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飲食店がフランチャイズ展開で成功するための7つのポイント

三ツ井創太郎飲食店コンサルティング(株)スリーウェルマネジメント代表
(筆者作成)

飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント代表コンサルタントの三ツ井創太郎です。

これまでのコラムでは、ニューノーマル時代は「繁盛店」より「繁栄店」づくりが大切というお話をさせて頂きました。

【居酒屋を6店舗展開するG社長からのご相談】アフターコロナの事業拡大に向けて自社業態をフランチャイズ化したい

居酒屋を6店舗展開するG社長から当社の無料経営相談にご連絡を頂いた内容は次のようなものでした。

「コロナ借入返済に向けてアフターコロナの出店計画を立てているが、コロナ禍で借入が増えており直営店での出店は難しい為、フランチャイズ(FC)形式での展開を考えていきたい」

コロナ禍になり、G社長のように「自社業態をフランチャイズ化したい」というご相談を多数頂くようになりました。

なお、今回の内容はYouTubeチャンネルでも解説していますので、よろしければ下記よりご覧ください。

(筆者作成)

確かに自社での資金調達が難しい中で、他社資本を活用したフランチャイズ展開というのは有効な戦略ではありますが、自社業態をフランチャイズ化するというのはそんなに簡単な話ではありません。弊社が多数のフランチャイズ本部構築をお手伝いさせて頂く中で、順調に加盟店契約を増やされている企業様には7つのポイントがあります。

フランチャイズ本部構築のご相談があった際には、次の「自社業態をフランチャイズ化する為の7つのポイント」に沿って質問をさせて頂くようにしています。

自社業態をフランチャイズ化する為の7つのポイント

(写真:Photo AC)
(写真:Photo AC)

①収益力

まれに「現状は赤字なんですが、FC化できますか?」というご質問を頂く事がありますが、赤字業態をFC化する事は不可能です。FCモデルとして展開する場合の利益率に関してですが、これはビジネスモデルによって変わるため一概には言えませんが、あえて言うと最低でも営業利益率15%以上は必要となると考えておいてください。

その他に投資金額、売上高、総投資利益率(ROI)、投資回収年数等を加味してその業態の収益性を評価していきます。実際にG社長の6店舗のお店の収益性を分析してみた結果、6店舗の平均月商は約550万円、お店の広さは20坪、1坪当り席数は立ち飲み席もある為、2.2席と多めです。そして、1坪当り月商は約27万円です。

この「1坪当り月商」は、その分かりやすさから、飲食店の繁盛度合いを表す数値としてよく活用されます。下表に、1坪当り月商に関しても指標を掲載しておきますので、参考にして下さい。

G社長のお店に関しては、1坪当り月商は27万円と、一般的な飲食店より「やや良い」レベルです。営業利益率については15%、投資回収年数は1.5年です。

(筆者作成)
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②再現力

たとえその業態の収益性が高くても、そのビジネスモデルの再現性が低ければFCモデルとしては成立しません。そういった意味では、既存の店舗数も重要となります。私が今まで様々なFC本部構築を行ってきた所感としては「最低3店舗以上、できれば5店舗以上」無いと、再現性を証明する事は難しいと思います。

G社長のお店は既に既存店6店舗を展開しているので、店舗数における再現性の部分はクリアしています。しかし、1点気になるのは、この業態に関して料理が一つの差別化要素となっており、全店舗職人さんが店長を務めています。これから人材不足が深刻化する飲食業界において「店長ができる職人さん」ありきのビジネスモデルは再現性が高いビジネスモデルとは言えません。この部分に関しては、今後考えていく必要がありそうです。

③差別化力

数あるFCビジネスの中で他のモデルにはない「差別化要素」「尖り要素」があるか否かは、FC展開を行う上で重要な要素となります。つまり「ブランド」としての強みを明確化する必要があります。自社業態の差別化の分析については、「差別化8要素」をベースに分析をしていきます。

