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主な新興国/米国経済ニュース(9日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

米ヤム・ブランズ、7-9月期利益と通期利益見通しは予想下回る

ファーストフードの「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」や「ピザハット」などを運営するヤム・ブランズ<YUM>が7日に発表した2014年7-9月期(第3四半期)決算は、純利益が前年比2.7倍増の4億0400万ドル(約440億円)、1株当たり利益(希薄化後)も同2.7倍増の89セントとなった。調整後の1株当たり利益も同3%増の87セントとなったものの、アナリスト予想の88セントを下回った。

仕入れ先の中国の食肉加工業者、上海福喜食品の不適切な食品加工の実態が明るみに出たあおりで、中国の既存店ベースの売り上げが14%減と、急落し、全体の売上高も同3%減の33億5000万ドル(約3620億円)となり、アナリスト予想の33億7000万ドル(3640億円)を下回った。また、2014年度通期の業績見通しについても、1株当たり利益も従来予想の前年比20%超増から半分の6-10%増へ大幅に下方修正し、アナリスト予想の同13%増を大幅に下回った。

同社の株価は7日、2.31%安の69.73ドルで引けたあと、時間外取引で米東部時間7時59分時点では1.03%高の70.45ドルと、やや値を戻している。

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米アマゾン、EUから租税回避で調査受ける

米オンライン小売り大手アマゾン<AMZN>は米国での高額な租税を回避する目的で、法人税が低いルクセンブルグの子会社に利益を集中させた上で優遇税制の提供を受けていた疑いで、EU(欧州連合)の行政執行機関であるEC(欧州委員会)から調査を受けている。米経済専門オンラインメディア、CNNマネーが7日に伝えた。

アマゾンはルクセンブルグの税当局から2003年以降11年間にわたって、特別に低い法人税率の適用を受けていたとされるが、アマゾン側はこれを否定している。しかし、もし、租税回避の事実が判明すれば、アマゾンはECから2003年以降の租税回避相当額の制裁金の支払いが科せられる。

こうした租税回避では、米IT大手アップル<AAPL>もアイルランドの税制を利用した同様な手法で租税回避をしたとして、EU当局から数十億ユーロ(数千億円)の罰金の支払いを求められる可能性が出ている。

こうした問題は、いわゆる“租税回避の聖杯”と呼ばれるもので、多国籍企業は自国の高い法人税課税を避けるため、アイルランドやルクセンブルグなど法人税が低い国の子会社に利益を集中させることで節税している。アップルの場合は、米上院の行政監察小委員会が昨年5月に、アイルランドは租税回避地になっており、アップルは1991年と2007年にアイルランド税当局との交渉で特別に2%という低い法人税率の適用を受け、同国の子会社に数十億ドル(数千億円)の利益を集中させて米国での課税逃れていたとの報告書をまとめている。

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ロシア中銀、3日間で1900億円のルーブル安阻止介入を実施

ロシア中央銀行は7日、ウクライナ情勢の悪化による自国通貨ルーブルの下落を阻止するため、先週に続いて再び外為市場でドル売り・ルーブル買い介入を実施した。モスクワ・タイムズ(電子版)などが伝えた。

中銀による市場介入は、ルーブルがドルとユーロの2通貨バスケットに対する許容為替変動幅を超えて急落したため実施されたもので、先週も数回、市場介入しており、過去3日間間の市場介入額は3月中旬以来の大規模介入となる17億5000万ドル(約1900億円)に達したもよう。

ルーブル安の背景には欧米の対露経済制裁で、ロシア国内の企業のドル資金需要が活発化していることに加え、原油価格の低下や、ウクライナ危機によるリスク投資の回避の動きが強まりロシア株が売られていることがある。

中銀では6日現在で、2通貨バスケットに対する許容為替変動幅の下限を35.6ルーブル、上限を44.6ルーブルに設定しているが、7日、ルーブルは2通貨バスケットに対し、0.4%下落し過去最安の44.66ルーブルとなった。中銀では1日の介入限度額を超えた場合には、その超過分の累計額が3億5000万ドル(約380億円)に達すると、許容為替変動幅を自動的に5カペイカ(0.05ルーブル)上下させる仕組みになっている。

中銀は先週の1日に1700万ドル(約20億円)、週末の3日には9億8000万ドル(1060億円)のドル売り・ルーブル買いの介入を実施したが、今週に入ってからの市場介入額については明らかにしていない。

