食卓を支えるタネはどうなる?主要農作物種子法廃止を考える

(写真:アフロ)

食卓を支えるタネはどうなる?・主要農作物種子法廃止を考える

食べ物のタネは、大地と人間をつなぐへその緒と呼ばれます。その食卓を支える食べ物のタネを取り巻く制度が大きく変わろうとしています。その制度とは「主要農作物種子法」。コメや大豆、小麦といった日本の食の根幹を支える食べ物のタネは、この法律の下で国と農家や関連機関が連携して育て守られてきました。しかし今国会でこの制度の廃止法案が出されるというのです。食べ物のタネの行く末はどうなっていくのでしょうか?農家の目線から食卓とタネとのつながりを語ります。  

野菜のタネの自給率は2割?

食べ物へのタネへの関心が市民社会の間に広がっています。きっかけの一つはタネの種類の問題。日本で最近使われる野菜のタネは、一代交配種と呼ばれ、次世代にタネを残せない種類がほとんどを占めており、固定種と呼ばれるタネ取りができる種類はほとんど栽培されていない状況があります。こうした現状が人間の体にもたらす影響についても市民の間で関心が広がっています。

もう一つは遺伝子組み換え作物(以下GMO)の問題。人間が食べるトウモロコシなどの主要な穀物などにおいて1990年代後半からGMO栽培が一気に広がり、食料の多くを海外に依存する日本は世界有数のGMO輸入国になっていることからみぢかなタネへの関心が高まっていると言われます。

日本の食料自給率は約4割を前後しており、世界で食料が不安定化した際には大きな影響を受ける構造になっています。タネの世界ではさらに自給率が低く、野菜のタネに関しては、なんと8割~9割を輸入に依存している現状があります(※1)。

主要農作物のタネ取りは国内産

一方国内でしっかりタネ取りが行われているのが、日本の食卓を支える主要な農作物である米や麦、大豆です。こうした作物に関しては、国や都道府県の試験研究機関や農協と農家等が連携して育種=タネ取りがされてきました。

そのタネ取りを守ってきたのが、稲、麦、大豆のタネの生産や普及を都道府県に義務づける主要農作物種子法(以下種子法)でした。種子法は、タネの品質を保持し、農家に安定した価格でタネを供給するという大きな役割を担ってきました。種子法は食料確保を目的に1952年に制定された法律です。制定の理由には、戦中・戦後の混乱で国家的なタネ取りが機能停止に陥り、種子の品質が低下し生産普及体制の立て直しが必要であった時代背景があったそうです (※2)。

議論なく提出された種子法廃止法案

今回の種子法廃止の問題は、十分な議論がないまま、廃止法案が国会に提出されているという点です。種子法廃止により、公的機関による育種の後退、種子の安定供給への影響が懸念されます。しかし農林水産省(以下農水省)は、「民間の品種開発意欲を阻害している」として廃止に踏み切る意向です。世界の中でも種子の民間開発が進む米国でも米と麦については、公共機関による育種が主流となっているとされます(※3)。種子法廃止は日本のタネの業界にどういう影響が及ぼすんでしょうか?

性急な改革のひずみは現場レベルで起こりそうです。日本農業新聞(※4)によると、農水省は、今国会で「民間の種子・種苗生産、供給促進」を盛り込み、国や都道府県の施設などを民間に提供し、連携して品種開発を進める動きを加速させる意向ということです。しかし各都道府県は費用を一般財源から捻出しており、種子法の廃止で予算が減額される可能性も指摘されています。外国資本の参入で、種子の独占につながるという懸念もあり与党内からも疑問の声が上がっているというのです。

農家として感じる一番の問題は、利潤が上がりにくい主要農作物のタネ取りの現場で公共の予算がなくなると、地域で育まれてきた歴史ある農作物の維持が困難になっていく可能性等があることです。単に民間参入で競争を促すだけでは、主要農作物のタネ生産を不安定化させ問題を広げることになりかねません。引き続き国会での状況を見ながら考えたいと思います。

(参考文献)

※1「食卓のタネあかし」,朝日新聞,2012年12月25日~27日

※2「種苗事業の構造と展開」,久野秀二他,北海道農産物協会,1998年

※3「主要農作物種子法廃止 問題点を聞く 京都大学・久野秀二 多国籍企業参入に不安」,日本農業新聞, 2017年2月17日

※4「種子法廃止に慎重論 基礎食料 安定供給損なう恐れ」,日本農業新聞2017年2月2日「稲育種を民間開放 種子法廃止に自民異論」,日本農業新聞,2017年01月28日