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主な新興国/米国経済ニュース(11月25日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

18-22日のロシアRTS指数、1444.91―伸び悩む=BRICs市況

前週(18-22日)のロシア株式市場は、米ダウ工業株30種平均が21-22日に連続して過去最高値を更新したにもかかわらず、FRB(米連邦準備制度理事会)の第3弾量的金融緩和(QE3)の早期解除への懸念が強まったため、RTS指数(ドル建て)の22日終値は前週比0.05%高の1444.91と、伸び悩んだ。

週初(18日)は中国の経済改革に関するニュースやユーロ圏9月貿易黒字が前月比85%増と急増したことで欧州株が上昇したこと、さらには、信用不安で株価が急落していた鉄鋼・石炭大手メチェルが買い戻されたことで、RTS指数は1.3%高の1462.98と急伸した。メチェルは13日、取引先銀行との債務返済猶予をめぐる協議が不調に終わったとの憶測で41.4%も急落したが、ロシア証券当局がメチェルの株価急落について調査を開始すると発表したことをきっかけに6.24%高と、急速に値を戻した。

しかし、翌19日は、20日のFRBのFOMC(公開市場委員会)議事録の公開と21日の日銀の金融政策決定会合を控えて市場は様子見ムードが広がり、また、原油先物価格が下落したことも手伝って、RTS指数は反落した。20-21日もFOMC議事録で多くの委員がQE3の数カ月以内の早期解除に言及したことやFRB傘下のセントルイス地区連銀のジェームズ・ブラード総裁が12月のFOMC会合でQE3の早期解除が議論されると発言したことで、株価は下落し3日続落となった。

週末は、原油高になったことに加え、ドイツの11月IFO企業景況感指数の結果が良かったことで欧州株が上昇し、米国の株式市場も21-22日にダウ工業株30種平均が1万6000ドルの大台を超えて2日連続で過去最高値を更新した流れを受けて、RTS指数は1.34%高と、反発した。

今週(25‐29日)のロシア市場の見通しについて、アナリストは、特段の買い材料が見当たらず、市場は12月のクリスマスシーズンまで前哨戦として、上値抵抗線を試す展開になると見ている。

今週の相場に影響を及ぼす主な統計としては、米国では9月住宅着工件数(26日)やコンファレンス・ボード(全米産業審議会)の11月消費者信頼感指数(26日)、週間新規失業保険申請件数(27日)、10月個人所得・支出統計(27日)、10月耐久財新規受注高(27日)、10月新築住宅販売件数(27日)、11月シカゴ購買部協会景気指数(27日)、また、アジアでは、日本の日銀金融政策決定会合の議事要旨(26日)や10月全国消費者物価指数(29日)、欧州では英国の7-9月期GDP伸び率改定値(27日)、ユーロ圏の11月消費者物価指数(29日)、10月失業率(29日)などが予定されている。

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JSR、ハンガリー石油精製大手MOLと合成ゴムの共同生産で合意

合成ゴム大手のJSR<4185.T>は先週末、ハンガリー石油精製最大手MOL(ハンガリー石油ガス)と低燃費タイヤ向け高機能合成ゴムをハンガリーで製造・販売する合弁会社を設立することで合意したことを明らかにした。両社の合弁会社の設立に関する調印式は、ハンガリーのビクトル・オルバン首相の日本への公式訪問に合わせて行われた。

合弁会社の名前は未定だが、出資比率はJSRが51%、MOLは残りの49%となっており、ハンガリーのボルショド・アバウーイ・ゼンプレーン県ティサウィヴァーロシュに新工場を建設し、2017年から高機能性合成ゴムとして知られる溶液重合スチレン・ブタジエンゴム(S-SBR)を製造・販売する。稼働時の生産能力は年間6万トンだが、JSRでは今後の需要動向に応じて能力増強することも検討する、としている。

JSRはハンガリーに生産拠点を設置することを決めた理由について、発表文で、「ハンガリーは、大手タイヤメーカーの集積地である西欧や、タイヤ生産の拡大が見込まれる中東欧、ロシア、トルコに近く、ハンガリー国内でも大手タイヤメーカーが進出しており、市場アクセスに優れている」としている。その上で、JSRは、MOLからS-SBR原料を安定的に確保し、MOLの工場インフラと、JSRのS-SBR製造技術と販売網を活用していく、としている。

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ポーランドのトゥスク首相、新財務相にシュチュレク氏を起用へ

ポーランドのドナルド・トゥスク首相は先週の記者会見で、内閣改造の一環として、退任するヤツェク・ロストフスキ財務相の後任としてマテウシュ・シュチュレク氏(38)を新財務相に起用する方針を明らかにした。ポーランド通信社(PAP)が伝えた。シュチュレク氏は1997年からオランダ金融サービス大手INGの中東欧担当のチーフエコノミストとして活躍している。

また、新財務相に内定したシュチュレク氏は、先週末、記者団に対し、ポーランドのユーロ圏入りについて、「ユーロ圏に加わることは長期的な目標だ。もし、私の任期中にユーロ圏に入るようなことになれば私自身にとってサプライズになるだろう」と述べ、ポーランドの欧州単一通貨「ユーロ」の導入に慎重な姿勢を示している。

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シャープの冷蔵庫、インドネシア市場シェアが35%近くに拡大

