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主な新興国/米国経済ニュース(19日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

アマゾンCEO、宇宙ロケットエンジン開発でボーイングなどと提携へ

米オンライン小売り大手アマゾン<AMZN>の創業者でCEO(最高経営責任者)のジェフ・ベゾス氏が代表を務める宇宙ロケットエンジン開発のベンチャー企業ブルー・オリジンは17日、航空・宇宙大手ボーイング<BA>と米航空・防衛機器大手ロッキード・マーチン<LMT>の合弁会社ユナイテッド・ローンチ・アライアンスと共同で宇宙ロケット用エンジン「BE-4」を開発することで合意したことを明らかにした。

ユナイテッド・ローンチは米国の軍事用偵察衛星を独占的に打ち上げていることで知られるが、今後、ユナイテッド・ローンチはブルー・オリジンと共同で、ボーイングの有人宇宙船を国際宇宙ステーション(ISS)に向けて打ち上げるときに使用する宇宙ロケット「アトラスV」向けのロケット推進エンジンの開発を目指す。BE-4エンジンは4年間で開発され、2016年に本格試験段階に入り、2019年に同エンジンによる初飛行を行う計画。

現在、アトラスVのエンジンは1990年代以降、ロシア製の「RD-180」に依存しているが、ロシア政府が数カ月前にRD-180の供給を制限する可能性を示唆したため、米政府と産業界は対応策の検討に入っている。

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化学大手デュポン、アクティビストファンドから会社分割要求受ける

米化学大手デュポン<DD>の大株主となっている米アクティビストファンドのトライアン・ファンド・マネジメントを率いる著名投資家ネルソン・ペルツ氏が同社の経営陣に対し、企業価値をより一層高めるため、企業分割による経営刷新を要求する書簡を送付していたことが17日までに明らかになった。英紙フィナンシャル・タイムズ(電子版)が伝えた。

この書簡は16日、トライアンのウェブサイトで公開されたもので、それによると、「デュポンは、もはや、特定の製品やサービスの提供に特化した、いわゆる、“ピュアプレー”企業として成長し続ける企業ではなくなった。また、収益が循環的に回復する企業でもなくなっており、投資リターンが望めない企業だ」と厳しく批判している。

特に、トライアンは、デュポンは持ち株会社として、ゴルフ場や1252座席の大劇場、さらには217室のホテルなど20億‐40億ドル(約2200億‐4300億円)も無駄な経費を支出しているとし、さらには、ここ3年間連続で業績見通しの下方修正や未達成などをやり玉に挙げている。その上で、デュポンを分割することによって、企業価値は3年以内に2倍にすることが可能だとしている。具体的には持ち株会社を解体し、傘下の企業を独立させ業績を改善させるべきとしている。

トライアンはデュポンの発行済み株式の2.7%、金額で16億ドル(約1740億円)相当の株式を保有しており、昨年7月に株主として登場してきている。

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アジレント、来年3月にサリバンCEO退任―後任はマクマレン氏

米分析・計測器大手アジレント・テクノロジー<A>は17日、同社のビル・サリバンCEO(最高経営責任者)が来年3月に退任することを明らかにした。同氏は退任後、来年10月末まで相談役として社内に留まる予定。後任の新CEOには上級副社長で傘下のケミカル・アナリシス・グループの社長も兼任しているマイク・マクマレン氏(53)が昇格する。

また、マクマレン氏は、来年3月のCEO就任に先立って、17日付でアジレントの社長兼COO(最高執行責任者)(最高執行責任者)に就任した。

同社は1999年に米コンピューター大手ヒューレット・パッカード<HPQ>から独立した企業として知られるが、アジレント自身も8月1日に、電子計測器事業部門をキーサイト・テクノロジーズとして会社分割し、11月3日にはキーサイトをニューヨーク証券取引所に上場する予定。アジレントの株主は2株につき1株のキーサイトの株式を受け取る。アジレントはキーサイトの会社分割後はライフサイエンスと診断分析、応用化学の事業分野に集中する。

