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主な新興国/米国経済ニュース(22日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

米GM、ロシアのディーラー向け販売を一時停止―ルーブル急落で

米自動車大手ゼネラル・モーターズ<GM>は18日、ロシア通貨ルーブルの急落を理由に、ロシアの自動車ディーラーへの販売を一時的に停止したことを明らかにした。米経済専門オンラインメディア、CNNマネーが18日に伝えた。

GMによると、ルーブルの急落で、自動車販売で稼いだルーブルをドルに換算した売り上げが大幅に目減りするため、売れば売るほど損失が拡大するとしており、「ルーブル相場の先行きが不透明なため、ディーラーへの販売を一時的に停止する」としている。

ただ、すでにGM製の自動車を購入した顧客に対しては、購入時のルーブル表示の金額で引き渡すとしている。GMは米国の自動車メーカーの中ではロシアで最も多く自動車を販売しているが、GM全体に占めるロシア市場のシェアは小さいのが実情。ロシア市場での今年1-11月累計販売台数は17万台で、これはGMの米国や中国での1カ月分の販売台数でしかない。

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米グーグル、今年1年間で株価10%近く値下がりし同業大手の後塵浴びる

米インターネット検索大手グーグル<GOOGL>の今年1年間の株価が約10%低下し、世界主要ハイテク企業30社の中でも株価上昇率が高い同業大手の後塵を浴びていることが分かった。米経済専門オンラインメディア、CNNマネーが18日に伝えた。

同業大手のソフト世界最大手マイクロソフト<MSFT>と米インターネット大手ヤフー<YHOO>、中国インターネット大手アリババ<BABA>の株価はいずれも年初来で25%以上も値上がりしている。また、中国検索エンジン最大手バイドゥ<BIDU>は30%、米IT大手アップル<AAPL>と世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービスである米フェイスブック<FB>にいたっては40%以上も値上がりしている。

米市場調査会社イーマーケターによると、グーグルは世界のディジタル広告市場で31%の売り上げシェアを誇り、断トツ的な存在だが、株価が低迷している背景には、フェイスブックの売り上げシェアが昨年の6%から今年は8%へ、モバイル広告シェアも17%から18.5%へ、それぞれ上昇したのに対し、グーグルは逆に47%から40.5%へ低下。また、アップルのモバイルOSである「iOS」の市場シェアが「アイフォン6」や「同6プラス」の投入で、グーグルの「アンドロイド」に対抗して伸びており、グーグル包囲網が着実に拡大していることがあるという。

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ロシア開発対外経済銀行副頭取:中銀の追加利上げの可能性を指摘

ロシア経済発展貿易省の元次官で、現在はロシア開発対外経済銀行(VEB)の副頭取であるアンドレイ・クレパチ氏は先週末、地元テレビ局「ロシア24」のインタビューで、「利上げは避けて通れない。中銀はもっと早く利上げすることができたはず。今後、中銀による追加利上げはありうる」と述べ、中銀がルーブルの急落に歯止めをかけるため、もう一段の利下げに踏み切るとの見方を示した。地元のタス通信(電子版)が19日に伝えた。

ただ、同氏は、「利上げだけでは通貨危機は乗り切れない」とも述べ、その上で、「輸出企業は海外で稼いだ外貨を売却する準備に取り掛かる必要がある。輸出企業はルーブルの下落に備えてヘッジ目的で外貨を取得する一方で、債務返済資金の準備が必要なときに、外貨をうまく売却できるように企業と政府、中銀は緊密に協調して行動することが非常に大事だ」と指摘する。また、同氏は、政府は2008-2009年の世界的な金融混乱時に実施したように、輸出企業に対し喫緊の対外債務の支払いに必要な外貨資金を調達できるよう債務保証を与える必要があるとしている。

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ロシア大統領補佐官、ルーブルの流動性危機回避の対策を講じると言明

ロシアのアンドレイ・ベロウソフ大統領補佐官は19日、記者団に対し、自国通貨ルーブルの急落に端を発した金融市場の混乱を未然に防ぐため、さまざまな金融危機対策を講じていく意向を明らかにした。地元のタス通信(電子版)が伝えた。

同補佐官は、具体的な危機対策については明らかにしていないが、「ロシア国内の金融市場の動向や銀行の自己資本増強の状況を見ながら必要な対策を打っていく。また、必要があれば戦略的に重要な企業のリストを作成し、それらと協力していく」と述べている。

政府はすでに、銀行の自己資本増強のための、最大1兆ルーブル(約2兆円)の資金を銀行セクターに供給することや、銀行取り付け騒ぎを防ぐため、預金者を保護する預金保険金額を最高140万ルーブル(約280万円)まで引き上げるなどの対策を打ち出しており、下院議会も19日の本会議で、銀行の劣後債を信用度が高い交付国債と交換する形で1兆ルーブルの自己資本増強のための資金供給を可能にする法案を可決した。

こうした中で、同補佐官は、「ルーブルの流動性危機を引き起こさないことが最も重要な課題だ」と指摘。ルーブル相場の見通しについては、「これまでの対策で近い将来、安定していく」と、楽観的な見方を示した。また、同補佐官は、「中銀は金融状況が許せば、17%まで引き上げた主要政策金利をできるだけ早期に引き下げると信じている」と述べている。

