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主な新興国/米国経済ニュース(11月22日)

増谷栄一The US-Euro Economic File代表

ロシアのロスネフチ、米モルガンスタンレーの原油取引部門買収に意欲

ロシア国営石油・天然ガス大手ロスネフチは、米投資銀行大手モルガンスタンレーの原油の現物取引事業部門の買収を目指して協議しているもようだ。ロシアのプライム通信(電子版)などが20日に外国通信社の報道を引用して伝えた。

商品取引専門の業界誌スパークスプレッドによると、ロスネフチとモルガンスタンレーの協議は大詰めの段階にあるとしている。ただ、協議が不調に終わる可能性もあると指摘している。モルガンスタンレーの同部門の資産には米国とメキシコで原油タンクと原油輸送ターミナルを運営している子会社トランス・モンテーニュも含まれており、ロスネフチ以外にも中東カタールや中国の投資家も買収に関心を寄せているという。

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ロシア中銀総裁、リファイナンス金利引き下げの可能性を否定

ロシア中央銀行のエリビラ・ナビウリナ総裁は20日、今夏まで主要政策金利としていたリファイナンス金利の先行きの見通しについて、現行の8.25%から引き下げる考えがないことを明らかにした。ロシアのプライム通信(電子版)が伝えた。

同総裁は、「ロシアの経済状況は米国やEU(欧州連合)のそれと比べることはできない」とした上で、「リファイナンス金利を引き下げれば、インフレ率の急伸や国内からの資本流出を引き起こし、ロシア経済の持続成長につながらない」と警告している。

また、同総裁は、現在のリテール(消費者向け小口金融)部門の貸し出しの伸びは、今後、2014-2016年の名目経済成長率15%増を上回り、経済の安定を脅かす、と指摘している。同総裁は、「リテール部門の貸し出しは過熱化する要因があり、債務は所得に比べてかなり大きくなっている。その結果、銀行貸し出し(の高い伸び)が将来、金融安定の脅威となりうる」と述べている。

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台湾のフォックスコン、インドネシア・ジョグジャカルタ特別州に工場建設へ

インドネシアのスレマン・ヒダヤット工業相は20日、官邸で、台湾系の電子機器受託生産(EMS)サービス大手フォックスコンがインドネシアのジョグジャカルタ特別州に新工場を建設する方向で検討していることを明らかにした。地元経済紙ビジネス・インドネシア(電子版)が21日に伝えた。

同相によると、フォックスコンの代表がすでにジョグジャカルタ特別州知事のハメンクブウォノ10世と会談し、新工場の建設用地の提供を要請し、同知事も承諾したとしている。これより先、同社は100億ドル(約1兆円)を投じてバンテン州セラン県のモダン・チカンデ工業団地に生産基地を2012年末ごろから建設する計画を発表したが、計画は先伸ばしとなっている。

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ベトナムのHDバンク、日系金融機関3社と出資について協議中

ベトナム金融大手ホーチミン市住宅開発商業銀行(HDバンク)のレ・ティ・バン・タム会長は先週、米経済通信社ブルームバーグのインタビューで、日系金融機関3社との間で、同行の株式30%を売却する協議を行っていることを明らかにした。同会長は日系金融機関3社の名前は明らかにしていない。地元金融情報サイト、ストックスプラス(電子版)などが21日に伝えた。

ここ最近、日本の投資家のベトナムの金融機関に出資する動きが加速しており、ベトナムの保険最大手バオベト・ホールディングス傘下の投資ファンド、バオベト・ファンドマネジメントのファム・クアン・タイン取締役(投資担当)も、日本の多くの投資家から同行のオープン型投資ファンドに関心が寄せられ、小売りや病院などのヘルスケア、教育などの事業分野への投資機会を探す協力の申し出を受けているとしている。

日本のM&A(企業の買収・合併)コンサルタント大手レコフによると、日本とベトナム両国間のM&Aは金額ベースで2009年から2012年にかけて増え始めているという。今年はまだ両国間のM&A案件が成立したという発表はないが、日本の投資家によるベトナムの金融機関への関心は根強いと見ている。

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米ステープルズ、8-10月期は黒字に転換―売り上げは減少

