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主な新興国/米国経済ニュース(9日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

2-6日のロシアRTS指数、3週ぶり反発―原油高やウクライナ緊張緩和で

前週(2-6日)のロシア株式市場は、RTS指数(ドル建て)の6日終値が前週比0.8%高の903.45と、3週ぶりに反発した。これは原油高やルーブル高、ウクライナ情勢も東部の停戦ラインから重火器が撤収され緊張が緩和したこと、外国人投資家からの資金流入超が続いていることが相場に買い安心感が広がったもの。2月26日-3月4日の外国人投資家の買い越し額は4070万ドル(約50億円)と、前々週の8010万ドル(約100億円)から縮小したものの、6週連続で買い越しが続いている。

週明けの2日は産油国サウジアラビアの2月の原油生産量が増加したことで、OPEC(石油輸出国機構)全体の生産量が上限枠を9カ月連続で上回り、原油先物価格が下落したことやルーブル安という向い風があったものの、ロシアの2月HSBC製造業PMI(購買担当者景気指数)が1月の47.6から49.7へ上昇したことやウクライナ情勢の緊張緩和が追い風となり、RTS指数は0.77%高となった。翌3日はウクライナ東部の停戦ラインから政府軍と親ロシア派武装組織が重火器を撤収したことから西側の対露追加制裁への懸念が薄れ、RTS指数は1.49%高と、急伸した。

しかし、4日は米国の週間石油在庫統計で原油在庫が増え原油安となったほか、米国がロシア企業に対する制裁措置の期限を1年間延長したことも嫌気されて、RTS指数は2.98%安と、反落した。個別銘柄では石油・天然ガス大手ロスネフチが4.4%安、石油大手ルクオイルも1.81%安と、大幅安となった。5日はECB(欧州中央銀行)理事会で0.05%の超低金利が維持されたが、9日から量的金融緩和(QE)の一環としてユーロ圏加盟国からの国債買い入れを開始する一方で、2016年9月以降もQEを延長する意向が示されたことや、原油価格の上昇でルーブルも連れ高となり、RTS指数は2.55%高と、急騰した。

週末の6日はモスクワ市場が女性デーの祝日で週明け9日も休場となることから手仕舞い売りが広がったことや、この日発表された米2月雇用統計の結果が予想を上回り、FRB(米連邦準備制度理事会)による早期利上げ再開の憶測が広がったことも嫌気され、RTS指数は1%安と、反落した。

今週(10-13日)のロシア市場は、引き続き原油とルーブルの相場動向、ウクライナ情勢が相場変動要因となる一方で、9日からスタートするECBのQEが相場の追い風になると見られている。相場に影響を与えそうな主な経済データやイベントは、ロシア中銀の6日現在の外貨準備高(12日)や金融政策決定会合(13日)など。9日は女性デーの祝日で休場。

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前週のインド株は反発―中銀の緊急利下げで=BRICs市況

前週(2-5日)のインド株式市場で、代表的株価指数SENSEX指数の5日終値は前日比0.2%高の2万9448.95となった。週間ベースでも2月27日終値比229ポイント(0.8%)高と、反発した。週末の6日はヒンズー教の祝日ホーリー(春祭り)で休場だった。

週明けの2日は、政府は2月28日に発表した来年度予算案でインフラ整備の財政支出を25%拡大する方針を明らかにしたことを好感して、SENSEXは0.3%高と、3営業日続伸となった。翌3日は来年度予算案の発表を受けてインドの景気拡大期待が強まり、世界最大の製油所を運用するリライアンス・インダストリーズが1年ぶりの大幅高となる中、SENSEXは0.5%高と続伸。4日はインド準備銀行(中銀)が臨時の金融政策決定会合を開いて主要政策金利であるレポ金利を0.25%引き下げて7.5%とする緊急利下げを決定したことから、SENSEXは一時、3万台を付け、結局、0.7%高で引けた。

前週最後の取引となった5日は、6日の祝日による休場を控えて方向感に乏しい取引となり、SENSEXは0.2%高で引けた。医薬品大手サン・ファーマシューティカル・インダストリーズが上場来高値、また、日用品大手ヒンドゥスタン・ユニリーバも1カ月ぶり高値に上昇した。

今週(9-13日)のインド市場の見通しについて、アナリストは相場の過熱感から調整局面に入ると見ている。相場に影響を与えそうな主な経済指標は12日の1月鉱工業生産指数と2月消費者物価指数などが予定されている。

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前週のブラジル株は5週ぶり大反落―米利上げ懸念で=BRICs市況

前週(2-6日)のブラジル株式市場は、米国の雇用統計が強い内容だったことから米国の6月利上げ観測が一段と強まり、利上げによるブラジルへの株式投資の減退懸念、さらにはブラジルの格下げ懸念が浮上し、6日のボベスパ指数が前日比0.76%安の4万9981.19と下落。週間ベースでも2月27日終値から3.1%安と、5週ぶりの大反落となり、年初来の上昇分の大半を消した。

