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英国バッキンガム宮殿、ジョージ王朝美術展を初開催―クイーンズ・ギャラリー

増谷栄一The US-Euro Economic File代表
18世紀初頭のジョージ王朝の美術品が一堂に披露(筆者撮影)

英国バッキンガム宮殿は4月11日から、王室美術館クイーンズ・ギャラリーで、18世紀初頭のジョージアン様式の絵画や王室で使われた金食器、時計などの調度品を一堂に集めた特別展示会「The First Georgians: Art & Monarchy 1714-1760」をスタートさせた。これまでジョージ王朝の美術品は国内各地の美術館で個別に公開されていたが、今回はエリザベス女王秘蔵の未公開作品も合わせて展示しており、これだけの多くのジョージ王朝の作品を一カ所に集めて展示するのは今回が初めてとなる。

ジョージアン様式の大時計(筆者撮影)
ジョージアン様式の大時計(筆者撮影)

今からちょうど300年前の1714年に、英国王室を継承するためにドイツのハノーバー家から英国とアイルランドの新国王として招かれたジョージ1世(統治期間1714~1727年)と、その子供であるジョージ2世(同1727~1760年)のジョージ王朝当時の300点以上の貴重な美術品が英国内の13カ所の美術館やエリザベス女王の私邸から集められている。

筆者は展示会初日の11日に開かれた記者発表会に出席したが、英国王室コレクションの管理団体、英国王立所蔵品協会の広報責任者のハンナ・ドルビー氏は「1700年代の芸術品をこれほど豊富に展示するのは今回が初めて。特に、これまでエリザベス女王の私邸だけに飾られ、一般公開されていなかった絵画が初めて公開されるのも見どころとなっている」と話す。

美術品収集に奔走したキュレーター、デスモンド・シャーウェ・テイラー氏(筆者撮影)
美術品収集に奔走したキュレーター、デスモンド・シャーウェ・テイラー氏(筆者撮影)

また、この展示会の開催にこぎつけるまで3年間にわたって美術品の収集に奔走してきた英国王立所蔵品協会のキュレーター、デスモンド・シャーウェ・テイラー氏は、「これまで18世紀のジョージ王朝時代の美術品が一堂に集められて展示されたことがなく、18世紀だけがぽっかりと穴が開いたように抜けていたので、今年が、ジョージ王朝が始まって300周年という区切りを機に特別展示会の開催を思い立った」と述べている。

エリザベス女王の私邸に飾られていた初公開作品(筆者撮影)
エリザベス女王の私邸に飾られていた初公開作品(筆者撮影)

さらに、同氏は、「18世紀は万有引力の法則を発表したアイザック・ニュートンが活躍するなど科学が発達し、王室に代わり議会の権限が強大になってきた時代の変わり目に当たる。そうした政治や社会の大変動が起こった時代背景を思い起こしながら鑑賞してほしい」としている。ちなみに、ジョージ王朝が始まったのも、当時の議会がスチュアート王朝の英国王ジェームズ1世の王妃アンの孫にあたるとして、ジョージ1世を正当な後継者として承認したためで、議会の権限は王室継承を決めるほど強大だった。

展示会は今年10月12日まで開催され、その後、美術品は元の美術館や私邸に戻されることになっている。詳しくはウェブで。

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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