から働きかけています。モデルのROLA(ローラ)さん、MARIE(マリエ)さん、女優の柴咲コウさんが相次いでファッションブランドを立ち上げました。

3人のブランドに共通する特徴は、環境や労働に配慮したサステナビリティー(持続可能性)の重視。著名人がサステナブルブランドを続々と立ち上げるのはなぜか。それぞれの魅力を探っていきます。

デニムやシャツでスタイリッシュに ローラ 「STUDIO R330(ステュディオ アール スリーサーティー)」

現代女性のワードローブに欠かせないデニムとホワイトシャツにフォーカス (画像協力:STUDIO R330)
現代女性のワードローブに欠かせないデニムとホワイトシャツにフォーカス (画像協力:STUDIO R330)

ローラさんのライフスタイルブランド「STUDIO R330」はサステナビリティーを軸に据えています。自身のインスタグラムでも、数シーズン前の服を着た姿を披露して「長く大切に着る」という考えを表しているローラさん。最新アイテムを披露することが常識であるファッションアイコンとしては異例のアクションで、多くの共感を集めてきました。

9月に発売した新コレクションでは、サステナブルなデニムとホワイトシャツのコレクションを発表。デニムの縫製と加工はローラが自ら現地に足を運んで、依頼を決めた「今、世界で最もエシカルでサステナブルなデニムを作る」といわれる、南ベトナムを拠点にするサイテックス社が担当しています。

デニム生地はデニムメーカー、カイハラ社のハイパワーストレッチデニムを採用。染めに使う水の量を少なくし、排水処理に負荷がかかりにくい染めを実現しています。

ローラさんは「これからのファッションは、単なるトレンドアイテムとして1、2シーズンで手放してしまうのではなく、長く愛用できるものであること、そして私たち自身が、服を長く着る精神を大切にしていくべき。そうすることで皆が自然とサステナブルな活動に関わっていけるんじゃないかな」(プレスリリースから)と語っています。

植樹プロジェクトの「FOREST R330」にも連動していて、デニムパンツ1本の購入につき10本の木が植樹されます。阪急うめだ本店では11月4日からポップアップストアを開催。デニムコレクションのハイライズスキニーから新色のブラックデニムが発売されました。

リラックスフェミニンなコンフォートスタイル 柴咲コウ 「MES VACANCES(ミ ヴァコンス)」

サイトでは商品の成り立ちや素材を丁寧に伝えている(画像協力:MES VACANCES)
サイトでは商品の成り立ちや素材を丁寧に伝えている(画像協力:MES VACANCES)

環境省の環境特別広報大使も務める柴咲さんがプロデュースしているブランドが「MES VACANCES(ミ ヴァコンス)」です。コンセプトは「サステナブルで優しい服」。フェミニンでリラックスな雰囲気が人気で、永く使えるようなコンフォータブルなデザインなども、サステナビリティーに配慮されています。

地球の循環、生態系に負荷をかけないものづくりを目指す「MES VACANCES」は、オーガニックコットンをはじめとする生分解性のある天然素材を積極的に用いながら、職人の手仕事をフィーチャーし、輸送時のCO2 削減にもつながる、日本国内工場で縫製するアイテムもラインアップしています。

他にもデッドストックになっているレースや革素材などをアップサイクルする取り組みも行っていて、地球環境に優しい素材・工程でつくられています。

それぞれの商品がどういったエシカルな取り組みにつながっているのかを、12種類のアイコンで分かりやすく表示しているのも、「MES VACANCES」の特徴。アイコンは「UPCYCLEまたはRECYCLEの素材を使用している」「国産の生地を使用している」「天然素材100%でできている」など、その商品の成り立ちや素材を具体的に伝えてくれます。

着心地のよい天然素材を取り入れていて繊維の刺激が気にならないから、安心して着られるのもこのブランドの魅力。ニューノーマル下のおうちライフを安全・安心に過ごすうえでも、頼もしく感じられそう。エレガントラインの「couture collection」にはレディー感を帯びたクラシカルなワンピースも用意されています。

誠実なものづくりに個性を マリエ 「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカル マリエ デマレ)」

ハンドクラフト物やリメイク、アップサイクルなど1点物が多い (画像協力:PASCAL MARIE DESMARAIS)
ハンドクラフト物やリメイク、アップサイクルなど1点物が多い (画像協力:PASCAL MARIE DESMARAIS)

国内でサステナビリティーを大切にする ブランドの先駆け的存在になったのは、マリエさんが手がける「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカル マリエ デマレ)」です。2017年6月にデビューしました。

マリエさんは早くからモデルとして活動した後、2011年に渡米。ファッションスクールの名門、パーソンズ美術大学へ留学しました。ファションを専攻したマリエさんは「PASCAL MARIE DESMARAIS」を立ち上げ、自らデザイナーを務めています。

ファッションブランドにありがちな、派手な宣伝キャンペーンや、大がかりなファッションショーなどを仕掛けていません。余計なマーケティングに手間をかけず、誠実なものづくりに取り組んでいます。

1点物やハンドクラフト物やリメイク、アップサイクルなど、大量生産の規格品ではなく、それぞれのアイテムと真剣に向き合ったものづくりが個性的です。

目先のトレンドを追わないクリエーションそのものが「シーズンごとの使い捨て」につながらないサステナブルなアプローチ。でも、必ずしもサステナビリティーを「売り物」にしていません。むしろ、望ましい服づくりを進めたら、サステナビリティーに自然とたどり着いたと言えるでしょう。

このブランドらしさを示すアイテムの一つがラグ「THE LEFT OVER RUG」。服の生地を切り取った余りの部分を使ってアップサイクルしたラグです。販売にあたってはクラウドファンディングサイトの「マクアケ」を使い、募集金額の2倍を超える購入希望を集めました。商品の魅力に加え、取り組みの意義に共鳴した購入者が多かったようです。

withコロナ時代だからこそ、長く愛着を持てる服を提案

3人のブランドに共通するのは、自然体の態度です。安全や健康、環境保護などを求めた結果、サステナビリティーやエシカルが当然の選択肢になったとみえます。おしゃれの楽しさを深く知る3人だからこそ、「ファッションの使い捨て」を好まず、長く愛着を持ってつきあいたくなるようなアイテムを求めたとも言えるでしょう。

地球にやさしく、素肌にもやさしいアイテムに包まれて過ごせば、気持ちも伸びやかでハッピーになれそう。不安が続くwithコロナ時代だからこそ、サステナビリティーはおしゃれの「ニューノーマル」として迎えたくなります。3人がそろってサステナビリティーをブランドの柱に据えた理由は、こうした時代の空気をいち早く感じ取っていたからかもしれません。

(関連サイト)

STUDIO R330 

https://r330.jp/

MES VACANCES 

https://mesvacances.jp/

PASCAL MARIE DESMARAIS 

https://pmdonline.jp/

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ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター

多彩なメディアでコレクショントレンド情報をはじめ、着こなし解説、スタイリング指南などを幅広く発信。複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスも経験。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。2014年から「毎日ファッション大賞」推薦委員を経て、22年から同選考委員に。著書に『おしゃれの近道』(学研パブリッシング)ほか。野菜好きが高じて野菜ソムリエ資格を取得。

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