④商品力

料理が美味しい事は当たり前として、その他に重要になるのは「食材供給」と「MD計画」です。安定した商品クオリティーを実現するためには自社セントラキッチンや、OEMによる商品供給についても考えなくてはなりません。

また、業態の鮮度を保つ為には、年間を通じた季節商品とグランドメニューのリリース計画、年間MD(MerchanDising)計画が必要不可欠となります。

(写真:Photo AC)
(写真:Photo AC)

⑤人材獲得力

人材不足が深刻する時代において「人が採用できるFCブランド」か否かは、とても重要となります。たとえ収益性が高くても、人が採用できなくては展開する事はできません。お客様のターゲティングも重要ですが、これからの時代においては「どのような人が働きたくなるブランドか」という事を考え、「働きがい」をFC本部としてどう構築していくかが重要となります。「雇用・ES満足は加盟店の責任」という考え方では通用しなくなってきているのが実情です。

⑥マネジメント力

ここで言うマネジメント力とは、加盟店を管理するマネジメント力です。具体的には、加盟店舗の「業績」「QSC」「コンプライアンス」をどうやって高めていくかです。

これらを高めていくためには本部スーパーバイザーの育成が重要となります。本部のマインドやルールを伝える伝道師であるSV。このSVの質によってFC展開が成功するか否かが決まると言っても過言ではありません。

⑦販促力

最後に、パッケージ化したFCビジネスをどうやって広めていくのかを考えていきます。よっぽどの有名店であれば、自社HPに「FC加盟店募集」というページを作っておくだけで問い合わせがどんどん来るという事例もあります。しかし、これはあくまでも有名店の場合です。通常は認知化戦略としてどのような媒体を使い、営業フローをどう構築していくのかをしっかりと考えていく事が重要となります。

これら7つのポイントと、G社長の店舗ビジネスモデル等を照らし合わせると、今の段階では加盟店を募り、フランチャイズ本部として成功するのは少し難しいという事をはっきりと伝えさせて頂きました。

フランチャイズ化で契約書作成より大切なこと

(写真:Photo AC)
(写真:Photo AC)

フランチャイズ本部構築のお問合せの中で良く「契約書の作り方を教えて下さい」といったご質問を良く頂きますが、契約書等のツール作成はフランチャイズ本部構築においては決して難しくありません。それより大切なのは、まずは直営店に多店舗展開に耐えられるマーケティング&マネジメントの仕組みを導入し、先ほどお話した①~⑥までの要素を強くしていく事です。

そこでG社長の会社については、まずは①~⑥の要素に関して強化していくお手伝いからスタートし、並行して契約書やホームページ等のフランチャイズ加盟開発に必要なツールを当社にて作成させて頂く事になりました。

こうしたフランチャイズ本部構築のプロセスは、直営店のビジネスモデルを高める為にも有効なのです。

最後までお読み頂きありがとうございました。

(筆者作成)

<筆者プロフィール>

飲食店コンサルティング会社スリーウェルマネジメント

代表取締役 三ツ井創太郎

https://www.threewell.co/business

飲食店コンサルティング(株)スリーウェルマネジメント代表

㈳日本フードビジネス経営協会代表理事。飲食企業で店長、SV、事業統括の経験を経た後、2011年に東証一部上場のコンサル会社である(株)船井総合研究所に入社。飲食コンサルティング部門のリーダーとして数多くの飲食店支援を行う。2016年飲食店特化のコンサルティング会社(株)スリーウェルマネジメントを設立。「飲食店オーナー様に徹底的に親身なサポートを!」を理念に、個人店から大手チェーンまで日本全国の飲食店へ支援を行う傍ら、テレビのコメンテーターや行政、金融機関と一体となった飲食店支援も行う。著書「V字回復を実現する! あたらしい飲食店経営35の繁盛法則 」はアマゾンの外食本ランキングで1位を獲得。

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