シャープ<6753.T>のインドネシア現地法人、シャープ・エレクトロニクス・インドネシアは、同社製冷蔵庫の国内市場シェアが今年はすでに34.7%と、昨年の32.5%から2.2%ポイント上昇したことを明らかにした。地元経済紙ビジネス・インドネシア(電子版)が22日に伝えた。

これは同社の冷蔵庫担当責任者であるアンドリュー・ガルトム氏が明らかにしたもので、同氏によると、この市場シェアの拡大は、今年9月から操業を開始した西ジャワ州カラワンの新工場の生産能力に見合うものだとしている。同工場の生産能力は月間36万台で、そのうち、冷蔵庫は22万台、洗濯機が14万台となっている。シャープではインドネシアの冷蔵庫と洗濯機の消費需要は年率15-20%増になると予想している。

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ベトナム首相、2015年に銀行不良債権処理を完了する方針を表明

ベトナムのグェン・タン・ズン首相は先週の国民議会で、原則として2015年に国内の銀行の不良債権処理を完了する方針を明らかにした。地元金融情報サイト、ストックスプラス(電子版)が22日に伝えた。

同首相は、中央銀行は銀行の不良債権処理への取り組みで一定の成果を上げているものの、9月末時点の国内金融機関の不良債権比率は4.62%と、依然として高水準にあること、また、不動産市場や株式市場の回復が遅れているため、不良債権処理が困難に直面しているとの認識を示した。その上で、政府は今後、中銀が7月に設立した国営の銀行不良債権買い取り専門会社(VAMC)の2014年の買い取り額の目標を100兆-150兆ドン(約4800億-7200億円)に強化することで、すべての不良債権を2015年に解消させるとしている。

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米インテル、来年の業績見通し発表後に株価急落

米半導体最大手インテル<INTC>は先週、アナリスト向けの経営説明会で、2014年の売り上げ見通しについて、前年比横ばいになるとの予想を明らかにしたが、アナリスト予想の前年比1.4%増を下回ったことから、先週末の同社の株価は5.39%安の23.87ドルに急落して引けた。その後の時間外取引でも米東部時間22日午後7時59分時点で0.04%安の23.86ドルと冴えない動きとなっている。米経済情報専門サイトのマーケットウォッチが伝えた。

説明会では、インテルはPC向け半導体需要が低迷していることから、来年はモバイル電子機器向けの半導体生産を4倍増に拡大するという新しい成長戦略を明らかにしたものの、株式市場では反応薄で、むしろ、売り上げの伸び悩みに対する懸念が上回った格好。米投資銀行エバーコア・パートナーズのアナリスト、パトリック・ワン氏は、「インテルは新成長戦略から今より高い利益を生み出すことができるのか、また、可能だとすればいつからなのかなどの点が不透明だ」と懸念を示している。

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米フット・ロッカー、8-10月期の調整後利益予想上回る―株価上昇

米スポーツシューズ・衣料小売り大手フット・ロッカー<FL>が先週末に発表した8-10月期(第3四半期)決算は、純利益が前年比2%減の1億0400万ドル(約105億円)となったものの、1株当たり利益(希薄化後)は同1.4%増の70セントとなった。純利益の総額が調整前で減少したのは、ランナーズ・ポイントグループの買収費用100万ドル(約1億円)が計上されたためで、これらの一時的項目を除いた調整後の1株当たり利益は同8%増の68セントとなり、アナリスト予想の66セントを上回った。

一方、売上高は同四半期中に新規に28店舗をオープンさせたことで、同6.4%増の16億2000万ドル(1640億円)となり、これもアナリスト予想の15億7000万ドル(約1590億円)を上回った。既存店ベースの売上高は同4.1%増だった。

この決算結果を受けて、同社の株価は22日、4.11%高の38.27ドルで引けた。引け後の時間外取引でも米東部時間22日午後7時51分時点で、22日終値比0.47%高の38.45ドルと、一段高となっている。

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ブラジル2大空港、シンガポールのチャンギ空港グループなどに売却へ

ブラジル2位の大空港として知られるリオデジャネイロを代表するアントニオ・カルロス・ジョビン国際空港(旧ガレオン国際空港)を期限付きで売却する国際入札で、シンガポールのチャンギ空港グループとブラジルのゼネコン最大手オデブレヒトを中心とした投資家グループが22日、最低入札価格の約4倍の190億レアル(約8500億円)で落札した。ブラジル経済紙バロール・エコノミコ(電子版)などが23日に伝えた。

同空港は来年のFIFA(国際サッカー連盟)ワールドカップや2016年の夏季五輪の拠点空港として使用されることになっており、25年間の使用が認められる。契約は来年3月に調印する予定。

また、ミナスジェライス州ベロオリゾンテのタンクレド・ネヴェス国際空港(コンフィンス空港)の期限付き売却先も州間高速道路管理大手コンセッソンエス・ロドビアリア(CCR)を中心としたエアロブラジルグループが先週末、最低入札額の1.6倍の18億2000万レアル(約810億円)を提示して落札に成功している。CCRは30年間の使用が認められる。この結果、政府は両空港の売却で計208億レアル(約9300億円)の資金調達に成功した。

ブラジル政府は官民連携(PPP)のコンセション方式(建設後、一定期間の独占的営業権が与えられて事業を運営する方式)で、空港や高速道路などの交通関連インフラに対する外国投資を呼び込んでおり、昨年もブラジリアやサンパウロなどの3空港を計245億レアル(約1.1兆円)で売却している。(了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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