週明けの2日は、中銀の経済週報「フォーカス・ブルティン」で民間アナリストが2015年実質GDP(国内総生産)伸び率見通しを前週予想の前年比0.5%減から0.58%減へ、9週連続で下方修正したことで消費財セクターが売られ、鉱山大手ヴァーレも3.1%安となり、ボベスパ指数は1.1%安となった。翌3日は汚職事件に絡み警察当局の捜査が進められている国営石油大手ペトロブラスが資産売却の計画を発表したことや原油高も好感され2.1%高となり、ボベスパ指数も0.6%高と、5営業日ぶりに反発した。

しかし、4日は上院議長がジルマ・ルセフ大統領の税制優遇措置の縮小による増税計画の承認を拒否したことで、財政悪化による同国の格下げ懸念が強まり、ボベスパ指数は1.6%安と、反落。5日も格下げ懸念が材料となり、0.2%安と、続落。週末の6日は、米労働省がこの日に発表した2月雇用統計は新規雇用者数が29万5000人増と、予想を上回ったため、FRB(米連邦準備制度理事会)の6月の利上げ転換の可能性が一段と強まり、その結果、新興国市場国への投資が後退し、ブラジル市場の回復が遅れるとの懸念から、ボベスパ指数は急落した。

今週(9-13日)の株式市場に影響を与えそうな国内の経済指標は、10日の中銀の経済週報「フォーカス・ブルティン」の経済成長見通しや13日の1月小売り売上高など。

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アマゾン、中国アリババ傘下のショッピングサイト「天猫」にショップ開設へ

米オンライン小売り大手アマゾン<AMZN>は先週末、中国のオンラインショップ市場での事業を拡大するため、4月をメドに、中国のインターネット大手アリババ傘下のオンラインショッピングサイト「天猫(Tmall)」にアマゾンのショップを開設することを明らかにした。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)が伝えた。

中国の電子コマース市場は、アリババが傘下の天猫と淘宝(タオバオ、Taoba)の売り上げ合計で70%以上のシェアを握っているのに対し、アマゾンの中国市場でのシェアは昨年時点でわずか1.4%、シェアランキングで5位に甘んじているのが実情。このため、アマゾンでは中国のインターネット上に立ち上げるアマゾンのショップへのアクセス数の飛躍的な拡大を狙っている。アマゾンのショップは、当面は試験的な運用となるため、販売する商品の種類は限定的になるとしている。

アマゾンは昨年8月中国・上海の自由貿易試験区に販売拠点を設置すると発表しており、世界各国のサプライヤーが中国へ商品を輸出する一方で、中国国内の中小企業が海外に商品を輸出する拠点となることを期待している。

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アップル、ダウ工業株30種平均の新構成銘柄に―AT&Tと入れ替え

米IT大手アップル<AAPL>が米国の代表的株価指数であるダウ工業株30種平均(DJIA)の新しい構成銘柄として採用されることが決まった。これは18日のニューヨーク証券取引所の大引け後に米通信大手AT&T<T>との銘柄入れ替えとなるもので、翌19日から入れ替え後初の取引が開始される。米経済専門チャンネルCNBC(電子版)が6日に伝えた。

DJIAは単純平均株価指数のため、構成銘柄のうち、AT&Tのような株価が安い銘柄は指数ウェイトが低く、DJIAの指数変動に及ぼす影響は軽微だが、株価の高い銘柄は指数ウェイトが高く、DJIAの指数を大きく変動させる傾向がある。

しかし、アップルは昨年6月に株式1株を7株に分割したあと、株価がDJIAの中央値にまで低下しており、また、同じハイテク株の米クレジットカード最大手ビザ<V>も19日から株式1株が4株に分割されたあとは株価が低下し、DJIAの指数構成ウェイトも9.71%から2.53%へ低下するため、アップルを構成銘柄として受け入れやすい環境が整っている。

ちなみにアップルの指数構成ウェイトは4.66%となる見込み。アップルの時価発行総額は約7360億ドル(約89兆円)であるのに対し、AT&Tは株価が低いため時価発行額も1750億ドル(約21.2兆円)となっている。

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ロシア・ガスプロム傘下のガスプロム・ネフチ、政府に4千億円支援要請

ロシア国営天然ガス大手ガスプロムの石油子会社ガスプロム・ネフチはこのほど、政府に対し1980億ルーブル(約4000億円)の金融支援を要請したもようだ。モスクワ・タイムズ(電子版)が先週末、地元経済紙コメルサントの報道を引用して伝えた。

ロシア企業はウクライナ危機に絡んだ西側の対ロ制裁を受けて、海外の資本市場での資金調達が困難になっている。ガスプロム・ネフチも資金調達が困難になっており、当初は、政府に1兆ルーブル(約2兆円)超の支援を求めていたが、その後、3000億ルーブル(約6000億円)に減額修正されていた。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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