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withコロナのファッション マスク顔に「イヤーカフ」 人気の理由を紐解く

宮田理江ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター
(写真:Shutterstock/アフロ)

マスクを着ける暮らしはファッションも様変わりさせています。顔の半分近くを覆ってしまうマスクに負けないよう、残りの見える部分でのおしゃれがクローズアップされるようになりました。その流れで盛り上がっているのが、耳の縁(ふち)に引っ掛けるタイプのアクセサリー「イヤーカフ(ear cuff)」です。

イヤーアクセの歴史を振り返ると、イヤリングが長く主役でしたが、1980年代以降は日本でもピアスが普及しました。90年代には耳にたくさんのピアスを着けることも流行。ピアッシングしなくてもいいイヤーカフが日本で本格的に広まったのは2015年頃からといわれます。直近のブームはマスク着用が広がったことが追い風になっているようです。

いまwithコロナのマスクを着ける生活のなかで、イヤーカフの人気が高まってきています。なぜ人気なのか、その理由を紐解いていこうと思います。

耳たぶ以外の場所にも着けられる「イヤーカフ」

耳を飾るアクセサリーにはイヤリングやピアスがあります。イヤーカフがこれらと大きく異なるのは、耳への装着方法。

イヤリングは耳たぶをはさみ、ピアスは皮膚に開けた穴に通します。英語の「pierce」は「穴を開ける、突き通す」という意味。一方、イヤーカフの「cuff」はシャツの「袖口」を指します。

耳の縁にはさんだり引っ掛けたりする感じで装着するのが「イヤーカフ」。この着け方にちなんで、耳の後ろから掛けるタイプを「イヤーフック」、耳をはさむタイプを「イヤークリップ」とも呼びますが、今回はこれらをまとめて「イヤーカフ」として説明します。

イヤリングとの違いは、イヤリングが基本的に耳たぶをはさむのに対して、イヤーカフは耳たぶ以外の場所にも着けられる点です。

「痛くなりにくい」からストレスフリー 簡単に「おしゃれ見え」

イヤーカフ人気の高まりには、いくつかの理由があります。一番の理由は「痛くなりにくい」ことでしょう。ピアスは穴を開けるので、ピアスの重みで穴の周りに痛みを感じやすく、悩みの種とされてきました。

金属アレルギーをはじめ、衛生的なトラブルが起きがちなのに加え、ピアスを外している間の見え具合も気になりやすいところ。ママの場合は赤ちゃんに引っ張られて困るという声もありました。こういった欠点から解放される点で、イヤーカフはストレスフリーなアイテムと言えます。

画像提供・KNOWHOW
画像提供・KNOWHOW

国内でもイヤーカフのブランドが登場して注目されています。こちらは、「サイズレス、ノーホール、ハンギング」をテーマに掲げて、ピアスユーザーとイヤリングユーザー両方に向けて新しいジュエリーを提案しているイヤカフブランドの「KNOWHOW(ノウハウ)」。ピアスホールを開けなくてもピアス風に見える「ピアス見え」するようなおしゃれなデザインが人気。ファッションのコツ(KNOWHOW)をアドバイスしてくれるブランドらしく、重ね着けのお手本を示しています。

耳にはさんでから、好みの位置まで動かして着けるので、自分好みの位置に着けられるのも、受け入れられている理由の一つでしょう。同じイヤーカフであっても、耳のトップに置くのと、耳たぶに近い下側に添えるのでは、印象が大違い。何通りにも使い分けられるので、コストパフォーマンスに優れているわけです。

何個でも重ね着けOK! ルールにしばられず自在に着けられる

ピアスやイヤリングでは表現しにくい、凝ったデザインを生かせるのも、イヤーカフならではの強みです。スタイリッシュで華奢なものから、耳の外側全体を覆うようゴージャスなタイプまで形もサイズも様々。

そして、横顔に加え、斜め後ろ方向からの視線にもアピールできるのが持ち味の一つ。見る角度によって、イメージが変わります。

クリエーターのアクセサリー・ジュエリーをセレクトし販売する「H.P.FRANCE BIJOUX (アッシュ・ペー・フランス ビジュー)」を運営するH.P.FRANCEの広報部・PR担当の江間亮子さんは「2年ほど前までは国内での需要が低かったが、このところ一気に需要が高まり、イヤーカフの取扱量を増やした」と、人気の高まりを説明しています。

このようなアイテム自体の増加に伴い、デザインの選択肢が広がったことも支持を広げた理由とみえます。

「最近はピアスとセットのイヤーカフも提案されていて、レイヤードの魅力が高まってきた。自分らしい着こなしを好む人が増える中、自在にアレンジしやすいイヤーカフはさらに人気が広がりつつある」と江間さんは語ります。

左右ワンセットで売られているアイテムを、片方にダブルで添えて、左右のアシンメトリー(非対称)を際立たせる着け方も広まってきました。ゴールドとシルバーをミックスしたり、ピアスやイヤリングとの「耳元レイヤード」を組み立てたりなど、ルールにしばられず、自由な着け方を楽しむ人が増えています。

耳のてっぺん近くや真ん中辺りに着けられるので、マスクの着脱が楽なところも、ニューノーマル下のおしゃれにぴったり。ピアス穴を開けているかどうかに関係なく使ってもらえるから、ギフトにも向いています。

手持ちのピアスやイヤリングに、イヤーカフをプラスワンして重ね着けすれば、がらっと表情が変わるから、装いのムードチェンジャーとしてもうってつけ。デザインが豊富で、使い勝手に優れるイヤーカフはこれからもファンを増やしていきそうです。

(参考サイト)

H.P.FRANCE BIJOUX https://www.hpfrance.com/shop/bijoux?sc=bijoux

KNOWHOW JEWELRY https://knowhowjewelry.com/

ファッションジャーナリスト/ファッションディレクター

多彩なメディアでコレクショントレンド情報をはじめ、着こなし解説、スタイリング指南などを幅広く発信。複数のファッションブランドの販売員としてキャリアを積み、バイヤー、プレスも経験。自らのテレビ通販ブランドもプロデュース。2014年から「毎日ファッション大賞」推薦委員を経て、22年から同選考委員に。著書に『おしゃれの近道』(学研パブリッシング)ほか。野菜好きが高じて野菜ソムリエ資格を取得。

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