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お子様ニューヨーカー 2歳の通信簿

宮下幸恵NY在住フリーライター

2歳で通信簿?!

先日、2歳になるチビ子が通うデイケア(日本でいう保育所)に迎えに行ったら、ロッカーの中に白い封筒が置いてあった。「領収書かな?」と何気なく持ち帰ってみたら・・・。

「Preschool Progress Report」と書いてある。

これって『通信簿』? 2歳でもう通信簿もらうの? とっても驚いたけど、内容に目を通すとさらにビックリ。評価項目が4つの分野、計26項目に別れていて、全てで三段階で評価されていた。

チビ子は2歳になった今年の4月から、週3日だけ朝8時半から夕方6時までフルタイムで通ってる。アメリカは9月入学が基本だけど、どちらかというと働く親のためにあるデイケアは早朝から夕方まで預かってくれ、9月入学に関わらず空きがあればOKという所が多い。私自身、産後もそうめんのように細々と仕事を続けているので、我が家にとってはいいタイミングでいいデイケアを見つけることができた。

なぜ、6月に通信簿? 日本で生まれ育った私には違和感あるが、アメリカで6月といえば、卒業シーズン。9月の新学期を前に、この卒業式を終えると長い夏休みがやってくる。チビ子が通うデイケアでは、Pre-K(Prekindergartenの略)と呼ばれる日本でいう幼稚園の年少さんクラスもあり、Pre-Kクラスにいる子たちの卒業に合わせ、全員に「通信簿」が配られたのだ。(でも、デイケアなので夏休みに入る事はなく、7月、8月もチビ子は通いますよ)

26項目を3段階評価

この通信簿、「協調性、情緒の発達」「身体的発達」「知的発達」「言語の発達」の4つ、計26項目を「1(Beginning、やり始め、出来始め)」「2(Developing、発達途中)」「3(Proficient、十分できている)」で評価している。

チビ子が『3』をゲットできたのは、「身体的発達」の「走ったり、飛んだり、投げたり、物を受け取ったりできる」というのと、「動いている時にバランスを取る事が出来る」という2つだけ。もう、「体育だけは5」のノリですね。

まだ2歳というのもあるけれど、「協調性〜」では、「クラスのルールや規則に従う事ができる」はもちろん「1」。「人や物を大切にすることができる」も「1」。まだまだ自分優先です。

「えんぴつを正しく持つ事が出来る」が「身体的発達」に含まれているのは不思議だったけれど、これも「1」。はい、まだクレヨンを鷲掴みにしてますからね〜。

子供の通信簿に知らない単語が・・・

気になる「知的発達」と「言語の発達」では・・・。

「1から10まで数えることができる」が「1」。そりゃ、日本語でも怪しいのに英語じゃ到底無理です。「形を認識できている」も「1」だったけれど、識別する形の中に、知らない単語があるじゃないですか!

「Rectangle」と「Oval」って何? なんで、2歳児の通信簿を読むのに辞書が必要なわけ?! なんて心の中で悪態つきながら、悔しいけど調べましたよ、辞書で。「長方形」と「楕円形」だそうです。親も勉強になります。

「アルファベットが分かる」が「2」だったのは驚いた。以前、授業参観のような時に、先生から「チビ子は忍耐力がないのよね。すぐに飽きて他のおもちゃにいっちゃうから。笑」と言われていたのだ。

それが、恥ずかしいかな、本当にそうだった。先生からアルファベットを教えられるチビ子と同じ年でポルトガル人の女の子Aちゃん。その様子を見ていたら、チビ子は「C」の時点ですーっと先生を離れておもちゃへ。「まだ3番目じゃん!」と思ったら、Aちゃんはちゃーんと「Z」まで聞いてた。だから、てっきり「1」なんだろうと予測していたけれど、最近は興味を示してるのかしら?

たかが通信簿、されど通信簿。まさか2歳でもらった通信簿で、ここまで一喜一憂するとは・・・。とほほ。先が思いやられるわ。

そして、当の本人は知ら〜ん顔。こうやって評価されてるなんてつゆ知らず、「保育園、楽しみ〜!」なんて言いながら小躍りしてるんだから。そんな私も、通信簿の「3」より、お友達が出来始め、優しい先生たちを大好きなのが、小躍りから分かるのがとっても嬉しかったりもする。

競争社会のアメリカ

大雑把なイメージのアメリカだけど、実はすっごい競争社会だと思う。これは、ニューヨークだからかもしれない。公立の小学校では、生徒の読解力に応じて読む本が皆違うそうだ。マンハッタンには、本の背表紙に貼られたシールでレベルが分かる学校もあるらしい。

「あ、あの子は紫色のシールだから、頭良いのね」とか、「あいつは黄色だから、読むの苦手?」みたいな能力の差が、子供ながらに一目瞭然だったりするのだ。

チビ子が通うデイケアは、セレブがこぞって通うマンハッタンの有名私立幼稚園でも、入学に試験があるような超難関公立幼稚園でもない。アメリカで4人の子供を育てたフィリピン系アメリカ人の女性が経営する、とってもあったかいデイケアだ。日本人もいれば、ポルトガル人、エクアドル人、ヨーロッパ出身の親御さんたちもいて、人種のるつぼNYの縮図のような場所。親御さんたちの会話は、英語以外の言葉が飛び交っている。

それでも、通信簿で今出来る事、出来ない事がはっきり分かり、きちんと評価が下される。だから、アメリカは競争社会だと思う。

その分、先生からのコメントでは「物覚えが早い」「賢い」「いつもハッピー」「そんなチビ子が大好きよ!」と暖かい言葉が並んでいる。そこは、褒め上手なお国柄だ。

2歳にしてアメリカの競争社会に放り込まれてしまったチビ子。飛び出した大海原は、果てしなく広い。今から荒波に揉まれて大丈夫なのか心配になるけれど、我が子を信じるしかないよね。

NY在住フリーライター

NY在住元スポーツ紙記者。2006年からアメリカを拠点にフリーとして活動。宮里藍らが活躍する米女子ゴルフツアーを中心に取材し、新聞、雑誌など幅広く執筆。2011年第一子をNYで出産後、子供のイヤイヤ期がきっかけでママ向けコーチングの手法を学ぶ。NPO法人マザーズコーチ・ジャパンの認定コーチに。『「ダメ母」の私を変えたHAPPY子育てコーチング』(佐々木のり子、青木理恵著、PHP文庫)の編集を担当。

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