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主な新興国/米国経済ニュース(1日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ウォルマート、株式投資判断が「ニュートラル」に引き下げ

米証券大手ゴールドマン・サックス<GS>は、米小売り最大手ウォルマート・ストアーズ<WMT>の株式投資判断を「ニュートラル」に引き下げた。米経済専門オンラインメディア、CNNマネーが7月30日に伝えた。

ゴールドマン・サックスは投資判断を引き下げた理由について、「ウォルマートは同業のオンライン小売り大手や商品構成を絞り込んだ小売り大手との競争優位性を失っている」としている。また、「ウォルマートの年間売上高は4690億ドル(約48兆円)と、圧倒的な事業規模を持つが、最近は5四半期連続で売り上げが減少しており、これは明らかに米オンライン小売り大手アマゾン<AMZN>などのオンライン小売り企業に顧客が流れているためだ」と指摘している。

ウォルマートの株価は7月30日、0.87%安の74.78ドルで引けている。

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バンカメ、カントリーワイド関連訴訟で1300億円超の罰金支払いへ

ニューヨーク・マンハッタンの米連邦地裁のジェド・ラコフ判事は7月30日、米金融大手バンク・オブ・アメリカ<BAC>が2008年7月に買収した米住宅ローン最大手カントリーワイド・フィナンシャルを通じて、欠陥のある住宅ローン債権を売却したのは詐欺罪に当たるとして米司法省から民事提訴されていた裁判で、同行に対し9月2日までに13億ドル(約1330億円)の罰金の支払いを命じる判決を言い渡した。ニューヨーク・タイムズ(電子版)などが伝えた。

同裁判は、司法省が2012年にバンク・オブ・アメリカを相手取って起こした民事訴訟で、訴状によると、カントリーワイド・フィナンシャルは、2007年から住宅ローンの処理を迅速化する「ハッスル」というスキームを発案し、バンカメに買収された後も続け、返済リスクの高い顧客にも住宅ローンを積極的に実行することで “欠陥”のある住宅ローン債権をファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)やフレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)に売却し10億ドル(約1020億円)以上の損害を与えたとしている。

また、この訴訟ではカントリーワイド・ファイナンシャルの元CEO(最高経営責任者)のレベッカ・マイローン氏に対しても100万ドル(約1億円)の罰金を言い渡している。

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ボーイング、ドリームライナー「787-10」をサウスカロライナ工場で生産へ

米航空・宇宙大手ボーイング<BA>のラリー・ロフティス副社長は米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルの7月30日付電子版でのインタビューで、同社の主力機種である中型旅客機「ボーイング787ドリームライナー」の新型モデルを2017年からサウスカロライナ州の自社工場で生産する計画を明らかにした。

新型モデルは胴体延長型の「ボーイング787-10」で、胴体の全長は現在、最長のドリームライナー「787-9」より10フィート長めの114フィートとなり、2018年から引き渡しを開始する予定。787-10は今後、サウスカロライナ工場だけで組み立てられる。同工場は2009年に建設され、労組が組織化されていな工場として知られ、労組との対立するリスクがない分、生産拡大が期待されている。

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ロシア極東発展相、“経済特区への外資導入で経済制裁は緩和”と主張

EU(欧州連合)と米国による新たな対ロシア経済制裁で、ロシア経済に深刻な影響が及ぶことが懸念されている問題で、ロシアのアレクサンドル・ガルシカ極東発展相は7月30日、ウラジーミル・プーチン大統領と会談した際、「現在、極東地方の経済・社会開発の起爆剤として期待されている輸出加工型産業を集約した経済特区「先進経済発展区」の運用が始まれば、海外から650億ドル(約6.6兆円)の投資資金の流入が見込め、懸念されている西側の経済制裁によるロシア経済への打撃もかなり緩和される」との見通しを明らかにした。ノーボスチ通信(電子版)が伝えた。

先端経済発展区は、税制優遇措置が適用される輸出加工型産業を集約した経済特別区で、同相によると、すでに、特区に進出する可能性がある極東地方の大手4400社のリストを策定済みだという。これら4400社だけで年間10兆ドル(約1020兆円)の製品がアジア太平洋地域に向けて輸出されている。また、同相は、「すでに、外国企業5社も先進経済発展区への進出に関し了解覚書(MOU)を交わしている」という。

ガルシカ極東発展相は、「この特区の運用に関する法律を今年秋に、ロシア連邦議会の下院に提出し、立法化を急ぐ」としている。

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チェコ中銀、政策金利を14回連続で据え置き―為替介入も2016年まで継続へ

チェコ国立銀行(中央銀行)は7月31日の金融政策決定会合で、政策金利の2週間物レポ金利を過去最低の0.05%のまま据え置くことを全員一致で決めた。中銀は2012年11月の会合で政策金利を0.25%から0.2%ポイント引き下げて0.05%と、事実上のゼロ金利にしており、これで据え置きは14回連続となる。

また、中銀は金融政策決定会合後に発表した声明文で、事実上のゼロ金利の状況下ではこれ以上の追加利下げが困難なことから、前回会合に続いて、金融緩和のもう一つの方法として、為替介入を通じて自国通貨コルナの価値を下落させるという非伝統的な手段を継続することも決めた。

さらに、中銀は、為替介入は前回同様、コルナ売り・ユーロ買いによって1ユーロ=27コルナを引き続き達成目標とすることも決めた。ただ、前回の会合では、「この27コルナの為替目標は2015年初めまで維持する」としていたが、今回の声明文では、「少なくとも2016年まで金融政策の手段として為替介入の手法を継続する」とし、27コルナの為替目標からの脱却時期をこれまでより1年先延ばしにする方針を示した。

その理由について、中銀は声明文で、「今度の新しい(中銀の)経済予測では、インフレ率は現在の低水準から徐々に伸びが加速し始め、2015年下期(7‐12月)には2%上昇の物価目標に戻ると予想しているが、ユーロ圏のディスインフレ(物価上昇率の低下)の傾向が長期化しているため、この予測が外れるリスクがある。(こうしたリスクを考慮すると)中銀は、為替介入の手法を少なくとも2016年まで継続することを決めた」と述べている。

次回会合は9月25日に開催される予定。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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