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ウクライナ戦争による飢餓のハリケーンー再考求められる世界の食料貿易、食料生産が一部国に集中する危険性

松平尚也農業ジャーナリスト、龍谷大学兼任講師、AMネット代表理事。
(写真:ロイター/アフロ)

 ウクライナ戦争により世界の食料価格が暴騰する中で、国連のグテーレス事務総長は、紛争の影響を受けたウクライナの人々と、低所得国の貧困層に飢餓のハリケーンが起こっていると警告した(※1)。

 グテーレスは「『飢餓のハリケーン』と 『世界の食料システムのメルトダウン 』を回避するために、私たちはあらゆる手段を講じなければならない」とさらに続けた(※1)。

 この戦争は、ウクライナとロシアが「欧州の食料庫」と呼ばれ、世界の食料の供給地であったことから世界的な食料危機をも引き起こしている。

 しかし3月に入り、小麦等の穀物価格は過去最高を記録し、ウクライナやロシアの小麦に依存する中東やアフリカ諸国に大きな影響を与えている。実際、26カ国が小麦輸入の半分以上を両国に依存しており、食料危機とも言える状況が起こり始めている。

 食料生産が一部の国に集中する危険性ー世界の小麦輸出の9割をわずか8カ国が占め、穀物取引は穀物メジャー4社が支配

 しかし見直しを求められているのは、世界の食料貿易と生産である。国連・持続可能な食料システムに関する国際専門家パネルのメンバーであるジェニファー・クラップ(ワーテルロー大学教授)と「食料への権利」に関する元国連特別報告者ヒラル・エルバーは、3月31日のロイターのオピニオン欄に「ウクライナ戦争は世界の飢餓のハリケーンを引き起こす可能性」を投稿している(※2)。ここではその論点を紹介しよう。

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農業ジャーナリスト、龍谷大学兼任講師、AMネット代表理事。

農・食・地域の未来を視点に情報発信する農業ジャーナリスト。龍谷大学兼任講師。京都大学農学研究科に在籍し国内外の農業や食料について研究。農場「耕し歌ふぁーむ」では地域の風土に育まれてきた伝統野菜の宅配を行ってきた。ヤフーニュースでは、農業経験から農や食について語る。NPO法人AMネットではグローバルな農業問題や市民社会論について分析する。有料記事「農家ジャーナリストが耕す「持続可能な食と農」の未来」配信中。メディア出演歴「正義のミカタ」「めざましテレビ」等。記事等に関する連絡先:kurodaira1974@gmail.com(お急ぎの方は連絡先をご教示くだされば返信します)。

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