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15-19日のロシアRTS指数、後半持ち直すも4週続落―ルーブル急落で

前週(15-19日)のロシア株式市場は、RTS指数(ドル建て)19日終値が前週比3.9%安の768.06と、4週連続の大幅安となった。依然として2009年3月1日の689.63以来4年9カ月ぶりの安値が続いている。

週明けの15日から16日にかけて、ロシア通貨ルーブルが原油安を背景に、ドルやユーロに対し、年初来で価値が半減するほど記録的な急落を見せたことから、RTS指数は、15日は10.12%安、16日も12.41%安と、2日連続で急落し、630を下回った。こうした中、中銀は16日に主要政策金利を一気に6.5%ポイント引き上げ17%としたが、ルーブルの下落は止まらず、原油安も加わってRTS指数は続落した。

17日は中銀がルーブル安で含み損が拡大し経営危機に直面している銀行セクターを支援するため、自己資本増強など7項目の金融安定化対策を発表したことが好感されて、ルーブルが反騰し、急落する前の水準に戻ったことから、RTS指数も14.2%高の715に急反発した。その後もFRB(米連邦準備制度理事会)が17日の金融政策決定会合で早期利上げは時期尚早との判断を示したことで海外市場が回復したことや、18日のプーチン大統領の年次会見を受けてルーブル相場が安定したことから、RTS指数は週末の19日まで3日続伸した。

今週(22-26日)のロシア市場は引き続き、原油とルーブルの相場、さらには米国の対露経済制裁の追加措置などに左右されることが予想され、アナリストは、RTS指数は650-750ポイントのレンジで推移すると見ている。

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前週のインド株は3週ぶり反発―米早期利上げ懸念後退で

前週(15-19日)のインド株式市場で、代表的株価指数SENSEX指数の19日終値は、前日比0.9%高の2万7371.84となった。週間ベースでも前半は値を下げたが、後半の2営業日が660ポイントの大幅続伸となり、12日終値比21ポイント(0.1%)高と、3週ぶりに反騰した。

週明けの15日から17日までの週前半のSENSEXは、前週末(12日)に発表された10月の鉱工業生産指数が3年ぶりに落ち込んだことや11月の貿易収支で赤字が拡大、ロシア中銀の大幅利上げで世界経済への懸念が高まる一方、インドからの資本流出が続いてルピアが急落、また、原油価格の低下による世界同時株安もインドへの資金流入の減少要因となるなどの思惑が交錯する中、ロシア金融危機で外国人投資家のインド株売り越しが続き、11日から5営業日続落となった。インド証券取引委員会によると、12月9-16日の6営業日のインド株の売却額は約333億ルピー(約630億円)に達している。

しかし、週後半に入って相場は反転上昇となった。18日は前日のFRB(米連邦準備制度理事会)のFOMC(公開市場委員会)で、少なくとも来年1-3月の利上げはない、と早期利上げに否定的な判断が示されたことで、海外市場が急回復したことから、SENSEXも1.6%高、週末の19日も財務省が議会に提出した経済見通しで、2014年度の経済成長率が5.5%増と、前年度の4.7%増を上回る見通しを示したことも好感され、0.9%高となった。

今週(22-26日)のインド市場は引き続き原油価格や外国からの資本流入に左右されそうだ。市場に影響を与えそうな主な統計発表は予定されていない。

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前週のブラジル株は3週ぶり反発―原油反発で石油株上昇

前週(15-19日)のブラジル株式市場は、19日のボベスパ指数が前日比2.38%高の4万9650.98となり、週間ベースでも12日終値から3.44%高と、3週ぶりに反発した。しかし、月初来では9.26%安と落ち込んだままだ。

週明けの15日から16日のボベスパ指数は続落。過去3営業日の下落率は5.7%に達し、10月以来の大幅な落ち込みとなった。国営石油大手ペトロブラスが汚職事件で四半期決算の発表を再延期したことから9.2%安となったほか、通貨レアルが5営業日連続で下落し、2005年3月以来9年9カ月ぶりの安値となったことで、投資家が株などリスクの高い資産への投資を避ける動き(リスクオフ)が続いた。17日はペトロブラスが原油高で3%高となったほか、鉄鋼大手コンパニア・シデルルジカ・ナシオナルも12%高、イタウ・ウニバンコ・ホールディングも保険事業の売却で5.1%高となり、ボベスパ指数は3.6%高と、急回復した。

しかし、18日は原油価格が供給過剰懸念で反落するとペトロブラスも2.1%安と売られ、ボベスパ指数は0.4%安と、反落。週末の19日は、サウジアラビアのヌアイミ石油鉱物資源相が石油安は一時的との発言を受けて、原油価格は5年ぶりの安値から反発し、ペトロブラスは3.9%高となった。また、鉄鉱石の国際相場の上昇で鉱山大手ヴァーレが8.2%高と、2009年10月以来の大幅高となり、ボベスパ指数も2.4%高と、急騰した。

今週(22-26日)の株式市場は、引き続き原油相場に敏感に反応する展開となりそうだ。市場に影響を与えそうな主な経済指標や行事は、経済研究・教育機関ジェトゥリオ・バルガス財団(FGV)の12月企業景況感指数(22日)やFGVの12月消費者信頼感指数(23日)など。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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