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フィッチ、ウクライナの首都キエフの信用格付けを引き下げ

米英大手信用格付け会社フィッチ・レーティングスは7日、ウクライナの首都キエフの自治体政府の外貨建てと自国通貨建ての長期発行体デフォルト格付け(IDR)をいずれも「CCC」から「CC」へ、また、国内スケールによる長期格付けも「BBB」から「BB」へ引き下げたことを明らかにした。

格下げの理由について、フィッチは、市政府が国内債の債務再構築を決定したことや6日には期日到来分11億2500万フリブナ(約90億円)の債務返済に失敗したことから信用状況が悪化していることを挙げている。また、フィッチは、ウクライナの経済成長率が東部の内戦による経済危機で、2014年は6.5%減、2015年と2016年はゼロ成長になると予想しており、キエフ市の経済にも悪影響が及び市の財政も不安定になると、悲観的な見方を示している。

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ニコン、マレーシアでデジカメ一眼レフ「D750」など2機種を発売

光学機器大手ニコンのマレーシア法人、ニコン・マレーシアは7日、デジタル一眼レフカメラ(DSLR)とコンパクトデジタルカメラの最新モデル2機種の販売を開始した。地元のベルナマ通信(電子版)が伝えた。

2機種は一眼レフの「D750」とコンパクトデジタルカメラの「クールピクス・S6900」で、マレーシアでは若い世代でスマートファオンによる写真撮影に飽き足らず、高品質の撮影に対する需要が高まっていることからニコンでは新機種の投入を決めたとしている。販売価格は、D750が6998リンギット(約23万1000円)、クールピクス・S6900は998リンギット(約3万3000円)となっている。

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ヤマハ発動機、インド南部の新工場は11月に竣工―来年から商業生産へ

世界オートバイ2位のヤマハ発動機のインド法人、インディア・ヤマハ・モーターの浅野正樹CEO(最高経営責任者)は8日、同国南部タミル・ナードゥ州チェンナイ郊外のバラム・バダガル工業団地内で2012年から建設中の新工場は11月に竣工し、来年から商業生産に入る見通しを明らかにした。

新工場では当初はスクーターを生産するが、その後、オートバイも追加する。生産能力は、来年時点で年間40万台だが、2018年までに4倍超の180万台に拡大する計画。従業員数は1800人でスタートし、2018年までには6500人体制となる。今後5年間の新工場への投資額は150億ルピー(約270億円)を予定している。

また、同社はインドの自動2輪車市場のシェアは現在4.5-5%となっているが、今後数年以内に2倍の10%にまでに引き上げる計画で、デーラー網も現在の1200店から来年までに2000店に拡大する。

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ポーランド中銀、主要金利を0.5%下げ―景気減速とデフレ脱却目指し

ポーランド中銀は8日の金融政策委員会(RPP)で、主要政策金利の7日物レファレンス金利を0.5%ポイント引き下げ、過去最低水準の2%とすることを決めた。また、中銀はロンバート金利を1%ポイント引き下げ3%へ、再割引金利は0.5%ポイント引き下げ2.25%とした。預金金利は1%のまま据え置いた。利下げは9日から実施される。

7日物レファレンス金利は2012年11月の会合で3年5カ月ぶりに利下げに転換して以降、2013年7月の会合まで8回連続して引き下げ、下げ幅も合計で2.25%ポイントに達したが、それを最後に政策金利は変えていなかった。利下げは1年3カ月ぶりとなる。

中銀は金融政策決定会合後に発表した声明文で、インフレと景気の現状認識について、「ロシアの食品輸入禁止措置や農産物の供給過剰による食品物価の低下などで、8月の消費者物価指数(CPI)は前年比0.3%低下と、依然としてインフレは前年水準を下回っている。また、企業や家計のインフレ期待は極めて低い」とし、また、「7-9月期GDP(国内総生産)は経済成長が一段と減速したことを示しており、インフレも中期の物価目標(2.5%上昇)を下回り続けるリスクが高まっていることから、預金金利を除く他の政策金利を引き下げた」と述べている。

その上で、中銀は、「11月に発表される中銀の経済予測を含め、今後の経済データによって、インフレ率が中期の物価目標を下回り続けるリスクがかなり高いことが示されれば、中銀はもう一段の金融政策の見直しを行うことは否定しない」とし、再利下げの可能性に含みを持たせた。アナリストは、利下げは2015年1-3月期まで続き、7日物レファレンス金利は1.5%にまで引き下げられると見ている。

次回の金融政策決定会合は11月4-5日に開かれる予定。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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