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EBRD、ロシアの2015年成長率見通しを0.2%減に下方修正

欧州復興開発銀行(EBRD)は18日、ロシアの2015年のGDP(国内総生産)伸び率の見通しを従来予想の前年比0.6%増から同0.2%減のマイナス成長へ下方修正した。下方修正の理由について、EBRDはウクライナ危機をめぐる西側の対露制裁でロシアの銀行や企業の業績が悪化することを挙げている。

また、今年のGDP伸び率の見通しについても、西側の対露制裁の悪影響で、ゼロ成長になると、悲観的な見方を示している。さらに、EBRDは、中期的にはロシア経済の回復はウクライナ危機の解決によって左右されるとしたが、対露経済制裁が解除されても、投資家の心理やビジネス関係を再構築する必要があるため、景気回復までの足取りは長丁場になる、と予想している。

一方、ロシアの経済発展省は、2015年のGDP伸び率を1.2%増、また、中銀は0.9-1.1%増と予想している。

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JFEスチール、台湾・義聯集団とのベトナム製鉄所建設計画を白紙撤回

世界9位の鉄鋼大手JFEスチールは16日、台湾の同業大手の義聯集団と共同でベトナム・クアンガイ省に、高炉一貫製鉄所を建設するプロジェクトを白紙撤回することを決めたことを明らかにした。

JFEはこれまで2年間にわたって、同プロジェクトのフィージビリティ(実現可能性)調査を行ってきたが、クアンガイ省の人民政府に同プロジェクトからの撤退の方針を伝えたとしている。同プロジェクトの投資規模は320億ドル(約3.5兆円)で、年間350万トンの粗鋼生産能力を持ち、2016年から操業を開始する計画となっている。

JFEは2012年に義聯集団と共同で製鉄所を建設するためにフィージビリティ調査を行うことで合意し了解覚書(MOU)に調印する一方で、義聯集団はベトナムに同プロジェクトの運営母体となるグアンリエンスチールを設立しており、現在、同プロジェクトの90%を保有している。しかし、JFEは他の大手鉄鋼メーカーもベトナムや中国南部で、製鉄所の建設を計画中か、または建設中で、アジアの鉄鋼市場は供給過剰になるとして、同プロジェクトからの撤退を決定したとしている。

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ロシア複合企業AFKシステマ、会長逮捕で株価急落続く

ロシアの司法当局が16日夕に複合企業大手AFKシステマのウラジーミル・イェフトゥシェンコフ会長を資金洗浄の容疑で逮捕し自宅軟禁下に置いたのを受けて、同社と傘下の主要企業である石油子会社バシネフチの株価が17日に急落し、18日も大幅下落が続いた。

AFKシステマは携帯電話サービス大手モバイル・テレシステムズ(MTS)の親会社としても知られ、イェフトゥシェンコフ会長はAFKシステマの大株主でもある。同会長は今回の自宅軟禁は現政権の政治的な動機に基づくものだとして批判している。

モスクワ証券取引所では、この会長逮捕のニュースで、同社の株価は17日には一時、32%安と急落し、時価総額で約1000億ルーブル(約2800億円)も減少した。このため、モスクワ証券取引所は2社の株式売買に対し取引制限を発動したが、18日も終値で5.02%安と、大幅安となった。一方、中堅石油のバシネフチも17日は一時、22%安となり、18日も終値で2.66%安と、続落している。

資金洗浄の容疑は、2009年3月にAFKシステマがロシア・バシコルトスタン共和国のバシキール・オイル・アンド・エナジー・グループ(バシネフチの前身)の民営化で、同社とそのエネルギー子会社の株式を25億ドル(約2700億円)で取得し、支配株主となったが、ロシアの重大犯罪を捜査するロシア連邦調査委員会は、イェフトゥシェンコフ会長が違法な方法で取得したそれらの株式を合法化する過程で違法な資金洗浄があったと主張している。イェフトゥシェンコフ会長は米経済誌フォーブスの世界大富豪ランキングで15位、資産総額は90億ドル(約9800億円)とされている。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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