ジョンソン英首相、総選挙に踏み切れば保守党単独過半数の可能性(下)

ノーディール・ブレグジット(合意なしのEU離脱)でも10月末にEU離脱の達成を目指すボリス・ジョンソン首相=英BBCテレビより
ノーディール・ブレグジット(合意なしのEU離脱)でも10月末にEU離脱の達成を目指すボリス・ジョンソン首相=英BBCテレビより

現時点では、英国議会の最大野党・労働党のジェレミー・コービン党首が保守党のEU(欧州連合)残留支持派の造反議員を含む超党派で、9月3日の議会休会明けにもボリス・ジョンソン首相に対する不信任動議を下院に提出する計画を進めている。もし可決されば、コービン党首はエリザベス女王の権限でジョンソン首相を解任し直ちに管理内閣を樹立し、2度目の国民投票を実施することでノーディール・ブレグジットを阻止する考えだ。一方、ジョンソン首相は不信任動議が可決されてもすぐには辞任せず、10月末のEU離脱後の11月3日に解散総選挙に打って出るという観測が広がっている。

また、今回の補欠選挙の結果についても、ジョンソン氏と首相の座を争ったEU残留支持派のジェレミー・ハント前外相の私設秘書だったロブ・ウィルソン元下院議員は英紙デイリー・テレグラフ紙の8月2日付コラムで、「保守党が得票率で2位だったということは、ブレグジットを巡り賛否両論で割れている、この選挙区で、ジョンソン首相が10月末EU離脱を争点に保守党支持の有権者を選挙へ引き戻すことができたことを意味する。しかも、今後の選挙で保守党を脅かす存在となるブレグジット党の欧州議会選挙での破竹の勢いを止めたことは幸先が良い」と述べ、必ずしも悪いことばかりではないと指摘する。

テレグラフ紙は7月29日付の社説で、ジョンソン政権が短命かどうかは今後のEUとの離脱協議に大きく関わると指摘した。ギリシャのヤニス・バルファキス元財務相が2015年の債務危機当時、EUからの金融支援を求め協議に明け暮れた日々を記述した回顧録を引用し、「EUに金融支援を求めたが、助けてもらえず、反対に脅され、すごすご帰るしかなかった。バルファキス元財務相は英国がEUと協議しても同じ結果になるとアドバイスしている」という。

また、社説は、「ジョンソン首相は10月末のEU離脱前にEUと協議する考えはない。その前に協議する場合は全く新しい離脱協定についてEUが協議に応じる場合としているからだ。EUは離脱協定を変更せず、EUとの将来の貿易関係を規定した政治宣言だけに留めたい考えだが、ジョンソン首相は、テリーザ・メイ前首相がEUと合意した離脱協定案から、いわゆるバックストップオプション条項(EU離脱後も北アイルランドにEUルールを合致させることでハードボーダーを避けるという解決方法)の削除を求めており、お化粧直し程度の修正は望んでいない。もし、そんなことをすれば、ジョンソン政権は短命に終わる」と警告する。

しかし、最近ではジョンソン首相が8月21-22日、ドイツとフランスを相次いで歴訪し、EU離脱協議の再開の根回し外交を展開した。その結果、エマニュエル・マクロン仏大統領はジョンソン首相との会談で、テリーザ・メイ前首相との間で合意したEU離脱協定を見直し英国がEUをディールで離脱できるようにしたい考えを示し、アンゲラ・メルケル独首相もEU離脱協定の再協議に応じる考えを表明したことから、ノーディール・ブレグジット(合意なきEU離脱)が回避される可能性が出てきた。もし、EUとの何らかの合意が実現されれば、英議会で労働党を中心とした超党派による首相不信任動議の提出が見送られ、その結果、解散総選挙も回避されることを意味する。

ただ、最近、EUのブレグジット首席交渉官であるミシェル・バルニエ氏が8月31日付の英紙デイリー・テレグラフ紙への寄稿文で、英国との離脱協議再開の可能性について、「(EUとメイ前首相との間で合意した)英EU離脱協定案が英下院で批准すれば、我々は直ちに北アイルランドの国境問題に関する(いわゆるEU離脱後も北アイルランドにEUルールを合致させることでハードボーダーを避ける)バックストップ条項の代替案について協議を開始する用意がある」と述べ、あくまでも英下院で3度も否決されたメイ前首相の離脱協定案の議会通過に固執し、ジョンソン首相が独仏首脳会談で掴み取ったEU離脱協議への楽観的な見通しに冷水を投げかけており、ノーディールの可能性が一段と高まったといえそうだ。(了)