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主な新興国/米国経済ニュース(3月27日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ロシア1-3月期資本流出、7.2兆円か―2008年世界金融危機以来の高水準

ロシア経済発展貿易省のアンドレイ・クレパチ次官は25日、旧ソ連・ウクライナのクリミア半島のロシア編入をめぐり欧米諸国との経済関係が悪化していることから、1-3月期のロシア国内からの外国投資資金の流出額が最大で700億ドル(約7.2兆円)となり、2008年の世界金融危機以来6年ぶりの高水準に達するとの見通しを明らかにした。モスクワ・タイムズ(電子版)が26日に伝えた。

同次官は、「欧米の対ロシア制裁の経済的な影響はまだそれほど大きくはないが、欧米との関係が冷え込むことは、今後のロシアの経済成長にとってはマイナス要因。最終的には資本流出に影響を及ぼすことになる」と指摘している。同次官は1-3月期の資本流出額は650億-700億ドル(約6.6兆-7.2兆円)と予想した上で、700億ドルになる可能性が高いとしている。これは2008年10-12月期の1320億ドル(約13.5兆円)以来の高水準で、昨年1年間の資本流出額627億ドル(約6.4兆円)を上回る。

また、1-3月期のGDP(国内総生産)伸び率の見通しについて、同次官は、1月は前年比0.1%増、2月も同0.3%増と伸びが加速したものの、1-3月期全体では伸びはゼロに鈍化すると見ており、「ロシア経済がスタグネーション(景気停滞)を脱したと見るのは時期尚早」としている。ちなみに、昨年のGDP伸び率は1.3%増となり政府目標を下回っている。

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インドネシア中銀、年末まで政策金利を7.5%に据え置きか―エコノミスト

シンガポール金融大手DBSグループ・ホールディングスのエコノミスト、グンディ・チャフヤディ氏は、インドネシアの政策金利である翌日物BI金利は年内いっぱいは現行の7.5%のまま据え置かれるとの見通しを明らかにした。ジャカルタ・ポスト(電子版)が26日に伝えた。

同氏は、「翌日物BI金利は我々の標準シナリオに基づく見通しでは7.5%の水準で今年末まで維持され、インドネシア中銀は利下げには踏み切らない」とした。ただ、「インドネシア通貨ルピアへの下落圧力が強まれば、中銀は利上げに転じる可能性はある」と指摘している。

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ベトナム1-3月期GDP伸び率、前年比4.96%増―3年ぶり高い伸び

ベトナム統計局(GSO)は26日、同国の1‐3月期GDP(国内総生産)伸び率の速報値が前年比4.96%増と、2013年同期の4.89%増や2012年同期の4.75%増を上回り、2011年同期の5.9%増以来3年ぶりの高い伸びとなったことを明らかにした。

主な内訳では、非製造業(サービス業)部門の伸びが前年比5.95%増と高い伸びとなり、製造・建設業部門は同4.69%増、農林水産業部門は同2.37%増となった。また、地域別ではホーチミン市とビンズオンン省、ドンナイ省の成長率が著しく、全体の成長率を支えた。

また、GSOによると、1-3月期GDP伸び率を押し上げたのは輸出の拡大に伴う貿易黒字だった。同期の輸出額は前年比14.1%増の333億4000万ドル(約3.4兆円)と好調で、貿易黒字も10億ドル(約1000億円)を超えている。ただ、輸出の拡大はベトナムに投資している外国企業の貢献度が極めて高いのが特徴。外国企業は3月単月の輸出額全体の約7割を占める。それに対し、地場企業は3月の輸出額はわずか38億7000万ドル(約4000億円)、輸入額は52億5000万ドル(約5400億円)で、13億8000万ドル(約1400億円)の貿易赤字となっている。

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米衛星放送大手のディッシュとディレクTV、合併観測で株価急騰

米衛星放送大手のディッシュ・ネットワーク<DISH>とディレク・ティービー<DTV>の2社が合併するとの一部報道を手掛かり材料に、両社の株価が26日、急騰した。米経済専門オンラインメディア、CNNマネーが伝えた。

両社の合併を伝えたのは米経済通信社ブルームバーグで、それによると、ディッシュ・ティービーのチャーリー・アーゲン会長がディレク・ティービーのマイク・ホワイトCEO(最高経営責任者)に合併提案を行った、としている。この報道を受けて、それぞれの株価は一時9%と7.5%も急伸した。しかし、両社ともこの報道内容の信ぴょう性に対するCNNからの問い合わせにはコメントを差し控えている。ブルームバーグによると、ホワイト氏は合併提案に対し、米国の独禁当局が合併を承認することについては懐疑的のため、正式に協議を開始することには消極的だとしている。実際、政府は2002年に両社の合併提案に反対した経緯がある。

ディッシュ・ネットワークの株価は26日、6.28%高の62.09ドル、ディレク・ティービーも同日、5.7%高の77.34ドルで引けている。

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米フェイスブック、仮想現実技術ベンチャーのオクルスを買収へ

世界最大のソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)である米フェイスブック<FB>は25日バーチャルリアリティー(仮想現実)技術のハイテクベンチャー、オクルスVRを20億ドル(約2040億円)で買収することで合意したと発表した。買収は4億ドル(約410億円)の現金とフェイスブックの株式2310万株(16億ドル相当)で行われ、買収は今年4-6月期に完了する予定。

オクルスは2012年に創業したばかりのハイテクベンチャー企業で、ユーザーがゴーグルを装着することによって3次元のバーチャルリアリティーを体験できる製品「オクルス・リフト(Oculus Rift)」を開発している。買収後もオクルスはカリフォルニア州アーバインの本社のまま存続し、リフトの開発を継続するとしている。

しかし、米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)によると、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEO(最高経営責任者)は、オクルスのバーチャルリアリティー技術を単なるビデオゲーム用途にとどめず、「たとえば、バーチャルリアリティーで、家に居ながらお医者さんが目の前にいるように診察を受けられたり、世界中のどこでも、生徒と先生が一つの教室で勉強したり、ビデオゲームの中で法廷に実際にいるような感覚を味わえたりすることができる」とし、他の用途に使えるようにしていきたい考えを示している。

フェイスブックは先月19日、スマートフォンでリアルタイムに無料メッセージを交換できるインスタントメッセンジャーアプリケーション大手ワッツアップ(WhatsApp)を190億ドル(約1.9兆円)相当の現金と株式交換で買収することで合意したばかりで、立て続けに大型買収を発表している。

フェイスブックの株価は25日、1.2%高の64.89ドルで引けたが、26日は6.94%安の60.39ドルと、急落している。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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