米事務用品小売り大手ステープルズ<SPLS>が20日に発表した8-10月期(第3四半期)決算は、需要減少とコスト削減のための店舗閉鎖で売り上げが減少したものの、最終損益は前年同期の5億9630万ドル(約600億円)の赤字から一転して1億3520万ドル(約135億円)の黒字となった。

1株当たり損益(希薄化後)も89セントの赤字から21セントの黒字に転換した。黒字に転換したのは前年同期に計上した欧州の小売り・通信販売事業のリストラに伴う巨額の減損損失が剥落したため。一方、調整後の1株当たり利益は46セントから42セントに減少したものの、アナリスト予想と一致した。

また、売上高は北米と欧州で過去1年間に計107店舗を閉鎖した影響もあり、前年比3.8%減の61億1000万ドル(約6100億円)となり、アナリスト予想の61億8000万ドル(約6200億円)を下回った。通期の業績見通しについては、調整後の1株当たり利益を従来予想の1.21-1.25ドルのまま据え置いた。売り上げは一ケタ台の減少を予想している。

この結果を受けて、同社の株価は20日、1.56%安の15.1ドルで引けたが、その後の時間外取引でも米東部時間20日午後4時52分時点で1.19%安の14.92ドルとなっている。

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米JCペニー、売り上げ回復期待で株価急騰―8-10月期赤字拡大でも

米百貨店チェーン大手JCペニー<JCP>が20日に発表した8-10月期(第3四半期)決算は、最終赤字額が前年同期の1億2300万ドル(約120億円)から4億8900万ドル(約490億円)と、約4倍に膨らんだ。この結果、1株当たり損失(希薄化後)も56セントから1.94ドルに拡大した。また、調整後の1株当たり損失は1.81ドルとなり、アナリスト予想の1.74ドルの損失より悪化した。

最終赤字が拡大したのは過剰在庫のクリアランスセールによる粗利益率が前年同期の32.5%から29.5%に低下したことやリストラ費用などのコスト増大で営業赤字が急増したため。

一方、売上高は前年比5.1%減の27億8000万ドル(約2780億円)となり、アナリスト予想の28億ドル(約2800億円)をやや下回った。また、既存店ベースの売上高も同4.8%減となり、アナリスト予想の同4.7%減より悪化した。

このように当期の決算内容は最終赤字が大幅拡大となり、売上高も減収となったものの、今月初めに同社が発表した10月単月の既存店売上高が前年比0.9%増と、2011年12月以来1年10カ月ぶりに増加に転じたほか、11月前半の売上高も堅調に推移していること、さらには今期(2013年11月-2014年1月)の既存店売上高も引き続き改善すると予想していることから、同社の株価は20日、8.38%高の9.44ドルに急騰した。しかし、米東部時間21日午前10時8分時点では2.28%安の9.23ドルと、上昇分の一部を消している。

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ブラジル10月雇用統計:失業率、5.2%に低下-景気低迷でも

ブラジル地理統計資料院(IBGE)が21日に発表した10月の雇用統計(PME)によると、失業率は経済成長率が低迷する中で、前月(9月)の5.4%から0.2%ポイント低下し5.2%と、年初来で最低の水準となり、また、2012年12月に記録した過去最低の4.6%以来の低水準となった。アナリスト予想の5.2-5.6%(中央値5.3%)も下回った。

失業者数は前月比4.4%減(前年比3.3%減)の127万人に減少した一方で、雇用者数は前月比0.4%増(前年比0.4%減)の2330万人となった。また、10月の実質平均給与は前月比0.1%減(前年比1.8%増)の1917.3レアル(約8万4400円)だった。 (了)

The US-Euro Economic File代表

英字紙ジャパン・タイムズや日経新聞、米経済通信社ブリッジニュース、米ダウ・ジョーンズ、AFX通信社、トムソン・ファイナンシャル(現在のトムソン・ロイター)など日米のメディアで経済報道に従事。NYやワシントン、ロンドンに駐在し、日米欧の経済ニュースをカバー。毎日新聞の週刊誌「エコノミスト」に23年3月まで15年間執筆、現在は金融情報サイト「ウエルスアドバイザー」(旧モーニングスター)で執筆中。著書は「昭和小史・北炭夕張炭鉱の悲劇」(彩流社)や「アメリカ社会を動かすマネー:9つの論考」(三和書籍)など。

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